米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)は2023年11月28日(米国時間)、年次イベント「AWS re:Invent 2023」で新しい生成AI(人工知能)アシスタントのサービス「Amazon Q」を発表した。企業向けに特化し、AWSの各種クラウドサービスを熟知したエキスパートとしての顔や、自社データを使ってカスタマイズできるビジネスエキスパートとしての顔などを持つ。
AWSのアダム・セリプスキーCEO(最高経営責任者)は基調講演で、「AIチャットアプリケーションは消費者にとって便利だが、多くの場合、一般的な知識だけでは業務では機能しない」と述べ、競合のAIアシスタントサービスとの差異化を強調した。
同日に米国東部・西部リージョンでプレビュー版を公開し、対応言語は英語のみ。AWSの管理コンソールやドキュメントページ、AWSのWebサイトから利用できるほか、コーディング支援ツール「Amazon CodeWhisperer」で使うこともできる。Amazon Qの基盤となった大規模言語モデル(LLM)については、「生成AI開発基盤である『Amazon Bedrock』で利用できる複数のLLMを組み合わせた」(AWS)としている。
セリプスキーCEOはAmazon Qを使った4種類の用途を紹介した。第1は開発者を支援する機能だ。「AWSが持つ17年分の経験でAIをトレーニングした」とセリプスキーCEOが説明した通り、Amazon QはAWSの各種サービスを熟知し、開発者によるAWS上でのアプリケーションの構築を支援する。
AWSの管理コンソール画面からチャットを開始できる。基調講演では、「ゲーム用途で映像のエンコードなどをする際に、最も高いパフォーマンスを発揮するAmazon EC2インスタンスは?」と質問すると、Amazon Qが「VT1インスタンス」などを挙げ、それぞれの理由を解説するデモを披露した。
AWSによれば、「生成AIサービスであるAmazon Bedrockについて教えてください」といったサービス概要に関する単純な質問や、「イベントドリブンのアーキテクチャーを構築するためのベストプラクティスは」などの最適なサービスを見つける用途などで利用できるという。コンソール画面に「Troubleshoot with Amazon Q」のボタンが追加され、設定にエラーが生じた際などにボタンを押すと修正方法などを提示する。
1000種類のJava8アプリケーションを2日でJava17へアップグレード
既存コードのアップグレードにも対応する。コードを解析して修正が必要な要素を特定し、新しいコードを生成する。基調講演では「Java 8」から「Java 17」へアップグレードするケースを紹介。開発者5人のチームが、1000種類のアプリケーションのアップグレードを2日間で実施できたという。
セリプスキーCEOは「Amazon Qが顧客のトラブルシューティングやワークロードの最適化にかかる時間を大幅に短縮できる」と期待を込めた。
第2の用途は、マーケティングや営業、人事、総務など各種の専門職を支援するアシスタント機能だ。Amazon Qは、ユーザー企業の自社データと接続してカスタマイズが可能。「Amazon S3」をはじめ、Dropbox、やGoogle Drive、Microsoft 365、Salesforceなど40以上のサービスと連携できる。社内データと接続することで、「ロゴの使用に関する最新のガイドラインを教えてほしい」といった自社に特化した指示に回答できる。文書の要約やメールの下書きといった業務支援機能も持つ。
既存の認証システムを利用して、社員1人ひとりに対して、アクセスできる情報に制限を加えることも可能だ。コネクターを経由して、Microsoft 365など外部サービスで設定したアクセスコントロールを引き継げる。