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インタビュー
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来年度から高齢者などを対象に定期接種が始まる帯状疱疹ワクチンは、認知症や脳卒中、心筋梗塞など慢性炎症が発症に関与する病気についても予防効果があるかもしれない。欧米の最新研究で示唆された、そのメカニズムと可能性。 厚生労働省は、来年度から、65歳になった高齢者などを対象に帯状疱疹(ほうしん)ワクチンの定期接種を始めると発表した。現在は、50歳以上や、がん患者などハイリスクの人を対象に接種が行われているが、任意接種のため、約8000円~4万4000円の自己負担が必要となる。この負担が軽減されるのはありがたい。 帯状疱疹ワクチンは、帯状疱疹自体を予防するだけでなく、認知症など様々な疾患を予防する可能性が指摘されている。最新の研究成果を踏まえ、このワクチンについて解説したい。 「お岩さん」も帯状疱疹? まずは、帯状疱疹の原因である水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster virus
超党派のスポーツ議員連盟は、今国会でスポーツ基本法を改正し、暴力やハラスメントの根絶を明文化することを目指している[サガン鳥栖時代の金明輝氏の問題行為に関する調査報告書](C)新潮社 過去に選手らへの暴力行為などで降級処分を受けたJリーグの監督が、S級ライセンスを再取得して別のチームで監督に復帰した。長年チームを支えてきた地元企業は、「過去のことは解決済み」とするクラブに異を唱えてスポンサー契約を終了させた。サッカー強豪国出身の元Jリーガーは、日本のスポーツ界で意識改革が遅れる現状を批判し、暴力のない指導方法を確立するための思考法を提言する。 「またか、と言う思いですね。僕はJリーグが始まる前年の1992年に来日し、日本のサッカーが強くなることを願って仕事をしていますが、残念ながらこの国から暴力監督がいなくなることはありません。JFA(日本サッカー協会)の判断もおかしいと思います。レベルが
1998年、当時のアメリカを代表する哲学者リチャード・ローティは次のような〈予言〉をした。労働組合や賃金・雇用などについて真面目に考えようとしない文化左翼たちは、労働者たちからの手痛い反撃を受けることになるだろうと。彼らは狡猾な弁護士や高給取りの債権セールスマン、そしてポストモダニズムを信奉する大学教授たちの支配を終わらせてくれるStrongmanに投票したいと思うようになるだろう。そのような人物が大統領になった暁には、彼はただちに国際的な超大富豪(⁉)と手を結び、有色人種や同性愛者たちが得た利益は帳消しになるだろうとも。その時、エラそうに指図してきた大卒者たちに対する低学歴者たちからの怒りが、あらゆる形で噴出することになるのだ[*1]。 それから19年後、ドナルド・トランプが第45代合衆国大統領に就任した。トランプ就任直後には左派からも深刻な反省が現れ、著名な思想家マーク・リラなどは先述
熟達した人事担当者にとって、すでに雇用調整の実情は「厳しく制限されたもの」とはいえない[自民党総裁選で雇用規制緩和を掲げた小泉進次郎氏=2024年9月13日、東京・永田町](C)時事 先の自民党総裁選で論点になった解雇規制の緩和は、本当に労働市場の流動化を促し、企業の生産性を上げるのだろうか。1990年代末から日本企業が行ってきた雇用調整のノウハウや、解雇者への金銭補償の制度化が労使に与える影響に鑑みて、そこには大きな副作用も考えられる。 繰り返される緩和論 「フォーサイト」編集部より、最近、解雇規制の緩和が一部で話題になっているということで、それについての意見を求められた。 解雇規制の緩和論者の主張を要約すると、おそらくこういうことだろう。 日本では、解雇が著しく制限されており(特に正社員について)、労働市場の流動化を阻んできた。そのため、企業に不採算部門があったり、まともに仕事をしない
