瀬尾さんの「語り継ぎ」をめぐる思索のエッセイ
2024/03/27 11:29
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
版元のウエブ連載をまとめたもの。
東日本大震災直後から陸前高田に暮らしながら、創作活動をし、「声」の記録を続けてきた瀬尾まいこさんによる「記憶の語り継ぎ」の記録と施策をまとめた一冊。
やわらかい文章だが、しっかり本質を突く言葉が心地よい。
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語りを聞くことは、人がみな一様ではないことを知ることだと思った。同じ時代を生きていても、同じ災害を経験しても、捉え方はさまざまで、ひとつだって切り捨てていいものはない。
それを知って、そして忘れなければ、人を数だと捉えたり、自分のために大勢殺しても何とも思わない、なんてことは絶対になくなると思う。
もういない人の声を想像すること、思いを馳せることもまた、「聞く」ことではないか、そうあってほしい、と思う。
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ふだん高齢者の方に話を聞く機会が多いわたしは、何度も「あぁ今とても大事な話を手渡された。今日の話、残しておきたい。世の中の誰かを救うかもしれない」と直感的に感じることが多かった。
ふとした会話から知るその人の歴史、自宅の随所に垣間見える生活と家族の歴史、とてもささやかな日々の楽しみや工夫。たくさん受け取った。
なのに、わたしは結局なにも残せなかった。残したつもりでいたのに、忘れてしまってる。
この本は災禍や戦災に関する内容だけど、大きくは繋がっている気がする。
文字に残し、伝えることの意味を考え、受け取った気がする。
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瀬尾夏美さん2冊目。震災直後に被災地である陸前高田に移住し、耳を傾け日々を記録した『あわいゆくころ』の続編? いやいやこれは別物、単独でも大丈夫! 瀬尾さんの想いが十分に伝わります。
『あわいゆくころ』は、あの時と今、日常と非日常、生と死、「あの街」と10m嵩上げされた「新しい街」など、諸々の2つの"あわい"という言葉の奥深さ、瀬尾さんの叫びと祈りが、切なくも優しく伝わる7年間の記録でした。
一方本作は、2021年1月以降の聴き取りから着想した物語が中心で、内容は震災の範疇を越えています。15章それぞれが、語りを再構成した「物語」と、その物語が語られ生まれた経緯を補足する「あとがたり」と、少し変わった構成になっています。
「物語」は様々なカタチ(語りそのまま、詩、昔話など)を取り、痛みの繊細な記憶が相応しい表現形態で綴られます。内容も震災以外の広範囲の災禍に触れ、多くの語りが収録されています。今後の方向性も徐々に定まり、「カロク(禍録)リサイクル」の活動の充実を応援したいと思いました。
各「物語」パートと「あとがたり」パートは、目に優しい淡いクリーム色とグレーの紙を使い分けています。本の天・地・小口の3方向を見ると"地層"のよう…。そうか、これも『声の地層』なんですね。