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2010年までに温室効果ガスの拡大をストップさせる
伝統的な重厚長大産業の企業であろうと、投資銀行のように環境にほとんど負荷を与えない企業であろうと、気候変動の影響がだんだん大きく、身近に感じられるようになるだろう。
地球温暖化がもたらす危機について疑問視する人たちでさえ、温暖化を懸念する人たちが相当数存在していることは承知しており、いずれにしてもさまざまな影響が生じることは避けられないと考えている。
投資家たちはすでに、温暖化によって競争力が低下すると思われる企業への投資を控えつつある。温室効果ガスの排出にしかるべき代価を課す国が世界的に増えており、原材料費やエネルギー価格の上昇に直面している企業も少なくない。
また消費者も、商品の購入に当たって、その企業が環境保護活動にどのように取り組んでいるかを考慮するようになっている。さらに、温室効果ガス排出権を取引する市場、いわゆる「炭素市場(カーボン・マーケット)」が急成長しており、その取引高は年間数百億ドルに達している。
こと温室効果ガスの排出規制では、他の先進諸国に後れを取っているアメリカでも、気候変動に関する法律をつくるべきか否かという議論よりも、どのような法律をいつ制定するのかという議論のほうが主流になりつつある。
企業が気候変動リスクに対処し、これを軽減すると共に、そこに新たなチャンスを見出すことができれば、来るべき「炭素削減社会」においても競争力を維持・向上できるであろう。
気候変動がビジネスにもたらす影響を予測するにはどうすればよいのか。また気候変動リスクにいかに対処し、そこから生まれてくる新たなチャンスを生かす戦略をどのように立案すればよいのか。本稿では、一つのガイドラインを示したい。
以下、キャタピラー、ウォルマート・ストアーズ、ゴールドマン・サックスなど、さまざまな事例を紹介する。産業界や消費者の間で気候変動リスクへの関心が高まっている状況にあって、いずれも環境対策にきわめて積極的な企業である。
ただし、我々が伝えたいのは、次の点である。横並びの対策ではおよそ不十分であり、ライバルよりも効果的な対策を、ライバルよりも迅速に講じなければならないという点だ。
手短に申し上げよう。気候変動は間違いなく世界的に深刻な問題を引き起こしている。これは間違いない。大気中に温室効果ガスが蓄積されることで、地球の気候系は歴史上かつてないスピードで変化しつつある。
観測史上、2005年の平均気温は最も高かった。また、平均気温の高い年ベスト・テンはすべて1980年以降である。北極、南極、グリーンランドの氷は溶け続けている。世界の氷河のほとんどが縮小しつつある。