限界「ホワイトカラー」にしがみつく人への処方箋 『ホワイトカラー消滅』冨山和彦氏に聞く・前編

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――まさにその路線で育ってきたのが、今の40〜50代です。

大変なんだけど、これからのことを考えないとね。多くの人が100歳ぐらいまで生きるとしたら、人生はまだ半分残っている。その間、自分が持っている技能や能力を世の中のため、人のために役立てようと思ったら、相当自己改造しないと厳しいだろう。

私もそろそろ年金受給権の歳だからわかるが、人間は歳をとればとるほど、自己証明、存在証明がほしくなる。存在証明とは、やっぱり「自分は誰かの役に立っている」と思うこと。それがない老後はきつい。

――いわゆる「リスキリング」だけの問題ではないと?

そうだ。人生をどう見直すか。前の世代は定年まで勤めれば何とか逃げ切れた。だが、これからは違う。今からでも遅くない。人生設計をもう一度やり直さないと。

むしろ現場人材を目指したほうがいい

――リスキリングは人口に膾炙(かいしゃ)してきましたが、実際に新たなスキルを身につけるのは大変なことです。

冨山 和彦(とやま・かずひこ)/IGPIグループ 会長。1960年生まれ。経営コンサルタント。東京大学卒業。在学中に司法試験合格。スタンフォード大学でMBA取得。産業再生機構COOを経て、2007年に経営共創基盤(IGPI)を設立(撮影:今井康一)

「スキル」というときに、ホワイトカラーの仕事の延長で考えてしまうからそう思うのではないか。

例えば、「就職氷河期世代」に着目すると、「この人たちを何とか助けましょう」というときには、市役所などのホワイトカラーとして雇用する策が取られてきた。市役所やホワイトカラー的な仕事では人が余っているのに。ここには無意識のバイアスがかかってしまっている。「アンコンシャス・ホワイトカラー・バイアス」だ。

足りないのは、現場の働き手だ。例えばバスの運転手。私たちの「みちのりグループ」傘下のバス会社は結構給料がよくて、ご夫婦で働いている場合は世帯年収が700万〜800万になる。

ホワイトカラーより、そっちに行ったほうがいい。リスキリングで大型第二種免許を取ってバスの運転手になる道もあるし、医療介護、建設、物流全般とすごく広範な分野で現場人材が足りていない。

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