新時代に鳴る音楽 gb×AIマネージャーアプリ「NORDER」開発者・西山陽巳 音楽活動に集中するための頼れる“AIマネージャー”

元号が令和に変わり、新しい時代に入って早7年。時代の変遷とともに、音楽のトレンドやヒットの様相もこれまでとは違う道をたどっている。音楽ナタリーでは、さまざまなアーティストの話を通じて新時代での音楽の在り方やヒットを飛ばす方法を紐解くべく、新企画「新時代に鳴る音楽」を始動。“AIマネージャーアプリ”「NORDER」との共同企画となる本連載では、ゲストへのインタビューから、TikTokをはじめとした新たなツールと音楽の関係性、新時代で多くのリスナーに聴かれる楽曲の特徴、従来のやり方にとらわれない斬新なプロモーションなどについて掘り下げる。

連載第1回には、アメリカのファンクバンド・Kool &The Gangのオリジナルメンバーであるジョージ・ブラウンを父に持つシンガーソングライターで、SixTONES、超特急、WATWING、といった多くのアーティストに歌詞を提供している作詞家でもあるgbと、アーティストが音楽制作に集中できる環境をサポートする“AIマネージャーアプリ”「NORDER」のマーケティング責任者・西山陽巳氏に登場いただいた。2月に新曲「空模様」を配信リリースしたばかりのgbに、最近の音楽活動や普段から愛用しているという「NORDER」の使用感を聞きつつ、西山氏に「NORDER」の魅力や新機能を紹介してもらった。さらに特集後半では2人に「AIと音楽の未来」というテーマでトークを繰り広げてもらった。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 須田卓馬

自分が聴いて気持ちいい音楽を追求してきた

──まずはgbさんが「NORDER」に出会うまでの流れをざっと追わせてください。活動スタイル的には、主に楽曲制作をメインにやられているわけですよね。

gb そうですね。gbとしてソロの活動を始めたのが2020年頃で、ちょうどコロナ禍に入ったときだったんです。ライブが一切できない状況だったので、音源を作って配信することをメインにして活動していこうと思ったのがソロ活動のきっかけですね。

──そもそも音楽を作り始めたきっかけは?

gb 僕はインターナショナルスクールに通っていたんですが、そのときの友達6人ぐらいで「卒業して散り散りになってもつながっていられるものってなんだろうね?」という話になって、1人が「音楽だったらできるんじゃない?」と言い出したのが最初でした。当時すでにデータでやり取りできる時代になっていたので、音楽制作ソフトを買ってお互いに声を録って送り合うところから始めた感じです。

gb

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──ということは、最初から音楽を作る=DTMだったわけですね。

gb はい。誰も楽器ができなかったので。あの当時はまだタイプビート(ビートメーカーが制作したビート。販売サイトではタイプビートの使用権をリースすることができる)とかもなくて、インストのレコードやCDに合わせてラップの歌詞を書いたりしていましたね。今思えば、めちゃくちゃヒップホップの黎明期みたいなやり方でした(笑)。

──現在のgbさんの音楽性はかなりポップス寄りの印象ですが、そこに至るまでの流れは?

gb もともとそんなに音楽の好き嫌いがないタイプなんです。音楽を始めたばかりの頃は自分に歌が歌えるとは思っていなくて、「ラップだったらリズムだけだからイケるかも」という理由でラップを選んだだけなんです。その後音楽を続ける中で「意外と歌も歌えるかも」と思い始めて、次第に今のスタイルに行き着いたというか。特に「ポップな音楽を作ろう」という意識はなくて、自分が聴いて気持ちいい音楽を追求していたら結果的にこうなった感じです。

──特に影響を受けたアーティストを挙げるとすると?

gb 実は、これといって好きなアーティストというのはいなくて。どちらかと言うと楽曲単位で好きになるタイプなので、好きな曲はたくさんあるんですけど……しいて言うなら、音楽性というよりもトータルの雰囲気みたいなところでウィル・スミスをリファレンスにしていた感じはちょっとあります。

──そうなんですね。gbさんの作られる楽曲は、ヒップホップビート+ギターという組み合わせが多い印象があるんですが……。

gb そうですね。僕自身は全然弾けないんですけど、ギターの音色は大好きです。

──もともとラッパーだったということでタイプビートを多用するのはわかるんですけど、ギターの音が好きになったルーツはどういうところにあるんでしょうか?

gb それはやっぱりお父さん(Kool and The Gangのドラマーであるジョージ・ブラウン)ですかね。ファンク系のミュージシャンだったので、特徴的なギターサウンドが含まれる楽曲には小さい頃から親しんでいました。お父さんはギタリストではないんですけど、その影響はけっこうあるのかなと思ったりはします。

音楽を作るのは得意だけど、広め方がわからなかった

──曲を作るときは、どういう手順で進めることが多いですか?

gb 制作のスタイルは、音楽を始めた頃とほぼ変わっていなくて。トラックメイカーの人が作ってきてくれるトラックを聴いて、そこから受けたインスピレーションを歌詞やメロディにしていく感じです。たまに歌詞を先に書く場合もあるんですけど、基本的に制作はいつもトラック先行ですね。

──先日リリースされた「空模様」も同様に?

