今年1月28日、経済アナリストの森永卓郎氏が死去した。
原発不明がんと闘いながらも、亡くなる直前までメディアに出演し続け、世界経済の行方に多くの警鐘を鳴らしてきた。
「AIバブルは崩壊する…」「日経平均はこれから大暴落する…」
彼がこう語った背景には一体何があるのか。そして残された私たちは、この先行き不透明な社会をどう乗り越えていくべきなのか。激動の時代を生き抜くための戦略と覚悟とは。
森永卓郎氏と、息子の康平氏がいまの日本のさまざまな病巣についてガチンコで語り合った『この国でそれでも生きていく人たちへ』より一部抜粋・再編集してお届けする。
『この国でそれでも生きていく人たちへ』連載第30回
『「世界大恐慌は再来します」…森永卓郎が感じていた“不況の前触れ”とその要因である“我々人間の愚かさ”とは』より続く。
「バブル経済」の仕組み
大恐慌は、アメリカだけの問題ではなく、資本主義経済が必然的に内包する問題、いわば「宿命」のようなものだ。
バブルの発生と、それに続く恐慌は、世界の歴史において過去何度も繰り返し起きている。比較的大きなバブルに限っても過去200年間で70回以上も発生している、という研究もある。
バブルの崩壊は、資本主義の宿命であり、必ず起きる。そうしたバブルの仕組みを喝破したのが、有名な経済学者のマルクスだ。
マルクスは、モノの価格は、2つの要因で決まると言っている。1つはその製品を作るためにどれだけの労働力を投入したのか、そのコストで決まる「労働価値」。もう1つは、その製品を使うとどれだけの便益を得られるかで決まる「使用価値」。
通常、「労働価値」と「使用価値」はほとんど同じになる。なぜかというと、普通、企業は使っても価値がないものを作ることはないし、また、作るコストを見ながら価格をつけるので、ある程度労働価値と使用価値が一致する価格に落ち着いていくからだ。