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柳谷智宣の「簡単すぎて驚く生成AIの使い方」 第10回

営業先や業界の調査に生成AIを使わない手はない! 新規顧客獲得に効果を発揮する検索特化型AIとは?

2025年03月18日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 本連載は生成AIをこれから活用しようとしている方たちのために、生成AIの基本やコピペしてそのまま使えるプロンプトなどを紹介。兎にも角にも生成AIに触り始めることで、AIに対する理解を深め、AIスキルを身に着けて欲しい。第10回は新規顧客獲得する前に営業先や業界に関する調査を生成AIで行う方法について解説する。

営業先やその業界の知識は検索特化型生成AIを使おう

 営業が新しい営業先を開拓する際、最低限は相手に関する知識が必要になる。とはいえ、○○業界とは、と検索してもぴったりのウェブページが見つかるとも限らない。いろいろと調べたとしても、限られた時間の中では抜け漏れが出るのは当然だ。そこでお勧めなのが検索特化型の生成AIサービスだ。今回は、国産の「Felo」を紹介する。

 ChatGPTにも検索機能はあるのだが、やはり企業や業界を検索するならリアルタイム検索に強い「Felo」や「Perplexity」といった専門サービスの方が使いやすいのだ。

 「Felo」は有料プランもあるが、無料でも利用できる。アカウントなしでも利用できるものの、機能が限定されるので、アカウントを登録しよう。メールアドレスで登録してもいいし、GoogleやAppleのソーシャルログインも利用できる。

Pro機能を使うためにアカウントを登録しておく

 使い方は、一般的な生成AIと同じで、ホーム画面中央のフォームにプロンプトを入力すればいい。いろいろなオプション機能があるのだが、まずは、単に営業先企業について質問してみよう。教えて、だけ入力してもいいし、欲しい情報があるならできるだけ指示しておくといい。

 例えば、今回は角川アスキー総合研究所について営業職として知っておきたい情報を教えてもらった。あっという間に68ものソースを確認し、本社住所から概要、特徴などをレポートしてくれた。

 口コミでは、人間関係が良好だが、残業が多い、という声があるなど、リアルな情報が手に入るのがすごい。このあたりはChatGPTではまだ対応できていないところだ。

 そして、営業のフックにもなる抱えていそうな課題を考えてもらったのだが、人材の流出や競争の激化、業績の安定性などをリストアップしてくれた。確かにそうかもしれない。この切り口で、営業トークや商材を準備していくと、話を聞いてもらえる可能性は高くなるだろう。


■プロンプト
私は営業職です。株式会社角川アスキー総合研究所に伺う際に、場所や企業概要、特徴、口コミ、そして抱えていそうな課題など、私が知っておくべき情報を包括的に具体的に教えてください

角川アスキー総合研究所について、営業が知っておくべきポイントをまとめてもらった

業界の市場動向もレポートとしてまとめられる

 もっと業界全体の情報をインプットしておきたい、というのであれば「」機能を利用する。包括的なレポートを作成するAIエージェント機能で、基本的なお勧めテンプレートが用意されている。今回は、「業界専門調査レポート」を選び、総合出版社についてのレポートを作成してもらった。


■プロンプト
コンシューマ向けの総合出版社の現状と市場動向

 数分で8ステップの処理が進行し、283個のウェブページを調査し、1万8373文字ものレポートを作成した。出力には参照元が記載されているので、ファクトチェックも行える。

「検索元」メニューから「Felo Agent」を選択する

推論手順の計画が表示されるので問題なければ「実行」をクリック

 読んでみると、様々な角度から業界分析が行われており、実績の数値などもしっかり入っている。KADOKAWAを含めた企業分析もあるし、3C分析、リスク分析なども行われている。

 生成AIがない時代に同様のレポートを書くなら、1日や2日で終わる仕事ではない。これが、タダで数分で手に入るのだから時代が大きく変わっているのを実感する。

詳細な業界レポートが生成された

 1万8000文字のレポートを読む時間がない、というのであれば右上の「…」メニューからマインドマップやPowerPointファイルに変換することもできる。

 マインドマップは項目が図解されるので、ざっくりと内容を把握するのに役立つ。まずは、マインドマップで概要を理解してからレポートを読むと、頭に入りやすくなるだろう。

 PowerPointのスライドにしてくれるのも凄い機能だ。デザインもいい感じだし、画像も入れてくれる。ただし、ちょっと資料としてはまだクオリティが低い。自分で読み流して勉強する用途であればいいが、今のところ外部に提出するのは難しいだろう。

マインドマップにまとめる

PowerPointファイルに仕立てる

営業先の課題がわかればアプローチに役立つ

 営業先の企業や業界に対し、自社がどんな価値を提供できるのかについてAIに考えてもらうのもありだ。単に検索するだけでなく、もう少し高度な回答が欲しい場合はプロフェッショナル検索機能を利用しよう。ユーザーが入力したプロンプトに対し、もっとも関連性の高い多様な情報源をチェックする機能だ。

 プロ検索を行う際は、フォームの「Pro」スイッチをオンにする。AIモデルの選択メニューが現れるので、回答を生成して欲しいモデルを選ぼう。複雑な内容であれば推論できる「o3-mini」、クオリティの高い出力が欲しいなら「Claude 3.7 Sonnet」を選ぶといいだろう。

 今回は、中小企業のDXが遅れている課題に対し、メディアが解決するためのヒントを考えてもらった。8個のサブクエリで58のソースを調査して、2161文字の回答が生成された。

 DXが遅れている理由や課題、解決方法を調べたあと、IT系出版社ができることとして、「実践的なDX導入ガイドの出版」や「業種別DX成功事例集の制作」「デジタルリテラシー向上のための教材開発」「DX診断ツールの提供」「経営者向けDXセミナーの開催」「DX推進のためのコミュニティ形成」「低コストで始められるDXソリューション紹介」などをリストアップし、それぞれを解説してくれた。

 それぞれ、詳細な情報が欲しいなら、またFeloで調べてもいいし、商材を作りたいならChatGPTに作ってもらってもいい。


■プロンプト
日本の中小企業のDX化が遅れている理由とその解決方法について包括的に調査し、IT系出版社がその課題を解決するためにできることを可能な限り具体的に教えてください。

プロンプト入力時に「Pro」スイッチをオンにして、利用するAIモデルを選ぶ

さらに詳細な検索情報を元に回答が生成される

 プロ検索は有料プランでは1日に最大300回のプロ検索が可能。無料プランでも最大5回まで利用できるのがうれしいところだ。ここぞ、という時に利用しよう。

 以上が、営業に行く前に検索生成AI「Felo」で業界や企業の調査をする方法となる。ChatGPTだけが生成AIではないので、用途に合わせて賢く使い分けて、ビジネスを効率化していこう。

AIで何とかしたい業務を大募集!

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