【プレミアム報道】親中共メディア「ニューヨーク・タイムズ」、神韻芸術団への誹謗中傷を画策か

2024/03/26
更新: 2024/03/26

ニューヨーク・タイムズが約半年前から神韻芸術団を攻撃する記事を準備していることが、エポックタイムズの取材でわかった。

当該記事はまだ発表されていない。しかし、エポックタイムズが入手した情報によると、発表予定の記事は、中国共産党による神韻芸術団への国境を越えた弾圧政策を後押しする可能性がある。

米ニューヨークを拠点とする神韻芸術団は、中国の伝統文化の復興を使命とし、「共産主義以前の中国」を表現する中国古典舞踊と音楽の芸術団だ。そのため、約20年にわたって中国共産党の「悩みの種」であり続けた。

神韻芸術団は世界各国で巡回公演を行なっており、毎年の観客数は100万人を超える。中国共産党は神韻芸術団の公演を妨害するため、劇場に圧力をかけて公演を中止させたり、中国国内にいるアーティストの家族を迫害したり、米国の法制度を利用して目的を達成しようと、あの手この手を使ってきた。

米連邦捜査局(FBI)は昨年5月、中国共産党の代理人を務めていた男ら2人を逮捕した。男らは神韻の非営利団体資格を剥奪しようと画策し、国税庁職員を装ったFBI捜査官に数万ドルの賄賂を渡し、口利きを依頼していた。

米司法省によると、男らは神韻のトレーニング施設と学校を標的とする環境訴訟を提起することで、神韻の成長を「妨害」しようとしていた。

しかし、神韻に対する次の攻撃は、米国の最大手新聞「ニューヨーク・タイムズ」が担い手のようだ。

エポックタイムズが入手した情報は、ニューヨーク・タイムズの記者マイケル・ロスフェルド氏とニコル・ホン氏が長い時間をかけて、不満を抱いて神韻芸術団を去った元団員を探していることを示唆するものだ。なお、ニコル・ホン氏は同紙の中国部門で半年間の勤務を経てから、神韻関連の報道を担当するようになった。

神韻アーティストの多くは法輪功学習者だ。法輪功は座禅などを行う中国の伝統的な精神修養法だが、中国国内の法輪功学習者は中国共産党による残酷な迫害を受けている。神韻公演では迫害を描いた演目もあるため、神韻は中国共産党とその代理人の主要な標的となっている。

神韻の副総裁である陳纓(チェン・イン)氏は、エポックタイムズに次のように語った。

「その記者らは、神韻のことを悪く言う可能性のあるごく一部の人々だけを取材対象にしている。彼らは、神韻でのキャリアを肯定的に捉え大きなやりがいを感じている圧倒的多数のアーティストたちの存在を無視しているようだ」

神韻芸術団の2009年プログラム「袖の舞」(神韻芸術団)

「通常、神韻で働いたり、法輪功を修煉している人は、中国本土に戻ると重大な危険にさらされる。しかし、彼ら(訳注:インタビュー対象者)は自由に中国へ渡航することができている。取材対象となった者の中には、神韻での経験に非常に満足していたが、今では一転してニューヨーク・タイムズに対して正反対のことを言っている人がいることを示す通信記録も残っている」

「これらのことからわかるように、ニューヨーク・タイムズは元から私たちを攻撃しようとしていた。そして、非常に問題のあるインタビューを用いてストーリーを作り上げようとしている」

誹謗中傷

中国共産党の内部文書によると、同党はニューヨーク州北部にある神韻キャンパス(ドラゴン・スプリングス)を、法輪功学習者による迫害反対活動の「本部」と見なしている。

エポックタイムズが入手した中国共産党の指令文書には「海外の法輪功本部と拠点を組織的、戦略的に攻撃せよ」と記載されている。

法輪功を標的とする、国境を越えた弾圧について記した別の文書では、特定の業界・業種を「取り込む」よう指示していた。

「米国や西洋諸国で大きな影響力を持つ専門家や学者、ジャーナリストなどの『親中派』を動員し、我々のために発言させ、我々に有利な報道をより多くの外国メディアに掲載させるよう努力せよ」

米国の非営利団体「法輪大法情報センター(FDIC)」の副主任ラリー・リュウさんはエポックタイムズの取材に対し、「ニューヨーク・タイムズは今、まさにそれを行っているようだ」と指摘。「彼らが発表する記事は中国共産党の夢を実現するものだ」と述べた。

ニューヨーク・タイムズは2018年11月25日付の紙面で「中国規則」というコーナーを設けた。このコーナーでは、中国共産党を熱く報じると同時に、米国を批判した (Samira Bouaou/The Epoch Times)

