先週末のことだ。何気なくネットサーフィンをしていたら、「ある特定のコマンドをブラウザ上で入力すると、増田に隠された“裏技”が見られるらしい」という噂を目にした。いわゆるイースターエッグのようなものに違いない。私はこういうちょっとした秘密を見つけるのが大好きで、子供の頃からファミコンやスーパーファミコンの裏技を片っ端から調べては試してきたものだ。しかもそのコマンドが、かの有名なゲームで使われていた伝説の“あのコマンド”らしいというのだから、ますます興味が湧いてしまった。
昔、アクションゲームを遊んでいた人ならきっとピンとくるだろう。そう、「↑↑↓↓←→←→BA」という、世界で最も有名な裏技コマンドの一つだ。あのコマンドを入力すると何らかの変化が起きるというのは、レトロゲームファンならお馴染みの話だが、それが今になって、よりにもよって増田のブラウザ表示画面に仕込まれているというのだ。これは確かめるしかない。
私は興奮半分、不安半分のままブラウザを開き、増田のとあるページを表示してみた。見慣れたUIがそのままそこにある。まずは落ち着くためにコーヒーを一口飲み、何が起きても対応できるように準備を整える。次にキーボードを握りしめ、いつもの“あのコマンド”を試しに入力してみた。――「↑↑↓↓←→←→BA」。入力し終えた瞬間、私は思わず画面に目を凝らす。しかし、最初は何も変化がなかった。
「噂はデマだったのか?」そう思って肩を落としかけたとき、ふいに画面の右下あたりからポップアップのようなものがひょっこり飛び出してきた。ポップアップといっても、一般的な広告バナーではない。まるで小さな吹き出しのようなウィンドウがすっと現れて、そこに何か短いメッセージが書かれているではないか。そこにはこうあった。
「よく気づいたな、ゲーマーよ。さあ、次はどこへ向かう?」
突然現れたメッセージにドキリとしたのと同時に、テンションが一気に高まった。たしかにこれはイースターエッグだ。おそらく製作者が遊び心で仕込んだものに違いない。しかもそこには、もう一度そのコマンドを入力したくなるような不思議な言葉が並んでいた。私は思わずもう一度同じコマンドを入力してみる。すると、今度は背景の色がほんの少しだけ変化して、上部のタイトル部分に謎のアイコンが一瞬だけ点滅してみせたのだ。
これだけでは終わらない。さらなる驚きはその後やってきた。なんと、裏技入力の累計回数によって表示されるメッセージや画面の演出が変わる仕組みらしい。たとえば5回目に試すと、最初の吹き出しのテキストがちょっと違った文言に変わっている。10回、20回と回数を重ねるうちに、背景やアイコン、あるいはリンクの色までもが段階的に変化していく。しかも、その変化はちょっとしたジョークやパロディ要素を含んでいて、見るたびにクスッと笑えるような仕掛けになっているのだ。
ここまで見せられると、裏技というよりもはやアトラクションのようで、ユーザーを楽しませるための“おもちゃ”と言ってもいいかもしれない。いったい誰がこんな裏技を組み込んだのかはわからないが、少なくとも普通にページを使っているだけでは絶対に気づかない。ゲームの秘奥を突き止めるかのように隅々まで調べ、あの伝説的なコマンドを試してみた人だけが知ることのできる特別な体験だ。ネットの深いところには、まだまだこんな遊び心に満ちた宝物が眠っているのかもしれない。
さらに面白いのは、この裏技の存在を確かめようとした人たちが秘密めいたコミュニティを作り出している、という事実だ。実際にSNSを覗いてみると、増田の裏技について呟いている投稿が散見される。あくまでオープンな場所に書かれているのだが、なぜか詳細を語る人は少ない。みんな口をそろえて「自分で見つけてほしい」「ネタバレはしない」とだけ言うのだ。それはまるで、かつてのゲーム雑誌が見つけにくい裏技についてあえて濁して載せていたような、わくわく感を煽るやり口に似ている。
こんなふうに、誰もがアクセスできるウェブ上でありながら、あえて多くは語られない秘密が隠されているのは実にロマンがある。普通にインターネットを使っているだけでは見えてこない小さな仕掛けが、実は潜んでいるかもしれない――そう思うだけで、私たちはほんの少しだけ“探検者”になれる気がしないだろうか。
もっとも、裏技を発見したからといって実利があるわけではない。ゲーム内の隠しコマンドとは違って、新しいモードが解放されたり、アイテムを大量にゲットできたりするわけでもない。しかし、誰も気づかないかもしれない秘密を突き止め、その証拠を見届けるという行為には、計り知れない満足感が伴う。まるで宝探しのように、自分だけがその場所にたどり着けたという優越感もあるだろう。これこそイースターエッグの醍醐味と言える。
今回の「増田の裏技」のように、何気なく見ている日常の画面が不意に変化する瞬間は、いつになっても心を躍らせてくれる。ふと気づいたら、もう一度コマンドを入力して微妙な変化を確かめたくなってしまう。ゲームの世界と違って死んだりミスしたりもしないから、純粋に試行錯誤できるのも嬉しいところだ。「もしかしたら、もう一段階深い仕掛けがあるのでは?」と想像を膨らませ、繰り返しコマンドを入力してしまう。ある種の中毒性すらある。
そして何より、この裏技は誰かとのコミュニケーションを生む可能性がある。おそらくこのイースターエッグを仕込んだ人は、ユーザーが気づいたときの反応を想像して楽しんでいるに違いない。さらに、その発見者同士がSNSや掲示板などで「こんなの見つけたよ!」と話題にし合う。その繋がりが、また次の発見を誘発し、新たな遊びを生み出す。そうやっていつの間にかコミュニティが形成され、ただの“隠しコマンド”が、ちょっとした文化のように大きく育っていくのだ。
もしまだこの裏技を試していないのなら、ぜひやってみてほしい。増田のページを開き、キーボードで「↑↑↓↓←→←→BA」と、あの懐かしのコマンドを入力するだけだ。何も起きないかもしれないし、あるいは思いがけないメッセージが飛び出すかもしれない。運が良ければ、何度も試すうちに、あなたの知らない新たな表情を見せてくれるだろう。どんな仕掛けが待っているのかは、実際にやってみるまでわからないのだから。
まるで子供の頃に戻ったかのように、どきどきしながらコマンドを入力してみる。その瞬間こそが、秘密を解き明かそうとする冒険の始まりだ。私たちはデジタルの世界における“探検者”として、日常の画面の裏側に隠された可能性を見出す。そこには確かに魅力がある。とびきり地味だけれども、驚きと喜びをもたらす仕掛けがある。あなたももし、この「増田の裏技」をまだ知らないなら、ぜひ一度試してみてはいかがだろうか。案外、ブラウザの向こうにはあなたを待つ小さな“発見”が隠されているかもしれないのだから。