他人が作ったものの上に乗っかるのと、自分が一から作れるというのとでは、産業の利益構造からして違います。PC産業でIntelやMicrosoftが大きな利益を上げたのと同じことです。
たとえばGoogleも、Google Financeなど検索技術を核にいろいろなサービスを展開しているところに凄みがある。ところが日本の場合、Googleのように大規模な情報を蓄えて必要なものを抜き出すというような技術がまずない。ここに危機感があります。
大規模なデータを処理するコンピュータ基盤や検索技術などは情報化社会を支える技術として、真剣に考えていかないといけない。そうでないと、海外のものを導入して生きていくようになります。
今後、検索の領域はテキストだけでなく、映像やセンサー情報、リアルタイムで起きていることの情報などに広がっていくと考えています(図)。ここの検索はある意味で、まだ始まっていない戦いです。
そしてこの分野で使われるものの多くは、日本の技術なんです。例えばリアルタイム情報の鍵を握るのは電子タグや電子マネー、携帯電話などですが、これらはほとんど日本企業が関わっている。また、映像についても、情報家電の多くは日本企業が製造しています。そして映像処理技術は家電メーカーが持っている。ただ、大量の情報と映像をひもづけるという技術だけがない。
よく「Googleに対抗する」というようなことが言われていますが、実際は単なる検索エンジンでないんです。大量かつ多種多様なデータを処理する基礎エンジン開発といったほうが正確と言えるでしょう。
画像の処理技術や検索技術というのは、すでに日本にあります。ただ、どこまでのレベルに持っていくかが勝負です。
これまでは企業や大学が役割分担をできないまま、競争をしていました。しかし今回のコンソーシアムに参加したところは、プラットフォームの部分で独自に勝負をしても勝てるとはあまり思っていないんです。だからこそ、このプロジェクトがここまで盛り上がってきたともいえます。
どうしても検索と聞くとGoogleが頭に浮かんでしまうのは分かります。しかし、インターネット上の情報だけでなく、電子タグなどのセンサーから情報を取り出して検索しようとすれば、逆に電子タグの技術がないとできません。
日本企業には基礎技術もありますし、企業と大学が共同研究すれば2、3年でもある程度の成果が出せると考えています。
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