前出のニューヨーク・タイムズ記者ニコル・ホン氏が昨年、同紙の中国部門(ソウル駐在)での勤務を終えてニューヨークに戻るやいなや、一部の神韻の元アーティストたちはホン氏とロスフェルド氏からの電子メールを受け取るようになった。リュウさんによると、メールの質問は時に恐ろしいほど具体的だったため、メールを受け取ったアーティストたちは、記者らは神韻に対して攻撃材料となりうる情報を欲しがっていたという印象を受けたという。

ある元アーティストは、膝の怪我という具体的な出来事についてのみ質問された。

リュウ氏は、ニューヨーク・タイムズの記者らは、アーティストが十分な医療を受けられていないというストーリーを作り出そうとしているのではないかと推測する。この言いがかりこそ、中国共産党が法輪功を誹謗中傷する作戦における重要なナラティブだ。

エポックタイムズは、数十人の神韻アーティストとその家族、そして神韻と提携している2つの学校の生徒と教師に話を聞いた。彼らは、神韻の要求は確かに厳しいが、健全な文化と協力的なコミュニティがあると語った。医療や治療が不足しているという指摘についても、「まったくあり得ない」との回答が返ってきた。

息子と娘が神韻に出演しているケイ・ルバチェック(Kay Rubacek)氏は「公演を見る人、神韻を見る人は皆、ダンサーたちが神韻を愛していることがわかる。彼らは自分たちの仕事を本当に愛しているのだから」と強調した。

ルバチェック氏の子供たちはそれぞれ13歳と14歳の時に、私立芸術学校である飛天芸術学院に通い始めた。入学して間もなく、息子がダンスの練習中につま先をぶつけ骨折した。舞踊の教師からは、骨折が完治するまでは練習に参加できないとの指導を受けた。

ルバチェック氏によると、息子は治療を受ける間、つま先に負担のかからないストレッチ運動に励んだ。その結果、今では芸術団の中で最も柔軟性に優れたアーティストになっている。

「彼らの前向きな姿勢や困難に立ち向かう姿は本当に目を見張るものだ。私もそのようになりたいとさえ思った」とルバチェック氏は述べた。

しかし、ニューヨーク・タイムズが自分の子供たちを忌まわしい団体の一員であるかのように中傷しようとしていることを知ったルバチェック氏は、やるせない気持ちから肩を落とした。

米ニューヨーク州オレンジ郡にある施設で、中国古典舞踊のリハーサルをする神韻のアーティストたち (神韻芸術団)

迫る危険

「ニューヨーク・タイムズは虚偽のナラティブを追い求めているようだ。私たちは現実的な危険になりかねないこの出来事を緊張感をもって注視している」とドラゴンスプリングスの副総裁ジョージ・シュー(George Xu)氏は述べた。

シュー氏によると、地元警察と連邦当局は数か月前、脅威となりうる中国人の男に対処した。中国人の男は「決死隊」の一員になりたいとのメッセージをSNS(ソーシャルメディア)に投稿し、さらにAR-15アサルトライフルのマガジン(弾倉)に弾薬を装填する動画も投稿した。

シュー氏は、その男は「同じような虚偽のナラティブを拡散しており、ニューヨーク・タイムズが取材していた人物と話をしていた」と指摘した。

「一時期、その男は私たちのキャンパス周辺をうろついていた。州警察が校門を警備し、私たちはみな不審な動きに警戒していた。大きな脅威だった」

エポックタイムズが入手した9月付けのFBI情報誌には、中国人の男は「神韻キャンパスにとって脅威となって」おり、付近で出没し「武器を携帯している可能性があるため危険である」と記されている。

さらに、警察が男に対し家宅捜索を行なったところ、AR-15アサルトライフルに拳銃、600発以上の弾薬、そして14本のマガジンが発見され、そのうちのおよそ半数には弾薬が装填されていた。さらに、男の居住する州では、マガジンに装填できる弾薬は10発までとされていたが、男は法律に違反して10発以上装填できるマガジンを所持していた。

頂点を目指して

神韻芸術団は中国古典舞踊と音楽を披露する世界最高峰の芸術団だ。2007年の創設時には芸術団は1つだけだったが、現在では同じ規模の芸術団を8つ擁するまで発展し、それぞれが専属の交響楽団を率いて毎年世界巡回公演を行っている。エポックタイムズは、神韻のメディアスポンサーを長年務めている。

ほかのトップレベルの芸術団と同様、中国古典舞踊にも膨大な訓練と努力が必要だ。

「高いレベルの芸術家になるには根気と粘り強さが必要で、多くの時間を費やし、エネルギーを使わなければならない」。神韻芸術団の元アーティストのアリソン・チェン(Alison Chen)氏は、取材でこう語った。同氏は2015年に神韻芸術団を引退したのち、飛天大学舞踊科の教師となり、現在は同大学の共同主任を務めている。飛天大学は神韻芸術団に多くの卒業生を送り込む名門校だ。

