知らないと損!新体力テスト×スポーツ履歴書で子どもの競技適性を知る方法<1>

あのテストが世界とつながっている?

毎年春に小学校、中学校で実施されている「新体力テスト」。いまその活用方法に、国が新たな仕組みを導入しています。世界で戦えるトップ選手の発掘を目的に、履歴書ツールを稼働させ、そのデータをもとに適性がある競技へのマッチングを行うシステムを構築、発展させていこうと動いています。

保護者なら誰もが手にする我が子の新体力テストの結果。その生かし方とは。トップアスリートを目指す子どもだけでなく、健全な成長を望む親にとっても有益な日本スポーツ界の最前線。5回連載の第1回です。

その他スポーツ

【連載の第1回、第2回を読むとわかること】

・未来のトップアスリートを見つける最新手法とは?

・新体力テストの仕組みと、見落とされがちな課題

・国が推進する「スポーツ履歴書ツール」の活用方法

・実際にツールを導入し、選手育成に活かしている競技団体

・保護者必見!お子さんの成長を記録する「履歴書ツール」の登録方法

お子さんの運動能力、記録していますか?

お子さんの運動能力、記録していますか?

ダイヤの原石見つけたい

突然ですが、国が主導して作られたアスリート用の「履歴書ツール」がある事を知っていますか。

アスリート・パスウェイ・システム=英語での頭文字を取って「APS」。

23年9月から稼働された運営元の日本スポーツ振興センター(JSC)のHPの説明では…。

「まだスポーツをしていない人からアスリートとして活動している人までのさまざまな個人がスポーツ関係者とともに、みんなのスポーツへの挑戦を記録し、将来の世代に伝えるためのシステムです」

いわば、公的機関肝いりのスポーツ履歴の管理ツール。自身で体力測定結果や競技歴などを記入していくことで、幼少期からの成長記録が一覧できる。

JSCが分析した同年代の体力測定値と比較し、レベルや課題を把握することができる仕様も特長になっている。

体調管理アプリなどはあまた世に出回っているが、子どものスポーツのデータを蓄積していけるツールは民間でも珍しい。

今取り組んでいる競技以外の特性を見いだされる例も

今取り組んでいる競技以外の特性を見いだされる例も

しかも、このシステムは現在、国が推し進めているトップアスリート発掘プロジェクト、「J-STARプロジェクト(ジャパン・ライジング・スター・プロジェクト)」につながっている。

17年からJSCによって稼働している同プロジェクトは、24年パリオリンピックで8年目にして初のオリンピアンを輩出したばかり。

自転車競技で日の丸を背負った19歳の垣田真穂は、当時で競技歴はまだ5年だった。

幼少期から水泳やサッカーに取り組んできたが、中学校3年時に自転車への競技特性を見いだされた。

いま、今後も続くような人材を輩出していきたい同プロジェクトをさらに進化させるためにも重要になるのがAPSになっている。

現在は本人が承知すれば、オリンピック・パラリンピック実施競技を含む各中央競技団体がデータを閲覧でき、適性を見いだした有望者をマッチングできる機能が設けられている。

現在の利用団体はおよそ16。オリンピック競技は以下が利用団体に名を連ねる(2024年8月現在)

・日本山岳・スポーツクライミング協会

・全日本柔道連盟

・日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟

・全日本スキー連盟

・日本ローイング協会

・日本ウエイトリフティング協会

・日本フェンシング協会

・日本ハンドボール協会

・日本カーリング協会

・日本トライアスロン連合

・日本ラグビーフットボール協会

・日本ホッケー協会

・ワールドスケートジャパン

・日本ライフル射撃協会

・日本自転車競技連盟

・日本クリケット協会

日本自転車競技連盟が垣田に声をかけ、1期生となった17年当時は、選手からの応募制だった。現在はAPSを活用していれば照会がかかる可能性がある時代に移行し、制度の規模は大きくなっている。

「新体力テスト」の結果資料の一例

「新体力テスト」の結果資料の一例

全国同一条件で実施、汎用性高いテスト

そこで、専門家に詳細を聞いた。

山下修平さんは現在、JSCのハイパフォーマンススポーツセンターでAPS、J-STARプロジェクトの担当者を務めている。オリンピック・パラリンピックへ向けて日本代表選手を始めとするトップアスリートやジュニアの強化選手がトレーニングを行うだけでなく、スポーツ医・科学、情報などの研究や支援を行い、日本の国際競技力の向上を支える拠点だ。

まずは、APSができた訳から教えてもらった。

本文残り53% (1850文字/3469文字)

スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。