香港行政長官選挙制度の民主化を求める大規模デモ「雨傘運動」は2014年9月26日に始まり、79日間続いた後、同年12月15日に終わった[2014年10月24日、香港](C)EPA=時事 1期目の習近平政権を揺るがせた香港の「雨傘革命」は、はじめから挫折を運命づけられていた革命だと言える。「自由を求める民衆vs.強権政治」という善悪二元論で香港を語る時、重要なプレーヤーの存在が視界から抜け落ちていたのではないか。英国からの返還を機に政治と結びつきながら富の源泉となる不動産を押さえ、繁栄を謳歌してきた地場の資本=「華資」である。 10年前の2014年の秋、香港は若者らが唱える「雨傘革命」に揺れていた。習近平政権(第1期)が発足して2年程が過ぎた頃であった。 「我們要普選(我らは普通選挙を求める)」を掲げた若者らは、「香港特別行政区政府のトップである行政長官は香港住民の自由意志で選出されるべきだ
フランス革命において独裁政治を行い、政敵を次々と粛清、最後は自らも断頭台で処刑されたロベスピエール。「恐怖政治の元凶」とされる元祖〈ポピュリスト〉が、今なぜか世界で再評価されつつあるという。 日本でも、髙山裕二・明治大学准教授による新刊『ロベスピエール:民主主義を信じた「独裁者」』(新潮選書)が刊行された。民主主義を信じた「独裁者」とは、いったいどのような政治家だったのか。ヨーロッパ政治史を専門とする板橋拓己・東京大学教授が、その読みどころを紹介する。 *** 「正義の暴走」という負のイメージ ロベスピエールというと、どんなイメージだろうか。フランス革命が生んだ「独裁者」であろうか。「恐怖政治」の代名詞だろうか。あるいは、今風に言えば「正義の暴走」を体現する人物というイメージかもしれない。 たとえば、ちょうどいま大学のゼミで講読している高名な国際政治学の古典には次のような文章があった。「ロ
大幅な円安によって日本の大型コンサート会場が安価にレンタルできるようになり、利益が出しやすいビジネスモデルとなった[1966年にザ・ビートルズが初めて音楽ライブで使用した日本武道館=東京都千代田区](C)Caito - stock.adobe.com ほとんどの日本人が名前も知らないアーティストが、ライブで武道館を一杯にする。そんな不思議な現象がここ数年で何度も起きている。公演を仕切るのはシンガポールなどの華人プロモーターで、アーティストは台湾人、客席を埋めるのは中国大陸から大挙して来日するファンたちだ。台湾人アーティストにとっては、中国大陸での活動に比べ政治的対立に巻き込まれるリスクを軽減でき、日本にも場所代や公演ついでの観光などで金が落ちる。いまのところ誰にとってもウィンウィンと言える新しいビジネスモデルは、このまま定着するのか。 1964年に完成して以来、66年のビートルズの公演を皮
政治のアウトサイダーとしてワシントンへ乗り込んだドナルド・トランプ氏は、反知性主義の格好の体現者だった[勝利宣言するトランプ次期米大統領(中央)=2024年11月6日、アメリカ・フロリダ州ウエストパームビーチ](C)AFP=時事 アメリカ大統領選の結果を、皆さんはどのように受け止められただろうか。準備不足のまま担ぎ出されてしまった感のあるハリス氏だが、民主党陣営にはそれ以前からいくつかの大きな弱点があったように思われる。インフレによる物価高という身近な問題も、現政権への逆風になっただろう。だが、そういう当面の生活苦よりもう少し深い根本的なところで、民主党は人々の信頼を失いつつあったのではないか。その根っこにあるものに、拙著『反知性主義:アメリカが生んだ「熱病」の正体』『不寛容論:アメリカが生んだ「共存」の哲学』(いずれも新潮選書)で書いたことを通して近づいてみたい。 *** 『反知性主義』
