2025年3月17日(月)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年3月2日

(2024.10.8~12.29 83日間 総費用24万1000円〈航空券含む〉)

 新作映画“マハラジャに火炙りで処刑されたゲイ・ボーイの王子の呪い”

マイソールの映画館、かなり大きな建物で市街地の中心部にある。四つの劇場がありアニメ、ラブコメ、ミュージカルなど異なるジャンルの映画を同時上映している。朝、午後、夕方、夜と1日4回上映

 11月1日。マイソールの州立博物館。建物は19世紀初めにフランスと同盟していたマイソール王国を滅ぼした英国のウェリントン卿(初代ウェリントン公爵アーサー・ウェルズリー)の邸宅であったという。ウェリントン公爵はご存じのようにワーテルローの戦いを指揮してナポレオンを破った英国の歴史的英雄であるが、若い頃はインドで活躍したと知り親近感を覚えた。

 暑くて湿度が高いので映画館で涼むことにした。インドはムンバイが“ボリウッド”と称されるように世界最大の映画製作国である。ただし粗製乱造で、クオリティーは推して知るべしと言われているが。旧フランス領のポンディシェリーでも映画館に行ったが、映画館の設備は先進国のシネマコンプレックスとさほど遜色ない。料金は2階席で日本円240円~400円弱。インとドの貧困層にとり安くはないが、インドの若者がデートするには格好の場所のようで、平日昼間から7割の入りだった。

 映画はインド映画らしくミステリー・ホラー・アクション・ダンス・ロマンスと荒唐無稽に盛沢山。タミル語で英語字幕もないのでストーリーは判然としないが、19世紀のインド。あるマハラジャの王子が、実はゲイ・ボーイで密かに女装してダンスを踊るのを生きがいにしていた。ある日、偶然王子が女装して踊っている姿を発見したマハラジャは激怒。一族の栄光と権威を穢すとしてマハラジャは秘密裏に王子を火炙りで処刑。その王子の霊が成仏せずさまよい、現在もマハラジャの子孫が住む宮殿で一族に呪いをかけて奇怪な事件が起こる、というような粗筋。

 当時のインドでのマハラジャの権力が強大でありゲイ・ボーイが社会から忌避されていた存在だったことが想像できた。

映画館のロビー。広くてポップコーン、ハンバーガー、アイスなどコーナー がある。客席からスマホ・アプリで注文すると席までデリバリーしてくれる

ヒンズー教のお祭りで施しを無心するマイソールのゲイ・ボーイのグループ

 11月3日。インドのヒンズー教の最大のお祭りの“ディワリ”の期間なので商店は盛大に飾り付けしてディワリ・セール目当ての買い物客を呼び込んでいる。金銀ダイヤの宝飾品を売る店は婦人客で賑わっていた。

 賑やかな商店街を歩いていたら、3人の女装したゲイ・ボーイが一軒一軒順番に店に入って施しを要求しているのに出くわした。無下に追い返す店もあったが、半分くらいの店ではなにがしかの小銭を渡していた。3人のうちの1人が話しかけてきたので聞いてみたら“施しをもらうのはディワリにおける慣習”というような回答だった。

マイソールのディワリの祭礼の飾りつけをした商店

長距離バスの停車時間に効率よく小銭を集めるゲイ・ボーイ

 12月18日。旧フランス領の町ポンディシェリーから、私営の長距離バスで丸一日かけてバンガロールへ移動。冷房もなく窓を開けっぱなしの旧式バスだ。値段は急行バスよりかなり安いが、途中何度も田舎町の停留所に停まる。バスは乗客を呼び込んだり託送荷物を集めたりするので、停留所で5分から10分程度停車する。その停車時間に飲み物や食べ物の売り子がバスに乗り込んで、乗客に売りつけようとする。しばしば乞食も乗り込んで来て物乞いをする。

 ある停留所で小柄でこざっぱりとサリーを身に着けた若い女性が乗り込んで来て、座っている乗客に順番に手を差し出し小銭をもらっていた。バスに乗り込んでくる物乞いの人は汚い身なりの老人がフツウであったので違和感を覚えた。このサリーの女性には乗客が積極的に小銭を渡しているようにも見えた。乗客の3人に1人以上は小銭を握らせていた。フツウの物乞いに対してはバスの乗客のなかで財布を開くのは数人程度なのであるが。

 よくよくサリーの女性を見ると“彼女”は女装したゲイ・ボーイだった。


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