コロナ禍を経てインバウンド(訪日)客数が過去最多を記録する中、日本人が海外に出かける「アウトバウンド」は、円安も背景に、「コロナ前」の6~7割の水準にとどまっている。
日本航空(JAL)の鳥取三津子社長は2025年3月19日に開いた記者会見で、こういった状況について「あまり日本国としてよろしくない」と懸念を示した。収益面の影響はもちろん、国外で見聞したことを国内に還元する「好循環」が必要だ、という理由だ。インバウンド需要を背景に国際線はさらに成長を見込む一方で、国内線は頭打ちだ。大都市圏の空港から入国し、地方に出向くインバウンド客に利用してもらうことで、国内線も需要拡大を図りたい考えだ。
国際線は「機種を大型機・中型機である、エアバスA350とボーイング787に統一」
日本政府観光局(JNTO)のまとめによると、24年の訪日外客数は前年比47.1%増の3686万9900人で、過去最高だった19年の3188万2049人を約500万人上回り、年間過去最高を更新した。19年はコロナ禍に突入する直前の年だ。
こうした背景を念頭に、鳥取氏は
「24年度はインバウンド需要が過去最高を更新するなど、国際線を中心に、引き続き成長を続けている」
と説明。投入する飛行機についても、
「27年度より新たにエアバスA350-900を国際線に導入し、機材を増加させるとともに、今後、機種を大型機・中型機である、エアバスA350とボーイング787に統一していく」
として、大型化を進めていきたい考えだ。格安航空会社(LCC)と合わせた国際線の事業規模を、30年度には23年度比で1.5倍に拡大するとした。一方で、アウトバウンドは「いまだにコロナ禍前の6~7割にとどまっている」。この点への所感を問われた鳥取氏は、次のように話した。
「日本人が海外に出て行かないことについては、もちろん会社の収益の話もあるが、本当に個人的には、あまり日本国としてよろしくないと思っている。やはり海外に出て行って、いろいろなものを見聞きして戻ってきて、それをまた日本に還元して新しいものを作り出すとか、そういう好循環が絶対必要だと思っている」
単価が比較的高いビジネス客については
「緩やかだが少しずつ戻ってきているところなので、今後に期待したい」
と話した。