ドルとは、以下の意味を持つ言葉である。
本記事では1.について解説する。
1.の概要
様々なドル
カナダドル(加ドル)やオーストラリアドル(豪ドル)など、ドルが名前に入った通貨は多い。
しかし、単に「ドル」と言った場合、ほとんどの場合はアメリカ合衆国ドル(米ドル)を指す。アメリカ合衆国は世界に強い影響を及ぼす覇権国家であり、米ドルは国際貿易で盛んに使われる基軸通貨として有名である。
この項目では全般的な意味としてのドルについて述べ、次の項目でアメリカ合衆国ドルについて述べる。
表記と補助通貨
ドルの記号は「$」で、漢字表記は「弗」で、英語表記は「dollar」である。ちなみに英語圏では「ダラー」に近い発音で読む。
補助通貨はセントであることが多く、ドルの100分の1の金額を表すことが多い。セントの記号は「¢」で、漢字表記は「仙」で、英語表記はcentである。ちなみにセント(cent)は100年とか1世紀を意味するセンチュリー(century)と同じ語源である。
語源
「ドル」の名前の起源を遡ると「ターラー(thaler)」になる。ヨーロッパではサンクト・ヨアヒムスタール[1]などで銀が採掘され、それぞれの谷(タール)で採れた銀から作った銀貨を「ターラー」と呼ぶようになった。「ターラー」はヨーロッパで広く銀貨の通称となった。後に「ターラー」はオランダで「ダアルダー(dalder)」、イギリスで「ダラー」と呼ばれるようになり、その後イギリスから独立したアメリカの通貨名として採用された。
欧米各国が「dollar」の名前を採用したことで、世界の多くの植民地で「dollar」が通貨として使われるようになった。その結果、「dollar」が世界中で見られるようになった。
日本では「ドル」と呼ぶ。これはもともと江戸時代に貿易していたオランダの影響により、銀貨のことを「ドルラル」と呼んでいたためとされる[2]。実際、明治時代の文章に「ドルラル」の文字を見ることができる。これが後に省略されて「ドル」になった。
或る日、朝起きていつもの通り用を弁じましょうと思て艫の部屋に行った、所がその部屋に弗(読み仮名:ドルラル)が何百枚か何千枚か知れぬ程散乱して居る。如何したのかと思うと、前夜の大嵐で、袋に入れて押入の中に積上げてあった弗、定めし錠も卸してあったに違いないが、劇しい船の動揺で、弗の袋が戸を押破って外に散乱したものと見える。
「ドル」が入った主な通貨一覧
現在使用されているもの
- アメリカ合衆国ドル(米ドル)
- カナダドル(加ドル)
- オーストラリアドル(豪ドル)
- ニュージーランドドル
- 香港ドル
- シンガポールドル(星ドル)
- 台湾ドル(ニュー台湾ドル)・・・記号は$だが、単位は一般的に元が使われる。
現在使用されていないもの
- スペインドル
正式には「ペソ」。1868年から代わってペセタが使われるようになり、現在はユーロに移行している。 - メキシコドル
通称「メキシコ銀」。スペイン植民地時代にメキシコで発行された銀貨を特に「メキシコドル(またはスペインドル)」と呼ぶ。現在、メキシコでは「ペソ」が流通している。 - ジンバブエドル
ハイパーインフレーションの例という悪い意味で有名な通貨。詳しくは「ジンバブエ・ドル」の記事へ。
1.の多くを占めるアメリカ合衆国ドル
米国の主要通貨
アメリカ合衆国ドル(米ドル)は、アメリカ合衆国で流通している主要通貨である。同国の補助通貨はセントであり、ドルの100分の1の金額である。硬貨として流通するセントに対し、ドルは紙幣で流通する。2020年3月現在は1ドルはだいたい100円ちょっと。
載っている肖像画
- 1ドル札
ジョージ・ワシントン(初代大統領) - 2ドル札
トーマス・ジェファソン(第3代大統領) - 5ドル札
エイブラハム・リンカーン(第16代大統領) - 10ドル札
アレクサンダー・ハミルトン(初代財務長官) - 20ドル札
アンドリュー・ジャクソン(第7代大統領) - 50ドル札
ユリシーズ・グラント(第18代大統領) - 100ドル札
ベンジャミン・フランクリン(初代郵政長官/避雷針の発明者)
あまり2ドル札は流通しておらず、見かけるのは稀である。
2020年に黒人女性のハリエット・タブマンなどを肖像画にしたデザインへの変更が予定されていたが、延期されてしまった。あと数年間はこの肖像画のままだと思われる。
為替
日本の朝のニュースの為替相場では、ほとんどの場合、ドル円相場が表示される。これは「円高」「円安」の基準となり、経済に大きな影響を及ぼす。そのようなこともあって、ドルは大抵の日本人が「円」の次に思い浮かべる通貨と言える。
また、何かしら国際情勢が不安定になった場合は、とりあえず他の通貨と交換しやすいドルを買っておくとよいとされることも多い(有事のドル買い)。
他国での流通(ドル化)
かなり影響力の強い通貨であるため、他の国でもアメリカ合衆国のドルが流通していることがある。このことをドル化という。ドルが流通する理由は以下に挙げられる。
関連動画
関連項目
脚注
- *「聖ヨアヒムの谷」の意味。現在のチェコのヤーヒモフ
- *最初はオランダでも「dalder」などのスペルが多数あったが、17世紀ごろから「dollar」にスペルが統一された(参考
)。それが日本に入った時、「dokter(ドクトル、医者)」などと似たような読み方をするようになったと思われる
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