部下から称賛されるミドルマネジャーの特徴
Illustration by Helena Pallares
サマリー:ミドルマネジャーは、しばしば厳しい批判や誤った思い込みの矢面に立たされる。しかし、筆者らの調査によれば、多くの部下が「ミドルマネジャーのおかげで組織の道徳的指針が守られ、自身の人生に有意義な変化がもた... もっと見るらされた」と語っていることがわかった。本稿では、模範となるミドルマネジャーの特徴を踏まえ、部下から称賛されるマネジャーになるための具体的なヒントを紹介する。 閉じる

ミドルマネジャーに秘められた潜在能力

 ミドルマネジャーは何かと悪者扱いされる。業務の停滞を招いていると非難され、官僚的で非効率だとやり玉に挙げられ、有能な人材が逃げ出す「悪い上司」と指をさされるなど、厳しい批判や誤った思い込みの矢面に立たされている。

 しかし、筆者はそうは思わない。道徳的で倫理的なリーダーシップについてMBAの学生と議論を重ねた結果、ミドルマネジャーの中にも力強くて、一貫性のある、陰のヒーローたちの存在が見えてきたのだ。彼らはチームや組織を動かして、信念のある意思決定を求め、手っ取り早い方法ではなく適切な選択をするように促している。

 有能なミドルマネジメントは、あらゆるレベルのリーダーシップが注目されているいまの時代において特に、かつてないほど重要である。ミドルマネジャーは日々の業務において、組織の道徳的および倫理的な基盤を構築する能力を持っている。このことは、2023~24年に筆者の「リーダーシップにおける道徳的複雑性」の授業を受講中または受講したMBAの学生および卒業生198人を対象に行った調査でも、一貫して示された。

 ビジネスにおける道徳的なリーダーシップの例を尋ねたところ、多くの回答者が(パタゴニアのイヴォン・シュイナードやタタ・グループのラタン・タタなど)著名なCEOを挙げ、その並外れた行動から学ぶことができると述べた。しかし、それ以上に多く言及されたのは、自分の(現在および過去の)上司に関する思い出であり、ミドルマネジャーがチームメンバーの人生に有意義な変化をもたらし、組織の道徳的指針を守ったという具体的なエピソードだった。

 MBAの学生による回答は、何度も経験するささやかな瞬間を強調するものが多かった。『ニューヨーク・タイムズ』紙のコラムニストであるデイビッド・ブルックスも、ミドルマネジャーの「さりげない礼儀正しさ、ちょっとしたほめ言葉」に言及している。それ以外にも、組織や顧客からのプレッシャーが高まった時でさえ、自分の上司がチーム全体と深く関わって、独自の視点から反論したり、問題を再定義したりする姿勢についても語られている。

 こうしたささやかな瞬間に思いをめぐらし、ミドルマネジャー全般に広げて考えると、私たちの社会の道徳的基盤を強化するという彼らの素晴らしい潜在能力が見えてくる。

手本となるミドルマネジャーの特徴:チームへのコミットメント

 調査対象の若いリーダーにとって、手本となるリーダーは、直属の部下に対して個人にも集団にも強いコミットメントを示す。これは回答者が最も多く挙げた特徴だ。このコミットメントの最もわかりやすい表現は、部下を思いやる振る舞いである。深い悲しみにある部下や、病気などの理由でいつものように仕事ができない部下のもとを駆けつけるマネジャーの姿勢に影響を受けたことを語る人もいた。

 コミットメントに基づく振る舞いは他にもある。たとえば、慎重に約束をし、何よりもその約束を守ること。人々を擁護して、前進を支援すること。懸念を表明されたら注意深く耳を傾けること。自分の視点が足りないのではないかと不安になった時に、組織内で(地位に関係なく)さまざまな人に助言を求めること、などだ。