特別抗告の棄却を受け、会見する鴨志田祐美弁護士(右から2人目)ら=26日午後1時15分、東京・霞が関の司法記者クラブ
1979年に鹿児島県大崎町で男性の変死体が見つかった「大崎事件」で、殺人と死体遺棄の罪で満期服役した原口アヤ子さん(97)の親族が裁判のやり直しを求めた第4次再審請求について、最高裁第3小法廷(石兼公博裁判長)は26日までに「(弁護団の新証拠には)証明力に限界がある。有罪認定に合理的疑いを生ずる余地はない」として、原口さん側の特別抗告を棄却した。再審開始を認めない判断が確定した。
大崎事件の再審請求を棄却した25日付の最高裁決定は、第3小法廷の裁判官5人のうち1人が「再審開始決定をすべきだ」とする反対意見を付けた。大崎事件の再審請求で最高裁の裁判官が反対意見を付けたのは初めて。「疑わしいときは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則が再審にも適用されるとした「白鳥決定」に照らして判断し、殺人という事実認定の正当性に疑問を呈した。
弁護団は今回、救命救急医の鑑定などを新証拠として提出し、転落事故と不適切な救助行為で男性が死亡したと主張。第3小法廷が9ページで棄却の結論を導いた一方、学者出身の宇賀克也裁判官は15ページにわたり詳細に理由を述べている。
宇賀裁判官は救命救急医の鑑定について、男性が死に至る経過を専門的知見に基づいて説明し「尊重に値する」と評価。男性を救助し土間に置いて退出したとする近隣住民2人が、体験していない事実を述べているとした二つの供述鑑定に関しても「異なる手法で同じ結果が示され、両鑑定の信用性を高める」とした。
その上で、確定審や第4次再審請求だけでなく、過去の再審請求に提出された証拠も含めて総合的に評価。殺人であることの唯一の直接証拠だった法医学鑑定の推定が崩れ、生きた男性を自宅に届けたという近隣住民の供述、知的障害がある共犯者らの自白なども信用性が低下するとした。
弁護団の佐藤博史弁護士は「過去の記録を相当読み込んで丁寧に分析している」と指摘。鴨志田祐美事務局長は「最高裁の白鳥決定の判断基準に極めて忠実な内容だ」と高く評価した。