日経サイエンス  2014年3月号

乱流の中の秩序

D. マッケンジー(サイエンスライター)

海の流れや風などはカオス的な自然現象だが,あるラインを境に流れの向きが大きく変わっていることがある。そうした目には見えない境界線を「輸送障壁」という。いわゆる「ラグランジアン・コヒーレント構造」の一種で,様々なカオス的な現象の挙動を予測できる可能性が出てきた。この構造を理解することは,流出原油の回収や,海難事故の捜索活動に役立つだろう。血流や気象など乱流現象の解明にも有用だ。

再録:別冊日経サイエンス276『数学の楽園2 和算からアインシュタイン・タイルまで』

著者

Dana Mackenzie

カリフォルニア州サンタクルーズ在住のフリーの数学・サイエンスライター。プリンストン大学で数学のPh.D.を取得。チェスの米国終身マスターでもある。近著は「The Universe in Zero Words」(Princeton University Press,2012)。

原題名

Walls of Water(SCIENTIFIC AMERICAN July 2013)

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