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大分市の社会医療法人敬和会では、グループの医療・介護施設ネットワークを軸に地域の医療機関や行政などと連携しながら、患者中心の包括的ヘルスケアの実現を目指している。その基盤として、患者一人ひとりのデータを統合・分析できる患者CRMの構築をデロイト トーマツ コンサルティングの支援を受けながら進めている。日本が目指すべき地域ヘルスケアの将来像について、敬和会理事長の岡敬二氏と、デロイトの北原雄高氏、中村亮太氏が議論した。
地域における包括的なヘルスケアの提供を目指す
北原 最初に敬和会について簡単に紹介していただけますか。
岡 敬和会は1954年、父の岡宗由が岡医院という診療所を大分市内に開院したのが始まりです。1963年に病院になり、1989年に医療法人敬和会を設立、2009年には社会医療法人として認定されました。
現在は、急性期・救急医療の大分岡病院を中心に、回復期医療の大分リハビリテーション病院のほか、在宅医療クリニック、訪問看護ステーション、介護老人保健施設、精神病院などを運営しています。
北原 急性期だけでなく、回復期から在宅ケア、介護まで包括的な医療・ヘルスケアを提供されているのが敬和会の特徴です。敬和会が目指しているヘルスケアの姿とはどのようなものですか。
岡 地域社会や住民から信頼される医療機関として、患者中心の医療の実現を目指しています。高度な急性期医療から回復期、生活期、在宅、精神医療、さらには国際医療を含めた切れ目のない医療・介護サービスを8施設が連携して提供しています。このような地域包括的なヘルスケアの提供体制を、私たちは「敬和会ヘルスケア・スマートリンク」と呼んでいます。
このヘルスケア・スマートリンクを軸として、敬和会と地域の医療機関、介護福祉施設や行政とも相互に連携しながら、地域の人たちが安心して暮らせるヘルスケアを実現していきたいと考えています。
北原 地域における包括的なヘルスケアの提供を目指すきっかけはあったのですか。
岡 米国の医療事情を視察する機会が何度かあり、それがきっかけでした。米国には地域に存在する複数の病院やリハビリ施設、介護施設などで構成される統合ヘルスケアネットワーク(IHN)と呼ばれる組織があります。IHNの組織化は1990年代から本格化したのですが、地域住民のニーズに合ったヘルスケアサービスを柔軟に提供し、その地域で安心して生活できる基盤になっています。
そうしたIHNのような仕組みを日本でも提供できたら地域への貢献になると考え、目標にしてきました。
北原 米国ではIHNの中に保険会社が入っていて、医療保険の提供と医療費の管理を行っているケースもあります。日本ではさまざまな制度が追いついていない面があり、IHNの構築は難しいという声があります。