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超富裕層のために国家を解体しようとするのがトランプ&マスク体制の本質

資本主義は新たなユートピアの夢を見るか?

国家のリストラが行き着く先は

――経済が弱くなることで、むしろ政治家に期待する?

システムを問うのではなく、政治家のせいで経済が悪くなっているのだから政治家が何とかしろという考え方ですよね。新自由主義の時代には、政治はもう経済に介入することなく、民間の論理、市場の競争原理に任せると謳われ、政府や国家は退場していくはずでした。でも現実に新自由主義政策が実施される過程はまったくそうなっていません。近年では、1970年代以降(論者によっては1930年代以降)歴史的に現存してきた、新自由主義のメカニズムが詳しく研究されるようになりました。「小さな政府」や規制緩和などといった新自由主義の「理念」ではなく、あくまでもその「実態」が着目されているのです。

じっさい市場原理の理念のために何か改革を実施しようとすると、行政や立法といった国家の構造にメスを入れ、法律や政策を変更して既存の制度を変更するしかない。いまトランプ政権下でイーロン・マスクの政府効率化省(DOGE)が話題となっていますが、トランプ政権に反感を抱く官僚を解雇したり、政府の無駄を省くためといってDEI(多様性、公平性、包括性)を推進してきた行政機構を解体しようとする。ですがそれは、かれらが「理念」として謳う「国家の解体」とはほど遠いもので、文字通りの国家のリストラ、つまり国家の再構築にすぎないのです。スタートアップ企業のような効率的でトップダウン型の権威主義国家へと既存の国家を新しく作り替えようとする壮大な実験であると言えるでしょう。

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USAID(アメリカ合衆国国際開発庁)の事業見直しにしても、国民ファーストの名のもとに、結局のところ不動産や経済回廊などの融資プロジェクトに資金を回すための「ウォール街コンセンサス」にすぎないという指摘もあります。つまり、国家のリストラの行き着く先は、超富裕層の利害がよりダイレクトに反映された強大な国家資本主義です。

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