※本稿は、高梨裕介『合格したいなら「中学受験の常識」を捨てよ』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。
「こんな成績では、将来、大人になってから困るわよ」
×プレッシャーを与えるためにあえてネガティブな言葉をかける
○子どもが気持ちよく勉強できるようにポジティブな言葉をかける
言葉は使い方によって、人を喜ばせたり、傷つけたりします。お子さんに渡してあげたいのは、もちろん前者。褒め言葉だったり、労いの言葉だったり、励ましの言葉だったりといった愛情表現です。
お子さんが小さかった頃は、ニコッと笑ったり、寝返りが打てるようになったり、ハイハイができるようになったりと、ちょっとした成長でも嬉しくて、「上手にできたね」「頑張ったね」とポジティブな言葉をかけていたのではないでしょうか。
ところが、小学校に入学し(家庭によっては幼児期から)「勉強」が始まると、なぜか厳しめに見てしまう。それは、お子さんの将来がだんだんと見え始めてくるから生まれる、不安や焦りなのかもしれません。
私の母親は、いま振り返ってみても度を超すくらい教育熱心な人でした。幼少期の頃から、とにかく勉強には口うるさかったのです。もちろん、母親が教育に熱心だったおかげで、難関と言われる進学校に進学できたと思うし、将来の選択肢が広がったとは思っています。そこは感謝しています。
でも、「あそこまで厳しくする必要はあったのか? あれはやりすぎだっただろう?」といまでも思うことがあります。私の母親はよく、「こんな成績では、将来、大人になってから困るわよ」「ああいう人になってしまうわよ」という言い方をしていました。私はその言葉を聞くのがすごくイヤでした。
入塾説明会で聞いた「脅し文句」
だけど、小学生の子どもに、将来のことなんて正直分かりません。「親がそう言っているのなら、本当に困ることになるのかもしれない。だから、やっておくか……」、そんな気持ちで、勉強をしていた時期もありました。
でも、これってずるくないですか? 大人であることを武器に、親の価値観を子どもに刷り込んでいるだけ、いまならそう思います。
先日、小2の娘が全国模試を受けたあとに、某大手塾で低学年コースの入塾説明会がありました。わが家では、いまのところ塾に入れる予定はありませんが、同じ教育者としてどんなことを話すのか関心があり、参加してみることにしたのです。
その講師はわざわざ保護者の前で難しい問題を解いてみせ、「これからはこういう思考力系の問題が解けないと、社会に出てから困りますよ」と、力説していました。その姿を見て、ここでも「脅し文句」を使っているんだな、と呆れました。