民主主義を支える規範は、共和党の強硬な姿勢と、それに対抗する民主党の規範破りで徐々に失われていった[ホワイトハウス近くのエリプス広場で集会に出席するドナルド・トランプ大統領(当時)=2021年1月6日](C)EPA=時事 共和党のドナルド・トランプ前大統領と民主党のカマラ・ハリス副大統領が争うアメリカ大統領選は接戦が予想されるが、多くの識者が指摘するのは、どちらが勝ってもアメリカ政治の混迷は続くということだ。混迷の原因はどこにあるのか。アメリカはどこへ向かうのか。トランプ政権時代に『民主主義の死に方』を執筆し、世界的な民主主義の後退と権威主義の台頭を指摘したスティーブン・レビツキーとダニエル・ジブラット(ともにハーバード大学政治学教授)による注目の新著『少数派の横暴 民主主義はいかにして奪われるか』を、神戸大学教授の砂原庸介氏が読み解いた。 *** 前著『民主主義の死に方』(新潮社、原題:
ドイツでは交通インフラが老朽化し、列車の遅延や橋の崩落が社会問題化している。高速道路は全体の半分、鉄道網は4分の1以上に改修が必要だが、連邦政府の資金調達環境は厳しく国営ドイツ鉄道の株式売却も取り沙汰される。運輸大臣は財政規律に厳しい自由民主党(FDP)から出ており、積極的なインフラ投資を求める社会民主党(SPD)や緑の党と、連立政権内での折り合いがつかない。 ドイツ東部のドレスデン中心部で9月11日未明、エルベ川に架かるカローラ橋の一部が崩落した。川の南北に広がる同市を繋ぐ大動脈で、車や路面電車が通過する重要な橋である。崩壊の18分前には路面電車が通過したものの、怪我人はいなかったという。大雨による川の増水などにも見舞われたが、今も解体工事が続いている。 崩壊したカローラ橋が建設されたのは1970年代初めで、交通量の増加に合わせ、部分的に改修工事が行われてきた。崩落した100メートルほど
中国共産党の秘密主義は国家機密の定義が非常に曖昧かつ広範なのが特徴だ[2024年3月5日、北京で開幕した全人代で政府報告を聞く習近平総書記=中国・北京](C)XC2000/shutterstock.com 「あいつはバカだからさ」 こうしたストレートな習近平総書記批判を耳にする機会が増えた。コロナ対策では爆発的な感染拡大が起きた後、もう止められないと“誰もが”わかっていたはずなのに、何カ月もゼロコロナ対策に固執した。あるいは足元の不動産危機と経済低迷では大規模な景気対策が必要だと“誰もが”わかっていたはずなのに小出しの対策で時間を浪費してしまった……となると、悪態の一つもつきたくなるのだろう。 しかし、熾烈な権力闘争を勝ち抜いて中国のトップの座を勝ち取った人物が本当に「バカ」なのだろうか。 もう少し、もっともらしい説明を持ち出すならば、「独裁者のジレンマ」という話になろうか。強力な権力を持
ネタニヤフ政権にとっては、イスラエル北部から避難している6万人以上の住民を帰還させるためにも、ヒズボラをレバノン南部のリタニ川の北まで押し戻すことが最大の課題となった。世論も6割以上が攻撃強化を支持しており、民間人を巻き込むポケベル爆破作戦などで事態をエスカレートさせているのはイスラエル側だ。一方のヒズボラは、報復しなければその存在意義が問われるというジレンマに陥っている。 イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの間の緊張が高まり続けている。双方の交戦は2023年10月8日以来続いているが、直近のエスカレーションのレベルを引き上げたのは、イスラエルであると言える。 きっかけは、レバノンの首都ベイルートなどで9月中旬に起きた通信機器の連続爆発だ。17日、ベイルート南部などでヒズボラのメンバーが持っていたとされるポケベルが多数爆発。8歳の女の子など含めて少なくとも12人が死亡し
