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企画

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

企画(きかく)とは、なにかをするために計画を立てること、およびその結果できた計画[1]。ある意図をもって立てた計画のこと[2]企てくわだて、ともいう[1]。「企てくわだてを描く」という意味の用語[2]。あるいは「企てくわだて画くえがく」という意味の用語である。しばしば動詞形で「企画する」という。

概要

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意図をもって立てた計画、ということは、つまり明確な目的が必要、ということである[2]。まず明確な目的があって、それの実現のために立てられる計画が企画である[2]。つまり企画には、目的を実現するためのロジック論理)がある[2]。ただの思いつきや、論理的でないものは企画にならない[2]。目的が点、手段も点だとすると、目的と手段を結ぶ論理という線が必要である[2]。だから企画には、深い思考、あるいは洞察が必要となる[2]

分かりやすい身近な例では、同僚の異性をランチに誘うアイディアを練るのも企画である[3]。たとえば同僚の異性が、昼ゴハンに連日コンビニ弁当ばかり食べていて、飽きた表情をしているのを見て、「次はおいしいパスタの店に行こうか?」とか「おしゃれな和食の店に行ってみようか?」と提案してみることにも企画が含まれている[3]。なにげない行為ではあるが、まず同僚の表情を観察し、「この表情をしているということは、弁当に飽きてきているということだな」と心理を読み、たしかに連日コンビニ弁当では飽きるだろうなと心理分析し、同僚が昼ゴハンに飽きている状態から喜んだ状態に変化させる、と目的を明確化し、ならばコンビニ弁当とは方向性が全く異なるランチを食べられるといい、と論理の線を引き、その目的を実現するための手段の候補のアイディアを一旦心の中で多数挙げておいて、その中から数を絞り込んで、出来たてでおいしいパスタの店やおしゃれな和食の店がよさそうだと判断して、それを相手に提案してみせる、ということをやっており、これも企画なのである[3]。同僚の表情を観察することは、会社で行う調査に似ており、同僚の心理を読むことは顧客の心理を読むことに似ており、同僚にランチの新しい方法を提案をするということは、会社で顧客向けに新商品企画を立てるのとよく似ている行為なのである[3]

親しい友人の結婚披露宴の立案をすることにも企画が含まれる。「参加者全員を和ませ、新郎新婦の意外な面を参加者に知ってもらい、結婚する二人を一層祝福したいという気持ちにさせ、参加者にも幸福感を味わってもらう」と目的を明確化する。そしてこれらの目的を全て実現するためには、相当に深い洞察が必要となる[2]

なお、故・伊丹十三監督は、映画づくりの秘訣を尋ねられた際に「人が望むものを予期せぬカタチで提供する」と答えた。人のニーズを的確に把握した上で、予期しない意外なことを提示してゆくことが映画づくりの極意だと答えたのである[2]。これは企画にも使える。

企画書

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組織ではまず関係者に企画について納得してもらわなければならないが、そのためには企画書というものを作成する。企画書とは文字通り、企画を書いた文書であり、組織で書かれるさまざまなビジネス文書の一種である[4]。自分ひとりで計画を考え、自分ひとりで実行するなら企画書は必要ない[4]。たとえば上に挙げた、同僚をランチに飽きた状態から救う計画を練りランチに誘うのに企画書は必要無い。ひとりで実行すれば良いのだから。また、たとえばあなたが社長で、あなたが言えば社員が必ず言った通りに動いてくれる状態なら、企画書は必要無い[4]。そうでない立場で、あなたの考えを関係者に広く理解してもらい、実行してもらうためには企画書が必要となる[4]

企画書についても目的が重要で、企画書の目的は、あなたが立てた企画に周囲の人々が賛同してくれることである[4]。企画を企画止まりにさせず、実行するためには、周囲の人々の賛同(理解と共感)を得ることが必要で、そのために作成するのが企画書なのである[4]

企画書には、企画書通りに実行した際に到達する、"明るい未来の状態"(輝かしい明日の状態)が書かれていなければならない[4]。ただ単に何をすべきか書かれたものは企画書ではない[4]。それでは単なる指示書になってしまう[4]

ビジネスの場面ではしばしば「PLAN - DO - SEE(計画、実行、管理・分析)のサイクルを回せ」というが、企画書というのはこのサイクルのPLANの段階に相当する[4]

なお企画書というのは、採用されないと捨てられてしまう運命にある文書だというところが他のビジネス文書と異なっている[4]。組織で作成される稟議書でも業務報告書でも一定期間保管されるものだが、企画書は採用されなければ捨てられてしまうというところが特殊である[4]。 また、業務報告書などは一定のフォーマット(書式)が決められていることが一般的だが、企画書は書式がほぼ無く、書式がほぼ自由だという特徴もある[4]

企画の例

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企画を行う部署や役職の例

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企画を専門としている部署を持っている組織もある。いわば組織の頭脳に相当する。

民間企業では「企画部」「経営企画部」などという部署を設けている会社もある。 また、わざわざ部署名に「企画〇〇」と入れていなくても、マーケティング部が設置されている多くの会社では販売推進のための企画や新商品企画を日常的に立て続けている。

行政関連

企画局、企画庁、「〇〇政策局」などと命名されているほか、「〇〇本局」と命名され筆頭局と位置づけられていることや、「〇〇本部」「〇〇本府」と命名されていることもある。

  • アメリカ : 政策企画本部(1947年に設立)
  • 日本 : 企画庁(戦前の1937年5月) → 企画院(1937年10月) → 内閣調査室および内閣審議室(1945年) → 内閣内政審議室と内閣外政審議室(1986年) → 内閣官房副長官補および内閣官房副長官補室(2001年 - )。総務企画局(金融庁に2000年から2018年にかけて存在した部門)。経済企画庁(1946年設立の経済安定本部として始まり、1955年に経済企画庁と改称し、2001年に総理府本府などに統合)
  • 東京都 : 東京都知事本局(-2014年) → 東京都政策企画局(2014年 - )
  • 琉球 : 企画局 (琉球政府)企画統計局 (琉球政府)
  • 経済企画協会
  • 靖国解体企画
  • 大韓民国 : 企画予算処(1999-2008)、企画財政部(1948年に大韓民国政府樹立とともに財務部として発足し、経済企画院、財政経済院となり2008年に企画予算処と統合)、経済企画院(1961年 - )
企画に関する役職の例

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b 企画”. コトバンク. 2025年3月1日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j 井徳正吾「1」『「企画書」の基本&書き方がイチから身につく本』すばる舎、2009年。 
  3. ^ a b c d 高橋憲行『【使える実例50選】企画書の「基本」が身につく本』学研プラス、2013年。ASIN B00E7LU9PO 
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m 井徳正吾「2」『「企画書」の基本&書き方がイチから身につく本』すばる舎、2009年。 

関連項目

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