「業務に精通し、自ら手を動かせる技術者」。これは日本のIT業界やユーザー企業のIT部門などで長らく理想形とされた技術者像だ。要は、システム化の対象となる企業や行政機関の業務を熟知し、プログラミングもきっちりこなせる技術者のことだ。だが、これって本当にそうか。異を唱えにくい「正論」に思えるが、よくよく考えると、アホウとしか言いようのない思い込みだな。その結果、日本では「文系技術者」が量産されることとなった。 実はこれ、ユーザー企業のIT部門と人月商売のIT業界における、ある種の「緊張関係」から生まれた技術者の理想像なのである。緊張関係とはこうだ。ユーザー企業のIT部門やSIerは「(利用部門や客の)業務に精通していることが技術者にとって重要だ」と連呼してきた。利用部門などのご用を聞いてシステムをつくるのが、彼ら/彼女らの本分だから当然といえば当然だ。ただその分、自ら手を動かすのがお留守になる