『ナショナル・ヒストリーを超えて』が発刊された同時期、上野千鶴子氏は「つくる会」に対抗する活発な言論活動を展開していた[記者会見する東京大学の上野千鶴子名誉教授=2015年11月26日](C)時事 (前回はこちらから) 上野千鶴子の「不在」 再び『ナショナル・ヒストリーを超えて』に戻ろう。1998年5月に刊行されたこの本において、今になってみるとむしろその不在によって自らを際立たせているように見える人物がいる。坂本多加雄らのいわゆる「つくる会」の面々ではない。この時期、やはり「つくる会」に対抗する活発な言論活動を展開していた人物――上野千鶴子である。 その一年ほど前、1997年9月にシンポジウム「ナショナリズムと『慰安婦』問題」が開催された。『超えて』にも論考を掲載していた高橋哲哉・徐京植が登壇するパネルセッションに先立って冒頭に開催されたのが、他ならぬこの上野千鶴子と歴史家・吉見義明の「
諸葛孔明や元寇などがどうとらえられ、活用されているかは中国人の歴史感覚を知る大きなヒントだ[東京電力福島第一原発の処理水放出が始まった昨年秋、中国人民抗日戦争記念館前を中国国旗を手に歩く子どもたち=2023年9月3日、中国・北京](C)時事 今年9月18日、中国広東省深圳市で日本人学校に通う10歳の男児が男に刺されて命を落とす痛ましい事件があった。発生したこの日は満洲事変の記念日で、中国政府側の説明はなされていないものの中国国内の反日感情が関係していた可能性が高い。奇しくも同日に新著『中国ぎらいのための中国史』(PHP新書)を刊行した安田峰俊氏が、事件の背景と中国人の歴史観について解説する。 *** 現地に滞在する日本人には「常識」だが、日本国内の一般人はほぼ意識していない中国のタブーは多い。その最たる例が「日付」だ。かつて盧溝橋事件が起きた7月7日、満洲事変(柳条湖事件)が起きた9月18
台湾では陸軍3個師団と2個旅団に加え、220万人の予備役を動員する計画が進行している[市街戦を想定して行われた台湾陸軍の訓練=2022年1月6日、台湾南部・高雄](C)時事 日米台など守る側の視点から台湾有事にアプローチする優れたシミュレーションは多いものの、中国側の視点――特に「上陸してから制圧するまで」に注目する分析は比較的手薄だ。地理的条件や戦力リソースなどの前提条件を踏まえると、軍事的には中国にとって非常に困難な作戦となることが浮かび上がる。最終的にはいかに困難な任務でも国家主席の決心次第だが、より蓋然性の高い主戦場として「封鎖作戦」「認知戦」のドメインを想定する必要性が示唆されている。 2024年7月18日、読売新聞に「中国軍、海上封鎖から台湾上陸『1週間以内で可能』と日本政府分析…超短期戦への対応焦点に」という記事が掲載された。同記事によると、中国軍は最短1週間で地上部隊を台湾
西尾のナショナリズムは、「天皇制度」を「国体」の本質に置く坂本多加雄とは異質な発想によっている[教科書の採択結果を受けて記者会見する「新しい歴史教科書をつくる会」の西尾幹二会長。同会長は文部科学省に採択の遣り直しを求める声明を発表した=2001年8月16日、東京都港区の虎ノ門パストラル](C)時事 (前回はこちらから) 天皇がいない『国民の歴史』 日本国憲法を否定せず、それどころかそれが定める象徴天皇制度を日本の伝統的な「国体」によって基礎づけようとする坂本の立場は、「改憲派」であることを自明の前提として来た右翼・保守と、「護憲派」であることを自明の前提としてきた左翼・革新の対立という既存の枠組みには収まらないものであった。それが『超えて』側の人々から見れば「厄介さ」のゆえんであっただろうことはすでに述べた。他方、既存の右翼・保守にとっても、それはにわかに飲み込みがたい主張であった可能性が