gb はい、同じです。「空模様」の場合は「NNNストレイトニュース」(日本テレビ系のニュース番組)のウェザーテーマになるという“お題”があったので、作ってもらったトラックを聴きながら「天気予報を見たときに、ウキウキワクワクして予定を決められるような曲にしたいな」という気持ちで作っていきました。

──gbさんはSixTONESやWATWING、超特急など、他アーティストへの詞の提供も多数行っています。どういう経緯で作家仕事もするようになったんですか?

gb あるとき、知り合いのトラックメイカーさんのオリジナル曲に歌詞を書かせてもらう機会があって。人の曲に歌詞を書いたのは初めてだったんですけど、それがきっかけになってお仕事として請けることが少しずつ増えていきました。そこからコンペにも参加するようになったり。

──誰かに曲を作る喜びをそこで知った?

gb そうですね。僕、曲ができあがってそのアーティストさんのYouTubeチャンネルにミュージックビデオが上がると、必ずコメント欄を見にいくんですよ。そこに書かれるコメントって、僕の曲を聴いてくれている人とはまた違う層の意見なので、いい刺激を受けています。

gb

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──自分で歌うための曲を書いているだけでは得られないものが得られる、ということですね。

gb だからちょっと沼ってきていて、「もっと書きたい!」という気持ちになっています。

──そうした活動を続ける中、どういう経緯で「NORDER」にたどり着いたんでしょうか。

gb ソロ活動を始める前はグループで活動していて、そのときは事務所にも所属していたんです。当時は曲を出すときにメンバーやスタッフさんたちと「この曲をどうやって届けようか」という話し合いが必ずあった。それが、ソロで活動を始めたら完璧なる1人ぼっちの体制になったので、いざ曲ができてもどうしていいかわからないんですよ。曲を配信して、SNSで「聴いてください」と告知するくらいしかできない。プロモーションの知識なんて皆無だったので。

──そりゃそうですよね。

gb そんなとき、たまたま「ミュージシャンとインフルエンサーをつなぐプロモーションマッチングアプリ」というキャンペーン広告を見かけたんです。それが「NORDER」の前身アプリだったんですけど、要は拡散力のあるインフルエンサーの人に自分の楽曲を使ってもらうための橋渡しをしてくれるアプリらしいと。「これはちょっと面白いかもしれない」と思って使い始めたのが出会いです。

──ちょうど自分に足りないと思っていたものがそこにあった。

gb そうなんです。音楽を作るのは得意だけど、広め方が全然わからなかったので。

自分にできないことを全部代わりにやってくれる

──まさにそういうアーティストの手助けをしたい、というのが「NORDER」の基本理念なわけですよね。

西山陽巳 そうですね。特にその当時のアプリでいうと本当にプロモーション機能がコアのプロダクトだったので、まさに「曲はできた。さて次にどうしよう?」と途方に暮れてしまうアーティストの方たちに使っていただきたいと思っていました。

gb やっぱり、インフルエンサーの人たちに自力でコンタクトを取らなくてもつないでくれる、というのは本当に助かるポイントで。ビジネスメールの書き方もわからない、お金のやり取りも苦手という僕のような人間にとっては、自分にできないことを全部代わりにやってくれるのがすごく楽です。

──実際に「NORDER」を使っていて、特に気に入っている機能は?

gb 僕が特に便利だなと思うのは、AIで楽曲を解析してくれる機能です。「この曲はこのテンポでこういうサウンドでこういう歌詞だから、こういうシーンに合うんじゃないか」ということを客観的な視点で教えてくれる。「自分ではそこまで意識的ではなかったけど、言われてみれば確かにそうだな」みたいなところを明確に言語化してくれるのは本当にありがたいです。その曲をプロモーションするうえでの参考になるのはもちろんですし、次に作る曲にも生かせたりするので。

西山 アプリのコンセプトが「AIマネージャー」ですので、アーティストさんご本人や実在のマネージャーさん、プロデューサーさんには持ち得ないであろう新たな第三者視点をもたらしてくれるのがこのサービスの面白いところかなと思っています。

西山陽巳

西山陽巳

gb 本当におっしゃる通りで、身内だけで話していると出てこないようなことをアドバイスしてくれますね。AIには先入観も固定観念もないので、ある種の神様視点というか(笑)。例えば僕の「Nothing Special」という曲についての解析に「特徴的な楽器やサウンドは特に見られず」という記述があるんですが、確かにその通りなんです。でも自分たちでわざわざ「この曲では特徴的な楽器を使ってないよね」なんて言語化することはないんで、「じゃあ逆にリミックスするときは特徴的な音色を入れたら効果的かも」みたいなアイデアにつながったりするんですよね。

西山 gbさんがおっしゃるように、「AI解析の機能は面白い」というお言葉はユーザーさんからよくいただくんですが、実は当初、社内ではそこまで不可欠なものとは考えていなかったんです。どちらかというと実際のアクションが発生するプロモーション機能こそが中枢であって、AI解析はそれに付随するものというか。「ないよりあったほうが便利だろう」くらいの感覚だったんですよね。

gb そうなんですか! いや、これアーティスト目線からするとすごく重要ですよ。プロモーション方針がこれで決まる部分も大きいですから。

西山 そうおっしゃるアーティストさんも一定数いるので、開発側としてはいい意味で誤算だった部分ですね(笑)。