2023年9月19日、神韻芸術団の元ダンサーアリソン・チェン氏 (Samira Bouaou/The Epoch Times)

神韻が創設されて間もない2007年にトレーニングを始めたとき、チェン氏はまだ10代だった。彼女の才能とダンスの経験のおかげで、入学後程なくしてインターン生として巡回公演に参加することができた。

事業の発展に伴い、神韻も年々レベルを引き上げてきた。飛天大学の学生たちは、今でも授業の一環として巡回公演のオーディションを受けることができるが、選抜されるためには舞踊の技能が並外れて優秀でなければならない、とチェン氏は言う。

2008年に神韻に入団するまではプロのバレエダンサーだったジミー・チャ氏は、バレエに比べ、中国古典舞踊のトレーニングは人体の自然な動きに基づいているため、過度な負荷がかかることは少ないと語る。

バレエダンサーは平均して30代で引退するが、慢性的な痛みやその他の不調を抱えることが多い。このテーマに関する2015年の研究調査によると、平均して、若いアマチュアダンサーは1千時間踊るごとに1回、熟練したプロダンサーは1.2回の怪我に見舞われている。

この試算によれば、神韻のような規模のプロの芸樹団では、理論上、毎年数百件の怪我が発生していることになる。

エポックタイムズが取材した神韻のアーティストや教師たちは、そのような統計データを持ち合わせていなかったが、神韻ではケガの発生率は通常より低いと述べた。

2021年10月24日、アイオワ州のパラマウント・シアターでの喝采を浴びる神韻芸術団 (Hu Chen/The Epoch Times)
 

チャ氏は負傷率の低さについて、厳しいトレーニング基準と正しいテクニックを重視していることを挙げた。舞踊の動きそのものよりも、アーティストの間違ったテクニックにより、身体が長時間にわたって過度な負担を受けることがケガにつながることが多いと指摘した。

「全員が常に最高のコンディションを保ち、技術を注意深く観察することで、多くの問題を避けることができる」とチャ氏は言う。

すでに40代になったチャ氏は、舞踊で怪我をした経験がある。2020年、膝の靭帯が断裂し、舞踊のキャリアが断たれようとしていたが、韓国で世界トップレベルの外科医の診療を受け、リハビリに励んだことで、現在は舞台に復帰している。

2023年12月4日、米ニューヨーク州ミドルタウンにある飛天大学のスタジオで練習するジミー・チャ氏 (Samira Bouaou/The Epoch Times)

チャ氏はまた、身体的な問題で舞踊を続けられなくなった場合、神韻はしばしばプロダクションなど他の役割で芸術団に残るチャンスを与えると語った。

しかし、ほとんどの場合、神韻からの引退を選ぶ人は肉体的な厳しさではなく、心理的・精神的な挑戦が原因だ。

一般的に、最高峰の舞台芸術の世界では、エゴのぶつかり合いやセンター争いなど、熾烈な争いが繰り広げられる。しかし、神韻はまったく異なる環境だと経験者たちは口を揃える。

中国の伝統文化を表現するため、アーティストたちは伝統的な価値観や道徳を学び、自ら実践する必要がある。最も重要なのは、エゴを捨て去ることだとアーティストたちは言う。

上下関係が厳しい韓国社会で生まれ育ったチャ氏は、自分より年下のアーティストや先生からのアドバイスを受け入れることについて、当初、抵抗感があったと語った。

前出のチェン氏も「先生たちは私たちに、『あなたがどれだけ学んだとしても、どれだけ知っていると思い込んでいても、ときにはゼロから始めなければならない』 と諭してくれた」と述べた。

舞踊に対して謙虚な態度を取ることは、そのような過程だったと彼女は言う。

チェン氏は中国古典舞踊のコンクールでジュニア部門の金賞を獲得した後、自尊心が膨らんだ経験を振り返った。

「有名になるためのきっかけだと思っていた」とチェン氏は語った。

チェン氏にとって、それはキャリアを築くための重要な瞬間であり、心が試された瞬間でもあった。

「もし誰も、このことを健全な方法で考えるよう導いてくれなかったら、私はまだそれにしがみついていたのかもしれません」

先生やクラスメートのポジティブな影響のおかげで、チェン氏は問題を認識することができたという。

「『学問の道に終わりなし』という中国のことわざがある。傲慢であればあるほど、成長できないのだ。自分がどんなに偉いと思っていても、新しいことを教えてくれる人は必ずいる」