表には一切名前を出さないまま、600億円近い予算が動く国家プロジェクトの“エグゼクティブ・アドバイザー”として活動する伊藤穰一氏[2018年12月19日撮影](C)時事 伊藤穰一氏は2021年に発足したデジタル庁の事務方トップへの起用が土壇場で撤回された人物だ。性犯罪者から資金提供を受けていた過去を当時の菅首相が問題視したためだが、岸田首相が力を入れる「グローバル・スタートアップ・キャンパス構想」の実質的トップにまたもや伊藤氏が起用され、連携相手である米MITから「NO」を突きつけられた上、ハーバード大からも疑問の声があがったという。 2023年5月、広島G7サミットのために来日したジョー・バイデン大統領との日米首脳会談で、岸田文雄首相は「グローバル・スタートアップ・キャンパス(GSUC)構想」について熱弁を振るい、同構想実現に向けて両国が緊密に連携することを確認した。 GSUCとは、20
加熱式タバコ「IQOS(アイコス)」で知られるタバコ企業フィリップ・モリス・インターナショナル及び日本子会社フィリップ・モリス・ジャパンと、日本の二人の研究者の癒着を告発する報道が欧米で注目を集めている。告発者は、エボラ出血熱流行の際に医師免許を持つ異色の外交官として「国連エボラ緊急対応ミッション(UNMEER)」に派遣されたこともある小沼士郎氏だ。特に京大教授のケースは、フィリップ・モリス・ジャパンから資金提供を受けていることを明示せず加熱タバコの安全性に関する論文を発表しており、医学界での明白なルール違反だと言える。 11月16、17日の2日間、東京都港区の建築会館で「現場からの医療改革推進協議会シンポジウム」を開催する。私と鈴木寛・東京大学公共政策大学院教授が共同で事務局を務め、医療に関わる当事者が参加し、様々な問題について議論する集まりだ。2006年に始まり、今年で19回目を迎える
自然環境の中でプラスチックごみが分解されるには何十年もかかる。これを効率的に進める菌は確かに一部で有効だが、やはりごみを減らす以上の対策はないようだ。そもそも菌類はなぜプラスチック分解能力を獲得したか、そしてなぜ根本解決にはならないのか。 [ドイツ・ノイグロープゾー発/ロイター]ドイツの科学者たちがプラスチックを食べる菌類を特定した。地球では毎年、何百万トンものプラスチックごみが海へと流れている。世界各地の研究者はプラスチックごみ問題の解決に挑んでいる。 ドイツ北東部のシュテヒリン湖で行われた調査では、微小な菌類が、一部のプラスチックだけを糧によく育つ様子が確認された。これにより、一部の菌類が合成ポリマーを分解できることが示された。 ライプニッツ淡水生態学・内水面漁業研究所の研究グループを率いるハンス=ペーター・グローサート氏は、ロイターTVに対し「我々の研究で最も驚くべき発見は、菌類がい
イスラエルのネタニヤフ首相(左)と会談したハリス米副大統領は、イスラエルの自衛への強い支持を表明した上で、ガザでは「あまりにも多くの罪なき市民が死んでいる」と批判した[2024年7月25日、アメリカ・ワシントンDC](C)REUTERS/Nathan Howard ハリス副大統領の政治スタンスは、しばしば「曖昧」と評される。民主党候補として大統領選を戦う上で、それはトランプを批判しつつバイデンとの違いをアピールできる戦略的資産になり得るが、同時に支持者の失望と怒りに結びついてしまうリスクもある。そうしたハリス最大の難所はイスラエル政策なのではないか。ハリスのイスラエル擁護には、これまで「信念」と呼ぶべき熱が込められてきた。一方でガザの犠牲者が4万人に迫る中、ハリスに対してイスラエル支援からの脱却を期待する声も強い。ハリスはこの局面を乗り越えられるか。 1. 勢いづくハリス陣営 米大統領選か
テレビや新聞など伝統的なメディアの信頼性を維持しつつ、時代に適応したジャーナリズムのあり方を模索する必要がある (C)wellphoto/shutterstock.com ジャーナリズムの危機が叫ばれて久しいが、原因はどこにあるのか。米メディア界の精鋭たちが真剣な議論を重ね、いつの時代も変わらないジャーナリズムの「10の原則」を導き出し、今後のジャーナリズムとメディアのあるべき姿を提示したのが『ジャーナリストの条件 時代を超える10の原則』(ビル・コバッチ、トム・ローゼンスティール著/澤康臣訳)だ。ジャーナリズムを学ぶための基本書として世界中で読まれ、何度も改版して内容を磨き上げている。今回翻訳された最新第四版では、インターネットやSNSの普及によるメディア環境の劇的な変化も捉え、日本のメディアにとっても示唆に富む。政策とメディアを専門とし、最近では「エモい記事」批判でも注目を集めた日本大
