阿刀氏
阿刀氏 (安斗氏/安刀氏/安都氏/迹氏) | |
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氏神の阿刀神社(京都市右京区) | |
氏姓 |
阿刀連 のち阿刀宿禰 |
始祖 | 饒速日命 |
出自 | 物部氏 |
氏祖 | 味饒田命 |
種別 | 神別(天神) |
本貫 |
河内国渋川郡跡部郷 (大阪府八尾市跡部周辺) |
凡例 / Category:氏 |
阿刀氏(あとうじ、安斗氏/安刀氏/安都氏/迹氏)は、「阿刀」を氏の名とする氏族。
物部氏と同祖伝承を有する神別(天神)の古代氏族で、「阿刀連」のち「阿刀宿禰」姓を称した。
出自
[編集]物部氏系の史書である『先代旧事本紀』では、饒速日命(物部氏祖神)の孫・味饒田命(うましにぎたのみこと)を祖とすると伝える。
また平安時代初期、弘仁6年(815年)の『新撰姓氏録』では以下の氏族が記載されている。
- 左京 神別 天神 阿刀宿禰 - 石上同祖。
- 山城国 神別 天神 阿刀宿禰 - 石上朝臣同祖。饒速日命の孫・味饒田命の後。
- 山城国 神別 天神 阿刀連 - 石上朝臣同祖。饒速日命の孫・味饒田命の後。
- 摂津国 神別 天神 阿刀連 - 神饒速日命の後。
- 和泉国 神別 天神 阿刀連 - 釆女臣同祖。
なお『太子伝玉林抄』所引の『新撰姓氏録』左京神別阿刀宿禰条逸文によれば、大和国城上郡椿市村(奈良県桜井市金屋)にも阿刀連があったという[1]。
このように阿刀氏は物部氏(のち石上氏)と同祖伝承を有している。その氏名は物部守屋の別業があったと伝えられる阿都(のちの河内国渋川郡跡部郷、現在の大阪府八尾市跡部周辺)の地名に基づくとされる[1]。また、人物の初見が天武天皇元年(672年)であることから、その頃に物部氏から分派したという説がある[1]。
歴史
[編集]カバネは初め「連」であったが、のちに本宗氏は天武天皇13年(684年)の八色の姓制定にあたって「宿禰」を賜った[1]。ただし、8世紀以後も「連」「造」のカバネを称する枝氏も存在した[1]。
居住地としては山背国愛宕郡(京都市東北部)、山背国相楽郡(京都府相楽郡)、摂津国豊島郡(大阪府豊中市・池田市・箕面市周辺)が知られ[1]、上記の様に『新撰姓氏録』には左京、山城国、摂津国、和泉国に居住が見られる。
史書では官人としての活躍が見られる。また、一族から空海(母は阿刀氏)を輩出した[2]。
主な人物・氏族
[編集]人物
[編集]- 安斗宿禰智徳 - 7世紀末の官人。壬申の乱において大海人皇子(天武天皇)の吉野脱出に従事[3]。
- 阿刀連酒主 - 8世紀中頃の下級官人。平城京の大溝遺構から、自筆と見られる木簡が出土した[4]。
- 阿刀宿禰大足 - 8世紀後半の侍講。大学入学前の空海に諸学を教えた[5]。
- 安都宿禰雄足 - 8世紀後半の下級官人。造東大寺司において活躍[6]。
氏族
[編集]『新撰姓氏録』によれば、以下1氏族が阿刀氏と同祖を称している。
- 河内国 神別 天神 積組造 - 阿刀宿禰同祖。饒速日命の子・于摩志摩治命の後。
その他の同族として、『日本三代実録』貞観4年(862年)7月条に「阿刀物部貞範」が見えるのみであるが、阿刀物部氏がある[7]。
関係地
[編集]脚注
[編集]参考文献
[編集]- 『日本古代氏族人名辞典』(吉川弘文館)阿刀氏項