しかし、それが分かっていても、実践に移すことは簡単ではない。

翌年、コンクールで2位になったとき、チェン氏は心が動揺しているのに気づいた。

「いくら否定しようとも、私は多かれ少なかれ、順位を気にしていた」

状況は悪化の一途を辿った。いつもの「楽天的」な彼女とは違って、チェン氏はステージ上で自意識過剰になり、緊張するようになった。

「人前でどう見えるかを気にすればするほど、踊るときにストレスを感じるようになり、それがステージ上でのパフォーマンスの質に影響することもあった」

2023年9月19日、米ニューヨーク州ミドルタウンにある飛天大学キャンパスのスタジオで生徒に教えるアリソン・チェン氏  (Samira Bouaou/The Epoch Times)

そして、彼女は岐路に立たされた。虚栄心を捨て去るか、それとも恨みや妬み、指弾の道を歩むのか。自省を重ねた結果、彼女は前者を選んだ。

「前進し続ける前に、まずは一歩引き下がって、自分自身の心を見つめ直さなければならないと気づいた」

彼女は自身の選択に深い解放感を覚えたという。

「このことを通して、私は感謝することについて深く学ぶことができた」

しかし、誰もがこうした厳しい環境の中で心技体を練磨し、包容力を身につけられるとは限らない。

アーティストたちによれば、過去には何度か不愉快な別れもあった。企業の規則に違反したケースや、要求されているレベルを達成できなかったケース、特別な評価や待遇を求めたケースなどがあったという。

「残念なことに、ニューヨーク・タイムズがターゲットにしているのは、まさにこうして離れて行った人たちなのだ」と陳纓氏は述べた。

不審な動き

ニューヨーク・タイムズのロスフェルド記者とホン記者がアレックス・シラ氏と連絡を取り合っているのを知ったとき、前出のラリー・リュウさんは驚きを隠せなかった。アレックス・シラ氏は長年中国とビジネス上の利害関係を持つ人物で、神韻キャンパスに対する反対運動を行なっている。

シラ氏とその仲間であるウッダード氏は、ニューヨーク州オレンジ郡にある神韻キャンパスを監視し、根拠のない環境訴訟を通じてその発展を妨げ、キャンパスに対するネガティブな報道を行うようメディアを唆してきた。

神韻側によると、シラ氏は過去2回に渡って訴訟を提起したが、いずれも訴えが却下された。にも関わらず、シラ氏は再び根拠のない訴訟を提起しているという。

2023年4月26日、米ニューヨーク州ユグノットのディアパーク・シニアセンターで開かれたニューセンチュリーの開発計画に関する公聴会で発言するアレックス・シラ氏  (Samira Bouaou/The Epoch Times)
2023年4月26日、地元活動家のグレース・ウッダード氏 (Samira Bouaou/The Epoch Times)

昨年5月には、米国税庁職員に賄賂(わいろ)を渡し中国共産党の法輪功弾圧に加担させようとした疑いで、米連邦捜査局が中国人の男ら2人を逮捕、起訴した。

起訴状によると、被告人ジョン・チェン(70)とリン・フェン(43)は、法輪功学習者の運営する非営利団体の免税特権を奪うため、国税庁に偽りの告発を申し立てた。さらに、国税庁職員を装ったFBIの潜入捜査官に数万ドルの賄賂を渡し、口利きを依頼していた。

開示された法廷文書からは、被告人ジョン・チェンとリン・フェンは国税庁への虚偽の告発を行う前は、シラ氏と同じような活動に従事していたことがわかる。

検察が提出した法廷文書によると、リン被告はFBIの尋問に対し、「ニューヨーク州オレンジ郡の法輪功学習者を監視し、同地域の法輪功コミュニティの成長を阻害することを意図した環境訴訟の根拠となる情報を収集するため、チェン被告とともにニューヨークへ渡った」という事実を認めている。

2016年10月、カリフォルニア州で開催された親中イベントに出席したジョン・チェン氏 (Liu Fei/The Epoch Times)

起訴状によると、チェン被告の指示役は、中国の天津から指令を出していた。天津市には、1999年に中国共産党が法輪功撲滅のために設立した専門機関「610弁公室」の基地が設けられている。さらに、チェン被告が米国で反体制派の中国人を攻撃することで、中国共産党内での地位を高め、中国共産党のトップである習近平と3回面会したことも明らかになった。

チェン被告はFBIの潜入捜査官との会話の中で、たびたび法輪功を「打倒」するという中国共産党の目標に言及していた。チェン被告はまた、「私たちは二、三十年前からこの闘争を続けてきた。当時の同志たちとは今でも仲間だ」と語った。

被告らがオレンジ郡の米国内国歳入庁事務所の職員(FBI潜入捜査官)に対して贈賄を行なっていたことなどから、彼らの標的は神韻であることに疑いの余地はない、とリュウ氏は指摘した。

2024年2月15日、ワシントンD.C.のFBI本部前を歩くFBI捜査官  (Madalina Vasiliu/The Epoch Times)