パリ・オリンピックで金メダルの有力候補とされる日本人選手の一人が、女子やり投げ世界王者北口榛花だ。指導者を求めてチェコの地方都市に移住し、五輪に向けてひたすら練習の日々を送る北口を、地元旭川で競技を始めた高校時代から知るジャーナリストが訪ねた。(北口選手の出場する陸上女子やり投げは、日本時間8月7日予選、11日決勝) *** 5月下旬、女子やり投げで世界の頂点に立つ北口榛花(26歳)の姿は、チェコの片田舎にあった。 「オリンピックでは、『金メダルが獲れたらいいな』くらいにしか思っていないです。獲りたいと思って獲れるものでもない。もちろん試合になったら『獲りたい』という気持ちになるので、そこまでの過程はある程度、余裕を持って『獲りたいな』くらいの気持ちで行きたいです」 北口の名前を世界に知らしめたのは、去年8月にハンガリーのブダペストで行われた世界陸上選手権だった。自身の最終投擲をメダル圏外
総選挙で新人民戦線の勝利が確定的になるや、すかさず記者会見を開いたメランション氏。だが彼は国民議会議員でも「不屈のフランス」の党首でもなく、もちろん新人民戦線の代表でもない[2024年7月7日、フランス・パリ](C)AFP=時事 与党連合との連携が奏功し、議会最大勢力となった左派左翼連合「新人民戦線」も早々に迷走を始めている。総選挙直前の欧州議会選挙で躍進した社会党は主導権を握れず、左派内での主導権奪還を狙う「不屈のフランス」のジャン=リュック・メランション氏のスタンドプレイは、外国メディアの報道にも少なからぬ影響を与えている。新人民戦線で浮上する次期首相候補はすぐさま内部対立で消えて行く。現在の左派の議論は事実上、左派と与党連合が連携し「不屈のフランス」を切り捨てるまでのポーズに過ぎないと見るべきではないか。[現地レポート] フランスで、右翼「国民連合」、左派左翼連合「新人民戦線」、大統
高田馬場の不動産業者は、中国人経営の店舗は今後も増えると予想する(C)moonrise/stock.adobe.com JR山手線の高田馬場駅周辺では、中国人向けに本場の味を提供する「ガチ中華」の店が目立って増えた。近隣の早稲田大学に中国人留学生が増えたほかにも、治安が良く住みやすいという高田馬場の地域性が影響しているという。海外から日本国内に移り住む人々の暮らしが、日本の風景を変えつつある。ノンフィクション作家の中原一歩氏は、近著『寄せ場のグルメ』(潮出版社)で高田馬場における中国料理店の歴史を繙いた。 *** 夕方5時。JR高田馬場の駅前は騒然となる。早稲田大学をはじめ、駅周辺にある日本語学校、専門学校の授業が終わり、そこに通う各国の留学生が、一気に駅の構内になだれ込むのだ。日本語は全く聞こえてこない。飛び交うのは韓国語、ベトナム語、タイ語、台湾語、そして、中国語。朝夕の2回、高田馬場
「つくる会」のかかげる「健全なナショナリズム」は左派側の「国民的歴史学」運動との類似性も持っていた[教科書の採択結果を受けて記者会見する「新しい歴史教科書をつくる会」の(右から)高森明勅事務局長、中島修二理事、藤岡信勝理事、西尾幹二会長、田中英道理事、小林よしのり氏=2001年8月16日、東京・港区の虎ノ門パストラル](C)時事 (前回はこちらから) 先回りして提出された批判 手元に『ナショナル・ヒストリーを超えて』(以下『超えて』)という本がある。小森陽一と高橋哲哉の二人の手になる編著書で、執筆者は総勢18名。東京大学出版会から1998年5月刊行。小森陽一と高橋哲哉は当時、東京大学教養学部(通称:駒場)の教員であった。その関係であろう、執筆者のなかにはその時点で東京大学に在職している研究者が散見される。とはいえ、執筆者が東京大学関係者に限られているわけではない。また執筆者の専門とする研究
