連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第168回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 1月18日~24日
データ活用が「成果」を生む条件/「ITの内製化」が進んでいる業務/生成AIコーディング支援の懸念点、ほか
2025年01月27日 08時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回(2025年1月18日~24日)は、「内製化」が進んでいる業務、コーディングへの生成AI活用と懸念点、いま注目を集め始めた「マスターデータ管理(MDM)」、成果の出ないデータ利活用の背景に関するデータを紹介します。
[DX] 内製化が進んでいるのは事業や業務に密接な領域(IDC Japan、1月22日)
・国内企業のIT/DX部門では外製(外注)より内製の傾向が強い
・内製が最も多いのは「業務プロセスの改善」で、およそ65%
・外製が多いのは社内インフラの下流工程全般で、およそ50%
従業員300人以上の国内企業(ITエンドユーザー)を対象に、IT組織における業務内製化と規程整備の現状について調べた。内製の傾向が強いのは「業務プロセスの改善」(「完全に内製/内製が多い」の合計で64.3%)、「データの分析」(同 54.4%)など、事業や業務に密接に関連する領域。一方、外製(ITベンダーへの外注)傾向が強かったのは、システム保守/運用やヘルプデスクといった、比較的標準化/ルール化しやすい下流工程に集中していた。
⇒ ITシステムの内製が少ないとされてきた日本企業だが、業務内容によっては内製比率も高い。継続的に見て、どう変化してきた/していくの注目したいところです。
[AI][開発] 生成AIのコーディング支援は8割が活用、ただし新たな課題も発生(OutSystemsジャパン、1月17日)
・ITプロの約8割が「コーディング支援に生成AIを活用」
・ただし6割超が「セキュリティやガバナンス」を懸念点に挙げる
・5割が「AIを既存のソフトウェア開発ワークフローに統合するのが難しい」
世界のITプロフェッショナル1700人を対象とした調査「アプリケーション開発の現状」(2025年版)より。生成AIの活用はアプリケーション開発の現場に広がっており、81%の回答者が使用している。ただし回答者の62%が、生成AIの「セキュリティやガバナンスに関する懸念」も持っている。また、50%は「既存の開発ワークフローへの組み込みが難しい」と答え、「生成AIを信頼している」という回答者は40%にとどまった。
⇒ 74%が「今後12カ月で10個以上のアプリ構築」を計画するなど、アプリ開発需要は高く、生成AIの活用で生産性を高めたいところ。“生成AI活用を前提とした”開発ワークフローの構築など、新たなアプローチが必要なのかもしれません。
[MDM][データ管理] 目新しくない「マスターデータ管理(MDM)」、AI時代に脚光浴びる(アイ・ティ・アール、1月23日)
・2023年度の国内MDM(マスターデータ管理)市場は前年度比20%増
・2024年度も引き続き21.7%増と好調を予想
・DXとAIが追い風、市場きぼは2028年には2023年のほぼ2倍へ
データを一元管理して品質や正確性を確保するマスターデータ管理。2010年代前半から注目されてきたが、運用の難しさや導入コストの問題から活性化しない状況が続いていた。しかし近年、企業がDX推進やAI活用に取り組むようになったことで、そのニーズが高まっているという。2023年度、2024年度は20%超の成長が予測されており、2023~2025年度の年平均成長率(CAGR)も16.7%が予想されている。
⇒ DXもAIも「社内データ活用」の取り組み。その活用を進めるうちに、データの品質や正確さの重要性に気づく、という流れが生まれています。
[データ] データ活用の取り組み、9割超が「十分な成果を得ていない」理由は?(ガートナージャパン、1月23日)
・データ活用の取り組みが「全社的に十分な成果」はわずか8%
・成果と相関関係があるのは「取り組む目的や目標が明確かどうか」
・課題は「スキル不足」(28.3%)、「現場の理解や協力の獲得」(20.8%)など
日本企業のデータ利活用に関する調査より。「データ利活用が全社的に十分な成果を得ている」組織はわずか8%。それでも、前回調査(2023年11月)の3%からは5ポイントの増加。「取り組みの目的や目標が明確」な組織では成果が得られていることも分かった。課題のトップ3は「スキル不足」(28.3%)、「現場の理解や協力の獲得」(20.8%)、「業務への適用」(20.3%)。
⇒ データ活用という“手段”を使ってどんな目的や目標を達成したいのか、関係者全員が理解して取り組める環境が必要です。
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