シラ氏は中国・天津市と深い関係がある。エポックタイムズの調査によると、同氏は長年中国北部の大都市である天津市に居住し、唯一の収入源として考えらえるのは、米国に移住して神韻キャンパスに対する反対運動を開始した直後の2019年に、中国人の妻と天津で設立したコンサルティング会社のようだ。エポックタイムズはこれまで複数回シラ氏にコメントを求めたが、いずれも返答が得られなかった。

チェン被告も天津市に会社を所有しており、潜入捜査官に対し「中国で持っているリソースは米国のリソースを遥かに上回る」と語っていたことが、法廷文書で明らかになっている。

チェン被告とリン被告は現在、無登録の外国代理人行為、贈収賄、マネーロンダリングをはじめとする複数の罪に問われている。

中共路線に追随するニューヨーク・タイムズ

2001年、ニューヨーク・タイムズ発行人(当時)のアーサー・サルツバーガー・ジュニア氏は同紙のライターと編集者からなる訪問団を率いて北京に赴き、中国国内における同紙ウェブサイトのブロックを解除するよう中国共産党と交渉した。ニューヨーク・タイムズが中国共産党トップ(当時)だった江沢民への「ごますり」記事を掲載した数日後、ウェブサイトのブロックは解除された。

1999年、他の中国共産党高官の反対を押し切り、法輪功「撲滅」キャンペーンを開始した張本人こそ、江沢民だったのだ。

迫害がエスカレートする中、ワシントン・ポストとウォール・ストリート・ジャーナルは、政権の残虐行為を厳しく批判し、法輪功学習者を悪者扱いする中国共産党のプロパガンダを暴いた。

2002年2月14日、中国北京の天安門広場で法輪功学習者を逮捕する警察官 (Photo by FREDERIC BROWN/AFP via Getty Images)

しかし、ニューヨーク・タイムズは正反対の態度をとり、中国共産党のプロパガンダに多くの紙面を割いた。

それだけではなく、法輪功学習者を洗脳し信仰を放棄するよう強制する中国共産党の行為は、「法輪功学習者にとって有益である」という中国共産党のプロパガンダを拡散した。

また、不当に拘束された法輪功学習者が「再教育センターは自宅より快適だ」「センターの警察はとても礼儀正しく親切だ」などと発言したとする虚偽の報道を行なった。

法輪大法情報センターの報告書によると、同センターが過去25年間のニューヨーク・タイムズの報道を解析したところ、法輪功に関する報道のおよそ3分の2には様々な虚偽や誤った表現が含まれていた。そのようなナラティブはほとんど中国共産党のプロパガンダに由来するものだった。

ニューヨーク・タイムズは数十本の記事の中で、法輪功に「カルト」や「セクト」、「邪教」などとレッテルを貼った。

誹謗中傷の中には、中国共産党が押し付けたレッテルもあるが、一部はニューヨーク・タイムズの独自見解によるものだ。

いっぽう、中国の宗教を研究する学者や人権研究家、さらには法輪功を理解しようと努めたジャーナリストたちは、そのようなレッテルは不当だと結論付けている。

2000年にウォール・ストリート・ジャーナルで法輪功に関する画期的な連続報道を執筆したイアン・ジョンソン(Ian Johnson)氏は、法輪功は「カルトに関する一般的な定義の多くに当てはまらない」と指摘した。

「法輪功学習者は、外部の人と結婚し、外部の友人を持ち、普通の仕事をし、社会から隔離された生活をしておらず、世界の終末が迫っているとは信じていない。組織に多額の寄付もしていない。最も重要なことは、自殺も身体的な暴力も許されていないということだ」

ジョンソン氏は「(法輪功は)政治に関わることなく、心を修める修煉法であり、精神的に自らを浄化し、健康を改善することを目的としている」と指摘した。

ニューヨーク・タイムズが、法輪功の「真・善・忍」の理念についての最も基本的な説明を行なったのは、ほんの一握りの記事だけだった。

法輪大法情報センターによると、法輪功に対する残虐行為の証拠が増えても、同紙はそれを無視し続けたと言う。

2016年、ニューヨーク・タイムズの記者ディディ・カーステン・タトロウ(Didi Kirsten Tatlow)氏は、複数の中国人移植医を取材し、良心の囚人が中国で臓器供給源として利用されていることを示唆する会話を耳にした。頃合いを同じくして、一部の人権派弁護士や研究者たちは、中国共産党が移植産業を推進させるために良心の囚人を殺害しており、その主な犠牲者が法輪功学習者であることを示す証拠を集めていた。

しかし、タトロウ氏が調査を進めようとしたところ、編集者に妨害されたという。

「当時、私の雇用主だったニューヨーク・タイムズは、私がこのような(臓器移植の濫用に関する)報道を追いかけていることを快く思っていなかった。当初は私の努力を容認していたが、最終的には続けることができなくなってしまった」と、タトロウ氏は2019年に英国で開かれた独立法廷「中国民衆法廷」で証言した。

