米上院銀行委員会のシェロッド・ブラウン委員長は、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収を巡り、同社と中国との関係を調査するよう求める書簡をバイデン大統領宛に送った。安全保障を危険にさらすとしているが、日本製鉄は中国事業への理解が「不正確だ」と反論している。
1日付の書簡はコンサルタント会社ホライズン・アドバイザリーの報告書を引用し「日本製鉄の中国の鉄鋼エコシステムおよび産業政策アジェンダへの関与は、中国の軍民融合戦略や世界的な経済力の追求との関係において、懸念すべき意味を持つ」と警告。「日本製鉄と中国の鉄鋼業界との関係性を徹底的に調査する必要がある」と記した。
昨年12月、ピッツバーグに本社を置くUSスチールは、日本製鉄が同社を149億ドルで買収することに合意した。この買収が成立すれば、日本製鉄はUSスチールを完全所有することになる。
ホライズン・アドバイザリーの報告書によると、日本製鉄は中国の鉄鋼セクターと深いつながりがある。同社は、中国の国有鉄鋼会社である上海宝山鋼鉄(宝鋼集団)を支援することで、約50年前の中国鉄鋼産業の確立に重要な役割を果たした。日本製鉄は日本の技術、設備、人材を提供し、その後世界最大の鉄鋼メーカーとなった宝鋼の設立を支援した。
また、日本製鉄は中国に9つの施設を持ち、その一部または全部を所有しているほか、中国の大手鉄鋼メーカーと提携・協力関係を築いていると指摘。「日本製鉄がUSスチールの所有することで、USスチールの中国の非市場経済への依存度をより高める危険性がある」と警戒を促した。
宝鋼集団は、中国新疆ウイグル自治区での強制労働との関連も指摘される。ブラウン氏は「この取引は、アメリカの労働者にとっても、我々の経済的・国家的安全保障に悪い影響がある」と述べ、買収に反対する考えを示した。
いっぽう日鉄は、ホライズン社の報告書には「多くの不正確な記述や虚偽の表現が含まれている」と批判。「世界生産能力のうち、中国事業の占める割合は5%にも満たない」と述べた。
また投資先の中国企業について、「中国国外の同社事業の運営や経営上の意思決定に関与していない」「中国国外での研究開発やエンジニアリングを含む日本製鉄の事業に関する情報にアクセスすることはできない」とも強調した。
超党派の反対
昨年12月に買収合意が発表された際、ホワイトハウスは、国家安全保障上のリスクやサプライチェーン上の懸念が生じる可能性があるため、買収を「精査」する必要があると強調した。
バイデン大統領は「米国人鉄鋼労働者によって運営される強力な米国鉄鋼企業を維持することが重要だ」と買収に反対しているほか、トランプ氏もこの取引を「即座に阻止する」と買収を認めない考えを表明している。
また、複数の民主党議員は対米外国投資委員会の委員長であるジャネット・イエレン財務長官に書簡を送り、買収案を阻止するよう促した。
買収計画には労組が反対を表明しており、USスチール買収後の雇用保護を約束するとした日本製鉄の書簡について、「意味のない紙切れだ」「空約束にすぎない」と批判する声明を公表した。
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