見出し画像:福本伸行『最強伝説黒沢』6巻より ◆はじめに──文系のボンクラ ……数学の実力がないには我ながら呆れている。代数だいすうの試験などと聞いたら殊ことに身震みぶるいする。 実際、僕ほど徹底した非理科的な人も少ないだろう。代数、幾何きか、物理、化学……一つとして満足にできるものはない。物理化学などはあきらめたが、代数幾何などはまだまだこれから当分ある重要学科だ。ゆえに「受験」などという事を全然離れても、この夏に数学を大いにやるべき要ようがあるのである。 ところが妙な癖があるもので、数学ができなくても頭必ずしも鈍どんならずの証明として夏目漱石を挙げたり……苦心惨たん、自己について自己弁護をする。こんな事は畢竟ひっきょう負け惜しみだとは万々ばんばん承知していながらも、自分で自分を頭が悪いと断定することはあまりいい気持ちのするものでない。⁰¹ 呆れるほど「数学の実力がない」。理系が苦手で「