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米副大統領の演説は、実は対中国への「本気の宣戦布告」だった

ついに「米中新冷戦」が始まった

アメリカは、もう中国を信じない

ペンス氏は演説で「中国との冷戦」という言葉は一度も使っていないが、意識しているのは間違いない。というのは、要約では省いたが、米国独立戦争から説き起こし、第2次世界大戦、朝鮮戦争、ソ連崩壊という歴史の大きな節目における米中関係を振り返ったうえで、中国を批判しているからだ。

つまり、現在の米中関係が歴史的転換点にあることを強調している。米国は中国を支援し、国際社会への関与を手助けしてきたが「もはや、それはできない。対決する」と語っているのだ。

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これに対して、中国はもちろん猛反発している。

中国外務省報道官は1日に2回も異例の会見を開いて「捏造であり、荒唐無稽だ」と批判した。王毅国務委員兼外相は訪中したポンペオ国務長官に対して「間違った言動を直ちに止めよ」と抗議した。長官と習近平国家主席の会談も実現しなかった。

トランプ政権はもちろん、引き下がらない。中国と全面対決する方針は突然、決まったわけではないのだ。それは演説冒頭にヒントがある。ペンス氏は本題に入る前に1人だけ「マイケル・ピルズベリー博士」の個人名を挙げて「演説の機会を与えられて光栄」と述べた。

ピルズベリー氏は講演を主催したハドソン研究所の中国戦略センター所長で、国防総省顧問でもある。米中央情報局(CIA)でも働き、CIAのエクセプショナル・パフォーマンス賞を受賞した米国随一の中国専門家だ。『China 2049』(日経BP、原題は「The Hundred-year Marathon」)の著書がある。

ピルズベリー氏はもともと、ペンス氏が触れた「中国の経済民主化を促せば、やがて政治的にも民主化されて国際社会に溶け込む」という米国の「関与政策」を主導した中心人物の1人だった。「そういう期待は誤りだった」と認めたのが、著書のテーマである。

つまり、ペンス演説の仕掛け人はピルズベリー氏だ。彼は、単に「講演を主催した」というだけではない。演説内容そのものが、ピルズベリー氏が著書で訴えた主張と同じなのである。

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