2010年代から、中国の労働コストの上昇が、企業に他の製造拠点を探させる一因となっている。近年、米中貿易摩擦、新型コロナのパンデミック、ロシアへの国際的制裁などが、企業に中国への依存を見直す契機を与えた。報告書には、アジアのサプライチェーンが、変動していると記されている。
アジアの非営利団体、ヒンリッヒ財団は、グローバルとアジアのサプライチェーンについて新しい報告書を発表した。この報告書は、2018年と2022年の市場データをもとに、中間財の輸出入の変化を比較分析している。
報告書によると、「脱グローバル化」や「ニアショアアウトソーシング」の動きがある一方で、世界のサプライチェーンはまだ拡大していることが確認されている。また、アジアのサプライチェーンは大きく変わりつつあり、中国と米国、中国と日本とのそれぞれの二国間の貿易関係は、ますます経済的依存を減らしている事が現実となっている。
2018年に米国が輸入する中間商品の中で、中国製の割合は18.5%だった。しかし、2022年には14.1%に減少し、2023年の上半期には11.4%まで下がった。
同じく、中国が米国から輸入する中間商品の割合も、2018年の8.4%から2022年には7.5%に減っている。
日本の輸入する中間商品の中国の割合も、26.5%から24%に減り、日本から輸入される割合も10.8%から8.6%に縮小した。
一方で、中国製の中間商品は、世界の他の市場でのシェアを拡大している。2018~22年にかけて、ドイツでの中国製中間商品の輸入割合が、11.1%から15.9%に、イギリスでは10.3%から15.1%に増えた。
台湾の経済専門家、黄世聡氏は次のように指摘している。
「米国は中国の技術に対して多くの政策的制限を設けており、その中で、特に日本が積極的に協力している。このため、日本と米国から中国への科学技術関連の輸出は大きく減少した。技術の供給源を探している中国は、ヨーロッパや他の地域からの輸入にシフトし、輸出入のパターンが変わりつつある」
さらに、地政学的緊張が高まる中で、中国が台湾製の中間製品への依存度を、増していることが注目されている。2018~22年にかけて、台湾からの中間製品の中国への輸入比率は12.2%から14%に上昇した。
黄氏によれば、「台湾と中国の産業関係を詳しく見ると、台湾はサプライチェーンの中心的な役割と上位の位置を占めており、中国は主に下位の組み立て作業を担っている。パンデミック中やその後も、中国は組み立てに必要な高位の部品を大量に要求しており、その多くは台湾からの供給に頼っている。これにはICチップや半組み立ての部品などが含まれる。結果として、台湾から中国への輸出は増加傾向にある」と述べている。
大紀元のコラムニストである王赫氏は、
「台湾貿易の中国依存度は、かつて30%や40%という高い水準から、現在は大きく低下している。データを見ると、台湾が中国市場に依存しているように思われるかもしれませんが、実際には、ハイテク製品分野で、中国の台湾依存度が、台湾の中国依存度を大きく上回っている」と指摘している。
さらに、レポートによると、2018~22年にかけてベトナムとインドネシアの中間財の輸出が顕著に伸び、それぞれ12.8%、10.4%の成長率を達成し、アジア太平洋地域の平均5.9%の成長率を大幅に上回ったとされている。
このことは、近年の外国直接投資が、アジアに集中している流れを反映しており、西側のグローバル企業のみならず、中国の企業も、海外での生産基地の拡張に積極的であることを示唆している。特に2023年には、中国からベトナムへの直接投資が急増し、現在ベトナムにおける最大の投資国となっている。
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