BSD Licenseとは、広く使われているライセンスの中で、コピーレフトではなく、ライセンス条件が特に寛容なライセンスである。
概要
BSD Licenseとあるように、歴史的にはカリフォルニア大学バークレー校で生まれた、BSD系UNIXのために使われていた著作権表示、及びそれに付随するライセンス表記を発端としている。
ライセンス文はあまり長くないが、細かく条件の異なるさまざまなバリエーションが存在することが特徴である、そのため追加的許可を除けばバージョンごとにすべて条件が同じであるGPLなどと違い、個々の著作物のBSD-likeなライセンス表記について許可や条件を確認することが求められる。
また同じライセンス条件で修正BSDライセンスと呼ばれたり、三条項BSDライセンスと呼ばれたりすることも多々ある。
GPLとは違いコピーレフトではなく、派生著作物に対する義務は著作権表示などが主要な条件にとどまることが多い。
BSD宣伝条項
過去、BSDライセンスには広告媒体に初期開発者への謝辞を求める旨の条項(通称 宣伝条項)がついていた。
この条項はGPLの追加的制限の禁止をする条件と衝突しており、GPLでライセンスされたソフトウェアとの同時利用を妨げていた。詳しくは 'BSDライセンスの問題' を参照すること。
現在ではカルフォルニア大学バークレー校が著作権を保持している、4条項BSDライセンスでライセンスされたソフトウェアに関しては以下の声明により宣伝条項が削除されている。
ftp://ftp.cs.berkeley.edu/pub/4bsd/README.Impt.License.Change
ただし、バークレー校が著作権を保持していないコードはこの声明ではカバーされないため、2019年現在でも4条項BSDライセンスのコードは残っている。
BSDライセンスと特許
BSDライセンスには GPLやApache License version 2、MITライセンスと異なり 特許に対する暗黙的・明示的な特許ライセンスが存在せず、さらにBSDライセンスのバリエーションの中には明確に特許ライセンスが許諾されるわけではないことを規定する物が存在する。
Facebook社が開発するフロントエンドライブラリ React.js ではBSDライセンスでは特許の利用を認めず、別のPATENTSという名前のファイルで特許ライセンスを提供し、Facebook社に対して特許係争を起こした場合に当該ソフトウェアの特許ライセンスが終了するという条件が書かれていた。
2017年にApache ソフトウェア財団の中のプロジェクトでこの条件が問題となり、様々な議論が行われたあと Facebook社は React.js をBSDライセンスからMITライセンスへとリライセンスを行い、PATENTSファイルは削除された。
BSDライセンスと違反事例
一般にフリー/OSSライセンスへの違反事例は GNU GPLでライセンスされたソフトウェアの
ソースコードの開示義務を満たさなかった場合がしばしば取り沙汰されるが、
BSDライセンスのような、条件がシンプルなライセンスでも著作権表示をしなかった場合に、
ライセンス違反が起こりうる。
性質上、BSDライセンスへの違反がニュースとして記事になることも稀だが
近年、Slashdotで記事になった例としては
Intel社が自社のCPUの内部機能である Intel Management EngineがBSDライセンスで
ライセンスされている Minix 3を利用していることが、Google社のエンジニアによる
リバースエンジニアリングにより発覚した事例が挙げられる。
詳しくは以下の記事を参照すること。
- インテルx86マシンの奥深くでは人知れず「MINIX 3」が動作しており、脆弱性を作り出している。Googleらはそれを排除しようとしている
- Intel's ME May Be Massively Infringing on Minix3's Free Software License
関連項目
参考文献
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