10月8日、ドイツの大手メディアはイスラエルの国旗を掲げて「全面的な連帯」を表明した(アクセル・シュプリンガーのXより) ドイツの大手メディアはイスラエルに批判的な報道をする際、「反ユダヤ主義」の烙印から逃れるためにフリーランスのジャーナリストを使うと、あるジャーナリストは指摘した。ガザから移住した元ジャーナリストは、多くの中東出身者が信じたドイツの言論の自由は「フェイクだった」と批判する。「ドイツ人はイスラエルが何をしようと決して批判しない」との不文律が「国是」と結びついたドイツで、メディアは深刻なジレンマを抱えている。 2023年10月7日、イスラム組織ハマスのテロ攻撃によって、イスラエルで1200人が死亡すると、ドイツ最大級のメディア企業アクセル・シュプリンガーは次のような声明を出した。 「テロ組織ハマスによる10月7日のイスラエル攻撃により、数百人の市民が死亡し、数千人が負傷したこ
トルコ南東部ガズィアンテップ市から車で1時間ほどのヒュリエット村の小学校では、子供たちが日本語で話しかけてきた(以下、写真はすべて筆者撮影=2024年5月29日) 2000~3000人と言われる日本在留クルド人には、母国での政治的迫害を理由に難民申請する人も多い。故郷でどのような暮らしをしているのか、迫害の実態はどのようなものなのか。トルコ南東部ガズィアンテップ県をはじめ、クルド人たちの故郷の村々を取材した。 埼玉県南部川口、蕨市では、ここ数年、在留クルド系トルコ人(以下クルド人)の数が増えるにつれて、特に若年層のクルド人による車の暴走行為、騒音、コンビニ周辺での「たむろ」などの迷惑行為が問題化し、暴行、窃盗などの犯罪も起きている。これに対して、主に地元外からやってきた人々による、明らかに排外主義的なデモが川口駅前で行われるなど、やや騒然とした雰囲気になっている。 彼らが日本に在留する理由
ジャーナリストで作家のシャルロッテ・ヴィーデマン氏は、ドイツ国内ではイスラエルをめぐって自由な発言が難しい風潮があると指摘する(筆者撮影) 昨年10月7日のハマスによるテロ攻撃の発生を受け、ショルツ首相は「イスラエルの安全保障はドイツの国是」と明言した。その「国是」の源流には1990年代のコソボ紛争がある。戦後初の国外軍事介入に踏み切った当時のフィッシャー外相は「二度とアウシュビッツをつくらない、二度とジェノサイドをしない」と発言し、このコンセプトは2008年のメルケル首相の演説によって初めてイスラエルとの関係に適用された。しかし、連邦議会では今に至るまで「国是」をめぐる議論は行われていない。 2024年5月下旬、ドイツの首都ベルリンの一角で、現地のユダヤ団体がパレスチナに連帯を示す行事を開催した。主催したのは、リベラル系のユダヤ団体「Jüdische Stimme(ユダヤの声)」だ。会場
徴兵対象年齢が引き下げられ、人々はウクライナの兵力不足と苦戦を否応なく意識している。しかし一方、街の復興と「正常化」は、ロシア軍侵攻当初に人々を結び付けた国家防衛の一体感を次第に薄れさせて行く。希望の底に重苦しさが蟠る日々、「誇り」は減じ「悲しさ」や「恐れ」が膨らみ始め、そうした状態に慣れるにつれて、かつての汚職や政争が頭をもたげているという。【現地レポート】 前回筆者がウクライナに滞在した2022年12月~23年1月の冬は、ロシア軍による電力施設攻撃が集中して停電が多く、首都キーウは暗闇に包まれていた。ロシア軍の侵攻当初に比べると人が戻っていたものの、一部の商店や飲食店は閉まったままで、市民が生活を謳歌する状況にはなかった。 今回、街の賑わいぶりは明らかに異なるレベルである。店は軒並み開き、中心街ではショッピングを楽しむ市民が目立つ。ミサイルやドローンによる攻撃を知らせる警報は毎日のよう
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