ジャーナリスト、研究者、医師、中国の元拘禁者を含む50人以上の証言を聴取した後、中国民衆法廷は2019年6月、「中国では長年にわたり移植手術を目的とした強制的な臓器摘出が相当な規模で行われており、法輪功学習者が主要な供給源となっている」と結論づけた。

中国民衆法廷の最終裁定は各メディアに取り上げられ、ガーディアン、ロイター、スカイ・ニュース、ニューヨーク・ポストなど数十紙が報道した。

しかし、ニューヨーク・タイムズは「沈黙を保っていた」と法輪大法情報センターは指摘した。それどころか、近年、ニューヨーク・タイムズは法輪功について報道する際、「公然と敵対的」になってきているという。

2020年、ニューヨーク・タイムズ紙は当時の反人種主義の風潮に乗じて、法輪功は異人種間の結婚を禁じているとの主張を掲載した。これは明らかな誤りであり、法輪功学習者のなかには異人種間で結婚している夫婦は珍しくない。

ニューヨーク・タイムズはまた、法輪功は「秘密主義」で「過激」で「危険」な存在であるとする記事を、立証責任を果たすことなく掲載した。

いっぽう、迫害の残酷さは故意に薄められ、人権弾圧の実態を広める法輪功の取り組みは「PRキャンペーン」とみなされた。

プロパガンダの歴史

ニューヨーク・タイムズには、共産主義者のプロパガンダを拡散してきた過去がある。

1930年代、ソビエト・ロシアに駐在していたスター記者のウォルター・デュランティ(Walter Duranty)は、ソ連が引き起こしたウクライナの大飢饉を隠蔽し、ピューリッツァー賞を受賞した。

1925年頃、ソ連共産党機関紙プラウダを読むニューヨーク・タイムズのモスクワ特派員ウォルター・デュランティ記者(1884-1957)(James Abbe/Hulton Archive/Getty Images)

いっぽう、ソ連専門家レナード・レシュク(Leonard Leshuk)著の『(仮邦訳)ソビエト政権に対する米情報機関の見解、1921年から1946まで(原題:US Intelligence Perceptions of Soviet Power, 1921–1946)』によれば、デュランティは私的な会話の中で、ウクライナの大飢饉について知っていたと断言している。

さらに、デュランティはベルリンの米国務省職員に対し、「『ニューヨーク・タイムズとソ連当局との合意により』、彼の速報通信は常にソ連政権の公式見解を反映したものであり、彼自身の見解を反映したものではない」と語った、とレシュク氏は書いている。

数十年後、ニューヨーク・タイムズはピューリッツァー賞を返還させるべきかどうかを判断するためにコンサルタントを雇った。コンサルタントは返還させるべきだと結論づけたが、同紙はそれを拒否した。

アシュリー・リンズバーグ(Ashley Rindsberg)著の『(仮邦訳)灰色レディーのウィンク(原題:The Gray Lady Winked)』によれば、デュランティ騒動は決して単独の事件ではない。

リンズバーグ氏は、「ニューヨーク・タイムズはソ連成立初期の危機的な時期に、あからさまな親共産主義的プロパガンダを報道した過去があり、そのような論調はソ連時代も続いていた」と記している。

「ニューヨーク・タイムズは、共産党の代理人やソ連にシンパシーを持つ者によって書かれた報道や分析記事を定期的に掲載していた。ニューヨーク・タイムズの上層部は、親ソ連報道が不正確であったり、誤解を招きかねないものであると認識していたとしても、何ら具体的な対処をすることはなかった」

毛沢東の独裁政治によって、中国では推定8000万人の死者が出た。しかし、ニューヨーク・タイムズ紙はかつて毛沢東を「民主的な農地改革者」として称賛した。

デイヴィッド・ロックフェラー(David Rockefeller)は1973年、ニューヨーク・タイムズへの寄稿の中で「毛沢東主席の指導の下で行われた中国の社会実験は、人類史上最も重要で成功した実験の一つである」と書いた。

1998年8月23日、ドミニカ共和国のバニで群衆を前に演説するキューバの独裁者フィデル・カストロ氏 (Roberto Schmidt/AFP via Getty Images)

共産主義独裁者フィデル・カストロがキューバで権力を掌握しつつあったとき、ニューヨーク・タイムズはカストロ氏に「民主的」というレッテルを貼り、そのイメージアップに貢献した。同紙の発行人は当時、カストロと面会さえしている。カストロが1995年に米国を訪問し、ニューヨーク・タイムズの本部を訪れた際には、同紙は好意的な報道を行なった。2000年の訪米も同様の「好待遇」だった。

