青森県の津軽海峡でマグロ漁船が転覆し、3億円超えの史上最高値の一番マグロを釣った漁師が行方不明になっている。
“マグロの町”青森・大間沖でマグロ漁船が転覆
現場では午後2時前、一度見失った漁船が再び見つかった。
ーー(記者)何が見つかりましたか?
大間漁協・小鷹勝敏組合長(青森・大間町、午後2時前):
船。

ーー(記者)人が乗っていましたか?
大間漁協・小鷹勝敏組合長(青森・大間町、午後2時前):
それはわからない。

「マグロの町」青森県の大間沖で起きた転覆事故。
天候が悪い中、仲間の船が消息を絶ったマグロ漁船を捜索していた。
19日夜8時ごろ、青森県の大間漁港から、「所属するマグロ漁船が入港予定時刻になっても帰ってきていない」と通報があった。
消息を絶ったのは、マグロ漁船「第28光明丸」。

捜索したところ、津軽海峡の沖合で転覆した漁船と船員の須藤愛教(よしのり)さん(55)を発見したが、須藤さんはまもなく死亡が確認された。
今も船長の藤枝亮一さん(70)が行方不明となっている。
“大間の最強漁師”が行方不明に
藤枝さんは、“大間の最強漁師”として知られていた。
その名が全国にとどろいたのは、5年前(2019年)の年明けのこと。

豊洲市場の移転後初めて行われた初競りの主役となったのは、ひときわ大きな278kgの生マグロ。
金額はどんどん競り上がり、響くどよめきの声。

落札価格は、3億3360万円。
“一番マグロ”の史上最高値となった。
この3億超えの“一番マグロ”を釣り上げたのが藤枝さんだった。
初競り直後、大間町の自宅を訪ねると…。
当時初競りに出荷するのは初めて。
初挑戦で最高値を更新した心境を聞いた。
藤枝亮一さん(当時64):
一瞬自分の耳を疑って、あと「1桁違うんじゃないか」って聞き直して。そんな感じです。
仲買人の仕事を辞め、漁師の世界に入った藤枝さんは、マグロの一本釣りにこだわり自己流で腕を磨いてきたという。
藤枝亮一さん(当時64):
今まで私も19年も漁師やってるけど、この一本釣りで、この築地で高値取るのはあまり聞いたことないし。
2017年に亡くなった俳優の松方弘樹さんとマグロ釣りをするなど親交もあった。
藤枝さんと旧知の仲のマグロ漁師は…
“最強マグロ漁師”の船がなぜ転覆したのか。

「イット!」が話を聞いたのは、過去7回一番マグロを釣り上げた経験がある竹内正弘さん。
藤枝さんとは旧知の仲だったという。
大間町のマグロ漁師・竹内正弘さん:
(藤枝さんの姿を)最後に見たのは、(19日の)朝の9時30分くらいかな。(事故を知って)本当にびっくりしましたよ。まさかまさかと思うね。
藤枝さんの遭難が判明する半日前、互いに漁を終え沖合であいさつをして別れたという。
大間町のマグロ漁師・竹内正弘さん:
(マグロ釣りの)現場では、藤枝さんも俺のすぐそば、2kmくらい離れたところにいて、帰りに「パパ先に帰ってるぞ」って手を挙げてきたんですよ。俺は途中で先に帰って来たしね。
気になったのは、漁港へ帰る道中の波が高かったことだった。

大間町のマグロ漁師・竹内正弘さん:
(原因として考えられるのは)海の波でしょうね。事故のあった場所は潮が高くて、「三角波」が立つ場所なんですよ。
「三角波」が原因か…
この「三角波」とは、潮の流れと風向きが逆方向のときに波がぶつかり、大波となる現象。

水難学会・斎藤秀俊理事:
海面が急に「ドーン」と盛り上がって、横から見ると三角形みたいな形の波に見える。大きいものになると、それこそ船を転覆させるぐらいの大きさ。高さが時には10メートル近くまで上がるような。

大間町のマグロ漁師・竹内正弘さん:
正月前、マグロに脂がのって値段も安定してくるから、やっぱり夏よりこの時期、海は荒れてもね、やっぱり頑張るわけですよ。
捜索は夜を徹して行われたが、天候が悪化し一時中断。
視界不良により藤枝さんの漁船を一度見失ったが、午後2時前に再び発見された。

大間漁協・小鷹勝敏組合長:
生きていたらいいけど、仏だけでもね。
20日の捜索はつい先ほど終了、21日朝から再開される予定。
(「イット!」12月20日放送より)