2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻から今日で3年を迎えた。この戦争の特色はインターネット上で様々な“ミーム”が生まれ拡散されたことだろう。

 絶望的な状況下で抵抗を続ける人々を称えるものから、ネットユーザーの関心やユーモアを集めたものまで、その性格は様々であるが、これほどまでに多種多様なネットミームを生み出した戦争は初めてかもしれない。開戦から3年の節目に、この戦争を特色づけるミームを振り返ってみたい。

ミグ29「キーウの幽霊」モデル(ICM社サイトより)

日本の同人誌にもなった幻のエースパイロット『キーウの幽霊』

 戦争の最初期に生まれたミームが「キーウ(キエフ)の幽霊」だった。

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 ロシアによる侵攻が始まってから数日で、ウクライナ空軍の戦闘機ミグ29のパイロットが6機のロシア軍機を撃墜したという真偽不明の情報がSNS上に流れ、いつしか「キーウの幽霊」と名付けられた。ウクライナの模型メーカーICMはウクライナ空軍のミグ29の「キーウの幽霊」モデルまで出している。

 また、キーウの幽霊をモチーフにした日本の同人誌『キエフの幽霊』はネット上で話題を呼び、ウクライナ語に翻訳されて現地でベストセラーとなった。その事態が国内外でニュースになるなど、ミームは国境を越えた動きをする。

ウクライナ政府もミームに乗ってSNSに投稿

 ウクライナ政府もこのミームに乗り、2022年2月27日にウクライナ政府公式Twitter(現:X)アカウントで「ウクライナ空軍のエース」としてツイートしている。

 後にキーウの幽霊の撃墜が海外で報じられた際、ウクライナ空軍公式SNSはキーウの幽霊とは第40戦術航空旅団に所属するパイロット全員の集合的イメージであると説明している。

 キーウの幽霊が最初から官製のプロパガンダとして生まれたのか、自然発生したミームにウクライナ政府が乗っかったのかは定かではないが、ネットで拡散するミームを積極的に国家が取り入れ、戦意高揚に利用する図式がこの戦争で示された最初期の例だろう。