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SNS上の真偽不明な情報にどう向き合うか? 有識者と学生が考える現代の情報リテラシー

さまざまなデジタルプラットフォームが普及し、企業や著名人だけではなく、一般消費者も発信できるようになった昨今。“SNS時代”とも呼ばれる今、ファッション&ビューティ業界でも、SNS運用を積極的に行う企業も多いだろう。世界中のユーザーに向けて発信が可能であり、直接コンタクトを取ることもできる──手軽でありながら大きな影響力を持つ一方で、人々の生活に悪影響をもたらす側面があるのも事実だ。日々多くの情報が飛び交う中で、人々はどのように情報を取捨選択していくべきなのか。ロート製薬「スキンアクア」の事例を例に挙げ、有識者と学生を招き、ライブ配信でディスカッションを行った。

不確かな情報が拡散され
SNSで話題になった
「スキンアクア」“トーンアップUV”

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ロート製薬が有する「スキンアクア」は、ドラッグ&バラエティーストアやコンビニエンスストアでも購入できる日やけ止めブランドだ。中でも”トーンアップUV”(販売名:“スキンアクアトーンアップUVエッセンスa”)は、みずみずしい使い心地とメイクアップ効果によって肌を明るくみせてくれることから、消費者に支持されるブランドのヒット商品でもある。しかし昨年、同商品に含まれる特定の色素についての危険性がSNSで拡散され、多くのユーザーの不安を煽った。これに対し、ロート製薬の公式サイトでは安全性に関する案内を公開し、同商品に使用されている色素は全て厚生労働省に認可されていること、商品開発過程で安全性評価を行なっていること、研究の結果、万が一同商品の全量が体内に入っても悪影響を及ぼさないと判断していることを報告した。

ロート製薬の“品質”管理

ライブ配信に先立ち、藤田朋子ロート製薬信頼性保証部副部長にロート製薬の品質管理について尋ねた。同社では原材料の選定に始まり、製剤の安全性評価、生産過程での品質管理・確認を行うなど、多くのプロセスを重ね商品の品質・安全性を担保。さらに顧客からの問い合わせに対して1つ1つ真摯に向き合い、各部門と連携しながら問題解決に努め、更なる品質向上に努めているという。「今回話題になった日やけ止め“トーンアップUV”についても、このような品質管理意識の下、原材料に対する調査・試験を行った上で製品化しており、懸念されているような肌への影響は極めて低いと考えている。さらに「お客さまが不安になるような事象が発生した際に、迅速に正しい情報を発信する体制を整えている」と語った。

SNSのデメリットとは?
有識者・学生と考える情報リテラシー

2月3日に行ったライブ配信では、森山沙耶日本デジタルウェルビーイング協会(JDWA)代表理事と、早稲田大学学生団体Rethink Fashion所属の玉造はなさん、河村和奏さん、早稲田大学繊維研究会所属の石橋愛理奈さんを招き、SNSへの向き合い方についてディスカッションを行った。キュレーターを務めた村上要「WWDJAPAN」編集長は、ファッション業界でのSNS事例として「ブランドのデザイナー交代がささやかれる時、まだ確証が持てないにも関わらずあたかも確定事実のように発信されることも多く、その情報を事実だと思い込んでいるようなコメントも多く見られる。また、その不確かな情報が拡散されることにより誰かを傷付けてしまうこともあり得るだろう。SNSではタイムリーに多くの情報を得られたり、気軽に人とつながりが持てる一方、デメリットもあるのでは」と疑問を投げかけた。

デジタルウェルビーイングを
かなえるための工夫とは

「実際にSNSの利用時間数とメンタルヘルスには相関関係があるという研究結果があり、特に米国では社会的に問題視されている」と語る森山代表理事。さらにネガティブな情報が拡散されやすい理由について「自分の身を守るために危険性がある情報をいち早く察知するのは人間本来の性質であるからこそ、ネガティブな情報は人々にキャッチされやすい。またSNSの特性として、アルゴリズムによって自分の関心がある情報ばかりが集まり、結果的に受け取る情報に偏りが出てしまう“フィルターバブル”が挙げられる。そして特定のトピックについて、同じような意見や傾向を持つ人々や情報源とのやりとりを繰り返すことでその考えが強化されてしまう”エコーチェンバー現象”が起きやすいのもSNSの特徴だ。こういったSNSならではの特性が、利用者の考え方を偏らせたり、メンタルに悪影響をもたらすことへとつながっている」と続けた。

普段からトレンドリサーチや、買い物の参考情報としてSNSを活用することが多いと言う大学生3人。今回取り上げた「スキンアクア」”トーンアップUV”に関する発信を実際にTikTokで見たことがあると言う玉造さんは「専門家のような、白衣を着た人が『使用するのはダメ』と発信している動画を見つけて、私も実際に使用したことがある日やけ止めだったので不安になった」と自身の体験談を語った。このように、不確かな情報により不安や恐怖を感じることや、依存性が高いことから長時間の利用により睡眠の質が低下するなど、身体的な悪影響も及ぼすSNS。健康的に、そして安全に使用していくためには、一旦どんな工夫ができるのか?

“デジタルウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態を保ちながらデジタルを利用すること)”を実現するために、森山理事長は次のように話す。「まず重要なのはセルフコントロール力を身につけること。これは、目の前にある衝動に駆られるのではなく長期的に見て価値があることを見極める力を養うことを言う。そのためには、多様な情報源を意識的に選び、自分が属しているコミュニティーの外の意見に触れること、そして得られた情報が本当に正しいのか疑問を持ち、インターネット上だけではなくフィジカルな場で人との会話やディスカッションの機会を持つことがポイントだ」。また、意識的にデジタルデバイスから離れる“デジタルデトックス”、仕事や学業とプライベートで使うプラットフォームやアカウントを分けたり、夜間はおやすみモードを使用するなど、デジタルを使う時・使わない時の境界を引く“デジタルバウンダリー”なども、“デジタルウェルビーイング”に貢献する工夫だという。

とは言え、完全にデジタルデバイスから距離を置くのはなかなか難しい。そんな人は「運動する時など、デジタルデバイスを使わない時間を習慣的に作るのもおすすめだ」と森山理事長。そして最後に「ロート製薬の事例のように、企業のHPやSNSで正しい情報を発信しているケースが多いため、まずは公式の情報をチェックするのも大切だ」と締めくくった。

PHOTOS:SHUHEI SHINE
MOVIE:INFAS.COM
問い合わせ先
ロート製薬コミュニケーションコール(スキンアクア)
0120-503-610