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下水道の不都合な真実。陥没事故で露になったリスクと高コスト

特集
世界に挑むICTスタートアップリーグ 成功への道

 最近、都市部で道路の陥没事故が多発している。原因は下水道管の老朽化で、2025年1月28日に埼玉県八潮市で発生した大規模な道路陥没事故はその典型例だ。国のデータによると2022年度には全国で1万548件もの陥没事故が報告されており、今後もリスクは続くと予想される。下水道の耐久年数は約50年とされており、これから多くの下水道が更新時期を迎える。一方で、業界は深刻な労働力不足や若手人材の育成不足に悩まされており、将来の工事対応は不透明だ。

 全国平均の下水道普及率は81%と高いものの、実際は都市部に偏っている。地方では普及率が低く、和歌山県は29.5%、徳島県は19.3%にとどまっている(参考:都道府県別の下水処理人口普及率)。そもそも下水道インフラを整備する理由は、浄化槽に比べてメンテナンスコストが低いことと、汚水処理能力が高く環境に優しいからだ。しかし、近年の浄化槽は有害物質の効果的な除去や省エネ機能が格段に向上し、IoT技術を活用した遠隔監視や管理システムも登場している。例えば、ICTスタートアップリーグに採択されている株式会社Nocnumは、浄化槽の状態を遠隔で監視できるIoTセンサーを開発し、AIで異常を検知することでメンテナンスの効率化とコスト削減を実現している。

 政府は高度成長期以来、下水道の普及を推進してきたが、半世紀を経た現在、人口減少によりその維持管理が重い負担となっている。一方、浄化槽はかつての悪臭や土壌汚染といった環境課題はすでに克服しており、各家庭で汚水処理をすることで環境に優しく、災害にも強いというメリットがある。自治体はコンパクトシティを推進しており、下水道のコストメリットが出せない郊外では、今後も浄化槽システムが有望な選択肢となりそうだ。

文:スタートアップ研究部

ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、気になる取り組み、また成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みからそれらをピックアップしていく。

※ICTスタートアップリーグとは?

ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
https://ict.startupleague.go.jp/

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