ニューヨーク・タイムズの元編集者であるトム・カンツ(Tom Kuntz)氏は、カストロが同紙本部で熱烈な歓迎を受け、職員が大群を成して追随する様子を見て「マイケル・ジャクソンかエルビスがビルに入ってきたようだった」とエポックタイムズ紙に語った。

中国共産党の協力者

ニューヨーク・タイムズの前発行人であるサルツバーガー氏が同紙をグローバル展開することを決定して以来、同紙は北京と上海の支局を維持し、中国でのプレゼンスを最優先事項としてきた。しかし、これには交換条件が付いてきた。

「もしグローバルな新聞になりたいのであれば、中国(共産党)を喜ばせつつ、ビジネスを続けなければならない」とカンツ氏は言う。「多くの企業は常に緊張した環境に置かれているが、中国市場へのアクセスを維持しようと努めてきた」

2012年、同紙は温家宝首相(当時)の一族の資産状況に関する暴露記事を掲載した。これに対し、中国共産党はわずか数か月前に開設されたばかりの中国語版も含む、ニューヨーク・タイムズのニュースサイトへのアクセスをブロックした。

これを受けて、サルツバーガー氏を含む同紙幹部は、ブロックを解除するよう中国共産党を説得したという。

ニューヨーク・タイムズのアプリを見ている人 (Fred Dufour/AFP via Getty Images、Peter Parks/AFP via Getty Images)

中国語版ウェブサイトの立ち上げの陣頭指揮を執ったクレイグ・スミス(Craig Smith)氏は次のように書いている。

「私たちはブロックを解除すべく、1年間にわたるロビー活動に乗り出した。国務院新聞弁公室や外交部の官僚に何度も会いに行った。新華社通信のトップ(閣僚級)や人民日報のトップ(同じく閣僚級)と協力したほか、中央宣伝部と家族ぐるみの付き合いがあるルパート・マードックの元政府広報部長とも話した。習近平の取り巻きに影響力があると主張する一連の仲介者と裏ルートでの交渉も試みた。そして、江沢民と会ったときのような成功を収めたかった」

当時のエグゼクティブ・エディター、ジル・アブラムソン(Jill Abramson)氏は後に自著の中で、サルツバーガー氏が彼女に知らせることなく中国共産党と折衝していたことに苦言を呈した。

「中国大使館の意見を取り入れながら、『ニューヨーク・タイムズ』から中国(共産党)当局宛に、私たちが最初に書いた記事について謝罪する書簡を起草していた」とアブラムソン氏。「その草稿は不愉快なもので、私たちはその記事が引き起こした『認識』について謝罪すると書かれていた。それを読んで血圧が上がった」。

サルツバーガー氏に問いただしたところ、彼は「私は何も悪いことをしていない」と繰り返し述べ、書簡を書き直すことに同意したという。

しかし、書簡の最終稿にも「謝罪」の文字が残っていたため、「不愉快」だったとアブラムソン氏は振り返る。

2012年以降、ニューヨーク・タイムズは「中国本土市場への浸透」にこだわり、印刷物、ニュースレター、ライフスタイル・サイトなど、新たな取り組みを開始した。

2019年までには、同紙の中国支社は中国語を母国語とする記者や特派員などを数十人規模で雇用するまでに至った。中国は同紙の海外での最大規模の拠点となった。

そして、新型コロナウイルスがやってきた。

2022年11月27日、中国上海でゼロコロナ政策に抗議したことで逮捕される男 (Photo by HECTOR RETAMAL/AFP via Getty Images)

2020年2月、ウォール・ストリート・ジャーナルはウォルター・ラッセル・ミード(Walter Russell Mead)氏のコラム「【オピニオン】中国は『アジアの病人』(原題:China Is the Real Sick Man of Asia)」を掲載した。新型コロナウイルスの流行への対応を誤ったとして中国当局を非難し、中国共産党の権力と安定性に疑問を投げかけた。

これに対して、中国共産党は「人種差別的」だと抗議し、対抗措置として同紙の中国特派員3人を国外追放した。

同日、トランプ政権は中国国営メディア5社を外交使節団に指定した。翌月には、中国国営メディアに対し、米国に駐在する中国人スタッフを削減するよう命じ、事実上60人の関係者を追放した。

3月17日、中国共産党はウォール・ストリート・ジャーナルやワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズの特派員のほとんどを追放することを決定し、荷造りに10日間の猶予を与えることで対抗した。

翌日、ニューヨーク・タイムズの広告部門のメールボックスに衝撃的なリクエストが届いた。フロリダの不動産開発業者ブレット・キングストン(Brett Kingstone)氏が、中国(共産党)にパンデミックの責任を問う全面広告を掲載したいと申し出たのだ。

