「長年の悲願であった特急列車の停車が実現します」。2024年12月26日。JR九州との共同記者会見で北九州市の武内和久市長が喜びを爆発させた。
市にとって長年の懸案である北九州空港への交通アクセス改善策として、2025年4月から最寄りの「朽網駅」に特急列車が停まることが決まったのだ。これにより市の西部エリア、さらには福岡方面からの利用者拡大に期待が膨らむ。

貨物専用機発着で新たな物流拠点へ
一方、「物流の2024年問題」と言われる深刻なトラックドライバー不足を機に、海上にあり24時間利用できる北九州空港が、物流大手の目に留まり新たな拠点として重要性を高めている。

宅配サービスの大手、ヤマトホールディングスが2024年4月に導入した「貨物専用機」が、北九州空港に就航した。鮮やかな黄色とクロネコマークが目を引く機体。

貨物を運ぶことに特化した機体は「フレーター」と呼ばれる国内初の専用便で、羽田や成田、新千歳といった国内の主要空港と並び、九州の拠点に選ばれたことを意味する。

なぜ、北九州空港だったのか?ヤマトホールディングスの下簗亮一さんは、「九州全体からモノを集めやすいことがメリット。西からでも南からでも東からでも非常にモノが集めやすい。更には山口や広島といった地域も含めて」と地理的優位性を挙げる。

加えて2027年に滑走路が3000メートルに延び、欧米に直接フライトできる大型貨物機が24時間発着可能となる。その点が航空物流の一大拠点として、北九州空港が選ばれた大きな要因だ

収穫翌日に到着「スピード輸送」
物流拠点としての新たな需要の掘り起こしに期待がかかるヤマトホールディングスの貨物専用機。その最大の強みは「スピード輸送」。一体、どのくらい速いのか?既にその速さを実感している生産者を訪ねた。

福岡・八女市のいちご農家。野田義和さんは、2代にわたり福岡のブランドイチゴ「博多あまおう」を生産している。

取材に訪れた2024年12月17日は、クリスマスケーキや贈答用として関東方面に出荷する博多あまおうの収穫に追われていた。「貨物専用機ができて新鮮なイチゴをよりはやく届けてもらえるので本当に嬉しい」と話す野田さん。
これまで出荷して東京など関東に届くのは2~3日かかっていたが、ヤマトの貨物専用機を使えば、日中にとれた生鮮品が、夜のうちに羽田や成田に到着し、翌日には、消費先に届く。「1日違うと味や食感がかなり変わってくる」と話す野田さんは、他を寄せ付けない貨物専用機のスピードを実感している。

この日、収穫された、あまおうは、JAのパッケージセンターへ運ばれ丁寧に袋詰めされた後、北九州空港に梱包された状態で持ち込まれる。

野田さんのあまおうは、その日の深夜1時40分発の便で羽田空港へと飛び立った。そして、あっという間に関東地方の店のショーケースにショートケーキとして並んでいたのだ。
「スピードという武器を生かして、北九州空港を九州の玄関口として九州などの地方活性化や新しい価値の想像に取り組んでいる」と話すヤマトの稲森浩司さん。「日本のみならず世界で貢献できる物流ノード(拠点)に育てていきたい」と強い期待を示した。

UPS国際宅配便も北九州空港利用
北九州空港を巡っては、2025年年明け早々、世界に向けた新サービスもスタートする。
アメリカの物流大手UPSとJR九州が、北九州空港発着の貨物便と鹿児島・博多間の九州新幹線を組み合わせた新たな国際宅配サービスを1月14日から始める。
当面は農産物などが想定されていて、海外向けの荷物を鹿児島中央駅に持ち込むと九州新幹線で博多駅にスピード輸送される。博多駅からは車で北九州空港に運び、夜8時過ぎに飛び立つUPSの貨物便に載せれば、最短で翌日にはアジアやアメリカに荷物が届く仕組みだ。

世界の国々に最速翌日のスピード配送!24時間空港の強みを活かし、北九州空港は2025年、航空貨物輸送の新たな拠点として更なる地位向上に期待が高まっている。
(テレビ西日本)