卒業式のシーズンになると、街の空気がどこか華やぐ。袴姿の学生たちが駅のホームに並び、大学の正門前では晴れやかな表情の卒業生とその家族が記念写真を撮っている。毎年この時期になると、学生たちの巣立ちを見送ることに慣れているはずなのに、やはりどこか感慨深い。
大学の卒業式というのは、不思議な時間だ。四年間(あるいはもっと長い時間)を共にした仲間と、いよいよ本当に別れる瞬間がやってくる。講義やゼミで見慣れた顔も、今日ばかりは少し大人びて見える。これまで当たり前のように過ごしてきた日々が、もう戻ってこないのだと実感すると、言葉にできない寂しさがこみ上げる。
式典では、厳かな雰囲気の中で学長や来賓の祝辞が続く。正直、長く感じることもある。しかし、その中にふと心に響く言葉が紛れていることがある。「これからの人生は自分で選び、切り拓いていくものだ」「失敗を恐れずに挑戦し続けてほしい」。そんな言葉が、式を終えてから何年経ってもふと頭をよぎることがあるのだから、意外と大事な時間なのかもしれない。
卒業式が終わると、学生たちは思い思いの時間を過ごす。仲間たちと集まり、最後の思い出を刻もうとする人もいれば、先生に直接お礼を言いに行く人もいる。これまでの感謝を伝えたり、これからの進路について話したり、普段は照れくさくて言えなかったことを伝えるのに、卒業式は絶好の機会なのかもしれない。
一方で、卒業式の日に実感が湧かない人もいる。「本当に卒業なのかな」と、不思議な気持ちのまま過ごすこともあるだろう。しかし、それがゆっくりと現実味を帯びてくるのは、卒業して数週間、数カ月経ってからだったりする。これまでの日常がふと恋しくなったとき、初めて「もう戻れないんだ」と実感するのかもしれない。
卒業式の後、キャンパスには最後の別れを惜しむ学生たちの姿がある。写真を撮り合ったり、先生にお礼を伝えたり、時には涙を流したりもする。もう二度と全員が同じ場所に集まることはないのだと気づいた瞬間、改めて「卒業」の意味を実感するのだろう。
卒業後は、それぞれの道を歩んでいくことになる。社会に出て働く人、さらに学びを深める人、夢を追いかけて新しい環境に飛び込む人。道は違えど、同じ時間を共有した仲間たちの存在は、これからの人生にとって大きな財産となる。
卒業式は、終わりであり、始まりでもある。社会に出ることへの期待と不安が入り混じるこの特別な日を、どうか大切に過ごしてほしい。何年か経って振り返ったとき、きっとこの日のことが、自分の中で温かい記憶として残っているはずだから。