Uマチック
Uマチック(ユーマチック、U-matic)とは、家庭用として初めてカセットにテープが収められた、U規格ビデオテープレコーダのソニーにおける商標。テープ幅19mm(3/4インチ)のカセット・テープを使用する[1]。名称はそのローディングの形がUの字に似ていることからつけられたと言われる。 オープンリールと違い掛けかえなどのわずらわしさが無いカセット方式は、多くの人の注目を浴びる。80年代前半、学校教育機関にも多く採用された。
概要
[編集]1969年10月29日、ソニーが「カラービデオプレーヤー」として試作機を発表。当時の規格は4分の3インチテープを用い、再生時間は最大で1時間30分であった。同社は「社会と家庭生活に一大変化が」「見たい映画や演劇およびテレビ番組を、家庭のテレビ画面にカラーで再生できる」とあおり、この発表の模様を報じた読売新聞は「もうすぐやって来る映画・演劇のカンヅメ時代」との見出しで大きく報じた。
1970年3月、U規格がソニー・松下電器産業・日本ビクターの3社で規格化された。特に業務用の「BV(Broadcasting Video)シリーズ」は、カセットテープ方式の容易さと即時性から報道現場に変化をもたらし、そのテープローディング技術はフィルムからビデオテープレコーダ(VTR)へ変遷していく流れの基礎となった[2]。
1971年10月10日、ソニーが「Uマチック」という商標で発売した。
価格はそれぞれ、プレーヤーが23万8000円、レコーダーが35万8000円、60分テープが1万円、30分テープが5500円で、発売当時は芸能界でも多くの関係者がこのUマチックを購入し、バッキンガム宮殿にも納入された。
正確な用法ではないが、ソニー以外の他社のU規格VTRも、ソニーの商標であるUマチックを呼称に用いて、一般にUマチックVTRとよばれる。正式名は「3/4型U TypeヘリカルVTR」であるが、単にUマチックあるいは、業務用放送局の現場の俗称として「四分三(しぶさん)」などとよばれ、汎用型として初めて広く世界的に普及したカセット型ヘリカルVTR(ヘリカル・スキャンVTR、英語名:helical scanning type VTR)となった[1]。
信号記録は、輝度信号がFM記録方式[注釈 1]、色信号は低域変換直接方式で[注釈 2]、これは1975年に発表・発売されたベータマックスの原型でもある[1]。
当初は民生用または、一般業務用のVTRだったが、比較的小型軽量で取り扱いが容易であったことと、当時タイムベースコレクタ(TBC)が開発されヘリカルVTRの放送が利用可能になったことから、アメリカの三大ネットワーク局であるCBSが目を付けて、ソニーに携帯型を開発依頼し、ニュース電子取材システム(ENG)の主力VTRに採用して大成功を収めた[1]。このため、1975年頃から世界的にニュース取材用として普及し、テレビ放送のフィルムニュースから取って代わる立役者となった[1]。
規格の詳細についてはU規格を参照。
変遷
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- 1969年10月29日発表。
- 1970年3月:松下電器産業(現・パナソニック)、日本ビクター(現・JVCケンウッド)、その他日本国外メーカー5社と規格統一の合意を行い「U規格」誕生[3]。
- 1971年10月:ソニーの民生用のカセット式カラーVTR Uマチック「VP-1100(再生専用)」を販売開始[4]。
- 1972年3月:ソニーの民生用のカセット式カラーVTR Uマチック「VO-1700(レコーダー)」を販売開始。
- 1976年6月:ソニーの業務用の放送局用小型・高性能 Uマチック「BV(Broadcasting Video)シリーズ」を発売開始。
- 2000年6月 :VTRの生産が終了。
ソニーではメディア変換サービスを行っている[5]。
製品例
[編集]- 再生機
- VP-1100
- VP-7020
- BVU-900
- BVU-920(DT付)
- 録再機
- VO-1700
- VO-5800
- VO-5850
- BVU-800
- BVU-950(SP対応)
Uマチックのビデオで発掘された1970年代前半の番組
[編集]初期のUマチック規格で録画された番組は貴重な映像資料となっている。
- 繭子ひとり第125回の一部(1971年8月27日放送分)[6]
- ステージ101(1971年以降の一部回)[7]
- デビスカップ(1972年、日本VSオーストラリア)[8]
- きょうの料理(1972年12月他)[9]
- 同棲時代(TBS、1973年2月18日)
- 連想ゲーム(1973年1月20日放送)
- 赤ひげ(朝露に消ゆ、1973年6月29日放送)[10]
- ふりむくな鶴吉(1974年~75年、第17回、27回、29回、31回、35回、37回、40回、41回)[11]
- 国盗り物語(第37回「将軍追放」(1973年9月16日放送)、第38回「小谷落城」(1973年9月23日放送)
- ひるのプレゼント(1974年2月7日)[12]
- この人と語ろう(1975年2月8日)[12]
- お国自慢にしひがし(1975年)[13]
- スポットライト(1975年9月11日)[14]
- 元禄太平記(第9回「昼行灯出陣」)
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 周波数変調(FM)による記録方式。高い周波数域はそのまま記録すると出力が減衰して実行できないため、搬送波を映像周波数でFM変調して記録する。
- ^ 色信号を輝度信号よりもずっと低い周波数に変換してFM変調せずにそのまま記録する方式。テープダビング時に色画質が劣化する欠点がある一方、輝度信号と色信号の相互干渉が低減するなどの利点がある。
出典
[編集]- ^ a b c d e 竹下彊一、浜野保樹、藤幡正樹(監修) 編『最新映像用語辞典』リットーミュージック、1994年6月30日、118頁。ISBN 4-8456-0080-3。
- ^ ソニービジネスソリューション株式会社「放送業務用制作機材の歴史」
- ^ “第1章 ビデオもカセットに <ビデオカセット>”. 2023年11月20日閲覧。
- ^ 戦後日本のイノベーション100選
- ^ テープクリーニング&フォーマット変換業務
- ^ NHK. “視聴率47.4%!超・幻の朝ドラ『繭子ひとり』を発掘!”. NHK番組発掘プロジェクト通信. 2023年10月16日閲覧。
- ^ NHK. “『ステージ101』田中星児さんから発掘!”. NHK番組発掘プロジェクト通信. 2023年10月16日閲覧。
- ^ NHK. “1972年テニス・デビスカップ発掘! 神和住純さん&坂井利郎さん”. NHK番組発掘プロジェクト通信. 2023年10月16日閲覧。
- ^ NHK. “昭和47年『きょうの料理』正統派“おせち”発掘!”. NHK番組発掘プロジェクト通信. 2023年10月16日閲覧。
- ^ NHK. “俳優・瑳川哲朗さんから『赤ひげ』発掘!”. NHK番組発掘プロジェクト通信. 2023年10月16日閲覧。
- ^ NHK. “『ふりむくな鶴吉』音楽の樋口康雄さんから一挙8本!”. NHK番組発掘プロジェクト通信. 2023年10月16日閲覧。
- ^ a b NHK. ““浪花のおかん”ミヤコ蝶々さん 出演番組発掘!”. NHK番組発掘プロジェクト通信. 2023年10月16日閲覧。
- ^ NHK. “あべ静江さん登場!『いごっそう段六』全話発掘!”. NHK番組発掘プロジェクト通信. 2023年10月16日閲覧。
- ^ NHK. “唱歌「ふるさと」のルーツを探る『スポットライト』”. NHK番組発掘プロジェクト通信. 2023年10月16日閲覧。