突然の「テレワーク廃止」にどうしても従わない「在宅勤務」希望の社員は解雇できるのか?企業も従業員も納得の「落としどころ」

コロナ禍に先進的な働き方として導入が進んだ「テレワーク」ですが、最近は「オフィス回帰」の流れもあり、テレワーク制度の見直しを図っている会社も少なくありません。しかし、その過程で従業員間の対立や、さらなる問題に発展するケースも……。

本稿では、前編〈突然の「テレワーク廃止」で会社が分裂…それでも「在宅勤務」希望の29歳社員が「まさかの訴え」〉にひきつづきテレワーク廃止を巡って会社が二分してしまったAハウジング社の事例を社会保険労務士の上岡ひとみ氏が紹介。「テレワーク廃止」に反対する社員の扱や、法的にベストな対応について解説します。

本記事の登場人物
中村: 45歳。Aハウジング社の総務部長。「テレワーク廃止」に頑なに従わない佐藤の件を上岡社労士に相談。
佐藤: 29歳。Aハウジング社の営業企画課の社員。テレワークになってから業績がアップしたテレワーク継続派。社内掲示板に「テレワーク廃止はパワハラ行為」だと匿名で訴えた人物だと、疑われている。
高橋: 35歳。Aハウジング社の営業企画課の課長。佐藤への対応に手を焼いている。
社長: 51歳。テレワーク廃止を決定した経営陣の一人。
上岡社労士: Aハウジング社の顧問社労士。

*本記事に登場する固有名詞はすべて「仮名」です

「テレワーク廃止」に反対の社員、解雇できるのか?

「佐藤のような問題社員、解雇できないものでしょうか」

Aハウジング総務部長の中村は、同社の顧問社労士である上岡ひとみに相談した。

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「まず、テレワーク廃止に関する法的根拠を確認しましょう」と上岡は切り出した。

「会社には勤務場所を決定する権限があるのでしょうか?」と中村。

上岡は資料を取り出しながら説明を始めた。

「原則的に、使用者は業務上の必要に応じて労働者の勤務場所を決定する権限を持ちます。最高裁の判例でも明確に示されています」

上岡は東亜ペイント事件の最高裁判決(昭和61年7月14日判決)の資料を示した。

「この判例では、『他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではない』と判示しています」

「つまり、テレワーク廃止も可能だということですね」と中村。

「はい。さらに業務上の必要性についても、『高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべきである』とされています」

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