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異なる2種類のユーザーを結びつける
世界の事業環境を一変させた製品やサービスについて思い浮かべてみてほしい。その多くが、異なる2種類のユーザー・グループを結びつけ、ネットワークを形成した製品やサービスであることに気づくのではないか。
その具体例を紹介しよう。第2次世界大戦後の金融サービス業界に最も大きな影響を及ぼしたイノベーションとは何だろうか。それは、ほぼ間違いなくクレジット・カードである。クレジット・カードは、消費者と加盟店を結びつけている。そのほか、新聞やHMO(健康維持機構)、コンピュータOSもこれと同じ役割を果たしている。
これらは、経済学者が「市場の二面性」(two-sided market)あるいは「ネットワークの二面性」(two-sided network)と呼ぶものだ。新聞は購読者と広告主を、HMOは患者と医療機関を結びつけ、OSはコンピュータ・ユーザーとアプリケーション開発者をつなぐ。
このように、異なる2種類のユーザー・グループを結びつけ、一つのネットワークを構築するような製品やサービスを「プラットフォーム」と呼ぶ。プラットフォームは、2種類のユーザー・グループ間の取引を促すインフラとルールを提供するものだが、その形態はさまざまである。
たとえば、消費者たちが所有するクレジット・カードや加盟店側が使用するCAT(信用照会端末機)といった有形物もあれば、ショッピング・モール、モンスターやイーベイのようなウェブサイトなど、サービスを提供する場もその一種である。
このような二面的なネットワークは多くの業界で見られるが、既存の製品やサービスとも共存関係にある。ただし、二面的な市場と従来の一面的な市場では、バリューチェーンに決定的な違いがある。
ご承知のとおり、後者のバリューチェーンでは、価値は左から右へと一方向に移動する。左側には企業が負担するコストがあり、バリューチェーン全体が生み出す価値とコストの差が利益として右側に残る。
しかし、前者の二面的な市場のそれでは、左側にも右側にもコストと利益の両方が存在する。プラットフォームの両側に存在する2種類のユーザー・グループにサービスを提供し、それぞれに利益を得るからである。とはいえ、詳しくは後述するが、プラットフォーム・プロバイダーは片側のユーザー・グループを優遇する場合が多い。
2種類のユーザー・グループが相互に引きつけられる現象は、経済学者が「ネットワーク効果」と呼ぶものである。このネットワーク効果ゆえに、一方のユーザー・グループにとってのプラットフォームの価値は概して、もう一方のユーザー・グループの数によって決まる。プラットフォームが両方のユーザー・グループのニーズを満たせば満たすほど、その価値は高まる。
ビデオ・ゲーム開発者は、プレーヤーの数がクリティカル・マス(変化が生じるうえで必要な最小値)に達しなければ、ゲーム開発には乗り出さない。ユーザー基盤が十分でなければ、ゲーム開発の先行投資を回収できないからである。一方、プレーヤーにとっても選べるゲーム・ソフトの数は多ければ多いほどよい。