新聞広告は2020年3月22日に掲載される予定だった。広告の掲載は承認され、広告費も支払われ、印刷されていたが、夜中に突然広告の掲載が取りやめになり、ほとんどの新聞で当該広告の掲載が不可能になった。

ニューヨーク・タイムズの広報担当ダニエル・ローデス・ハ(Danielle Rhoades Ha)氏はエポックタイムズの取材に対し、「この広告は私たちの基準を満たしていないため、ニューヨーク・タイムズに掲載されるべきではなかった」「ニューヨーク・タイムズのスタッフから社内で指摘を受け、削除された」と取り下げた理由について電子メールで述べた。

広告掲載に関して中国共産党から何らかの圧力があったかどうかという質問に対しては明言を避けた。しかし、ニューヨーク・タイムズは中国共産党によってコントロールされている企業から定期的にプロパガンダ広告の配信を受けていることは紛れもない事実である。

キングストン氏によると、中国共産党の幹部がニューヨーク・タイムズの上層部に電話をかけ、問題となっている広告を取り下げるよう要求したという。エポックタイムズは、その電話があったことを独自に確認することはできていない。いっぽう、同紙の広報担当者は、そのような電話があったことについて、肯定も否定もしなかった。

2011年4月21日、ニューヨーク・タイムズ本社ビル  (Photo by Ramin Talaie/Getty Images)

元FBIエージェントで、スパイ工作に詳しいパット・ラフリン(Pat Laflin)氏は、中国共産党が同紙に圧力をかけなかったということは「ありえない」と指摘した。

「彼らがなにを話したのか、どのような機微な内容だったのかについては知る由もない。でも電話があったのかと聞かれたら、『あった』と私は言う」

キングストン氏の広告が取り下げとなった翌日、すなわち2020年3月23日、『ウォールストリート・ジャーナル』、『ワシントン・ポスト』、『ニューヨーク・タイムズ』の編集委員らは中国共産党に公開書簡を発表し、記者らの追放を撤回するよう嘆願した。

編集委員らは公開書簡で、中国共産党の残酷なゼロコロナ政策に対してプラスの報道を行なってきたと強調した。

「私たちは、中国がウイルスを封じ込める行動を取り、感染拡大を防止する上で顕著な結果を得たことを大きく取り上げてきた」と書簡は記した。「私たちの記者のなかには、追放期限が迫っている現在でも、中国が国家資源を総動員して、中国と世界中の何十億もの人々に希望を与えるワクチンを開発しているかを報道している」。

2021年11月、バイデン政権は中国系メディアに対する規制を緩和した。交換条件として、中国共産党もニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナルの記者の帰国や中国との往来をより容易にすることを認めた。

2020年以降、ニューヨーク・タイムズは中共路線を推奨する論説文章を度々掲載し、繰り返し批判を浴びてきた。そのひとつとして挙げられるのは、昨年同紙の編集部が書き上げた「(仮邦訳)中国との対立から利益を得るのは誰か?(Who Benefits From Confrontation With China?)」という記事だ。

ニューヨーク・タイムズの論説「(仮邦訳)中国との対立から利益を得るのは誰か?(Who Benefits From Confrontation With China?)」のスクリーンショット(Screenshot via The Epoch Times)

米安全保障政策センター上級研究員で、対中戦略評価の専門家であり、エポックタイムズの寄稿者でもあるブラッドレイ・セイヤー(Bradley Thayer)氏によれば、この論説はすでに失敗した対中「関与」政策を支持するものだという。

セイヤー氏は、ニューヨーク・タイムズは「イデオロギーについて曖昧であり、共産主義体制の本質を見ようとしていない」と非難した。

元海軍情報将校で中国問題専門家のジェームス・ファネル(James Fanell)氏は、別の視点から見れば、ニューヨーク・タイムズが中国(共産党)との対立を避けるのは既得権益を守るためであり、中国市場へのアクセスを確保したいという思惑があるのだと指摘した。

「誰が見ても明白なことだ」とファネル氏は語った。

エポックタイムズはニューヨーク・タイムズに対し、この記事で取り上げた疑惑に関するコメントを求める際、13の具体的な質問を送った。その中には、なぜニューヨーク・タイムズの記者が否定的なインタビューばかりを求めているのか、同紙が以前中国共産党のプロパガンダに基づいて法輪功について誤った報道をしたこと、神韻に対する否定的な描写がいかに中国共産党の弾圧政策に利するのか、などが含まれている。

ニューヨーク・タイムズは、いずれの質問に対しても回答を拒否し、「一般的な方針として、将来掲載される、あるいは掲載されない可能性のある記事についてはコメントしない」とだけ述べるに留めた。

Petr Svab
ニューヨーク担当記者。以前は政治、経済、教育、法執行機関など国内のトピックを担当。
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