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借金があると離婚の財産分与はどうなる? 折半? 誰が負担する? 弁護士が解説

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夫婦に借金があった場合、離婚時には誰がどれだけ負担するのでしょうか(c)Getty Images
離婚時に夫婦の共有財産を分け合う財産分与は、離婚後の生活を左右する重要な手続きです。夫婦の間に家や車などのプラスの財産だけでなくローンの返済を含む借金があった場合、どのように財産分与を行えばよいのでしょうか。借金は折半するのか、そうでなければ誰が負担するのかなど、弁護士が詳しく解説します。
目 次
  • 1. 財産分与とは
  • 2. 借金は財産分与の対象になる?
  • 2-1. 財産分与の対象になる借金
  • 2-2. 財産分の対象にならない借金
  • 2-3. 自営業者の借金はケースバイケース
  • 3. 借金の財産分与(分担)は拒否できる?
  • 4. 借金がある場合の財産分与の方法
  • 5. 離婚成立後、借金は誰が返済する?
  • 6. 借金しかない場合、財産分与はどうすべき?
  • 7. 借金の財産分与について弁護士に相談するメリット
  • 8. 借金の財産分与に関してよくある質問
  • 9. まとめ|離婚後の生活のために、財産分与は弁護士に相談を
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1. 財産分与とは

財産分与とは、結婚生活を通じて夫婦が協力して築いた財産を、離婚する際に公平に分けることです。夫婦共有名義の財産だけでなく、どちらか一方の名義でも、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産であれば財産分与の対象となります。

財産分与の割合は、原則として2分の1ずつ です。「専業主婦(夫)で稼ぎがなかったから、財産分与はしてもらえない」と誤解されることもありますが、夫婦の一方が専業主婦(夫)であったとしても、財産分与の割合は原則として2分の1です。家事労働や育児などのいわゆる「内助の功」によって財産の形成に寄与したと言えるから です。

財産分与は、離婚時に夫婦で話し合って合意すれば成立します。話し合いで合意できない場合は、離婚前であれば家庭裁判所に夫婦関係調整調停(離婚調停)を申し立てる際に、「付随申立て」として財産分与も一緒に請求することが可能です。

また、離婚後でも離婚成立から2年以内であれば財産分与請求ができます。話し合いでお互いに合意できれば、その内容に従って財産分与を実施します。話し合いによる解決が困難な場合でも、離婚成立から2年以内に財産分与請求調停を家庭裁判所に申し立てれば、調停や審判の期間中に2年が経過しても財産分与を取り決めることができます。

2. 借金は財産分与の対象になる?

結婚生活で得た財産は財産分与の対象となりますが、そのなかに借金(=債務)があった場合、財産分与の対象になるケースは少なくありません。

2-1. 財産分与の対象になる借金

財産分与の対象となる借金は、以下のとおりです。

  • 日常家事債務(生活必需品の購入、水道光熱費の供給契約、住居の賃貸契約、家族の医療費、家族の保健医療、子どもの教育に関する法律行為から生じる債務)

  • 夫婦共同生活の維持のために生じた債務

  • 婚姻後の資産形成や維持に関連して生じた債務(住宅ローン、自動車ローン、リフォームローンなど)

日常家事債務の「日常家事」とは、それぞれの夫婦が共同生活を営むうえで日常的に必要な物品の購入や契約などを指すため、「日常家事」の具体的な範囲は、夫婦の社会的地位、職業、資産、収入などによって異なります。そのため、何が財産分与の対象になるかは、それぞれの夫婦の事情を考慮して判断します。

2-2. 財産分の対象にならない借金

すべての借金が財産分与になるわけではありません。以下の借金は原則として財産分与の対象になりません。

  • 婚姻前にした借金

  • 個人的な趣味のためにした借金

  • ギャンブルを原因にした借金

  • 親族に融資するためにした借金

  • 自身が経営する会社のためにした借金

  • 離婚を前提とした別居後にした借金

ただし、婚姻前にした借金でも、婚姻中に協力して得たお金を返済にあてていた場合は、その協力した分を財産分与で考慮すべきとされています。

2-3. 自営業者の借金はケースバイケース

自営業者の借金が財産分与の対象になるかどうかは、ケースバイケースです。自営業者の多くは事業の運転資金として借金をしますが、事業のための借金は財産分与の対象になりません

夫婦の一方または双方が経営に関与する法人会社がある場合、法人と夫婦個人とは別人格であるため、法人名義の借金は原則として財産分与の対象になりません。

一方、個人事業主の場合は、事業資金とプライベートの資金の線引きがあいまいなため、区別しづらくなりがちです。そのため、借金の目的が事業の運転資金なのか、夫婦の共同生活のためなのかをはっきりと区別できるようにしておくことが重要です。判断に迷うケースの場合は、弁護士に相談したほうがよいでしょう。

3. 借金の財産分与(分担)は拒否できる?

財産分与を行う以上、預貯金や不動産などプラスの財産である「積極財産」だけを受け取って、借金などマイナスの財産である「消極財産」の分担を拒否することは、基本的に認められません。

夫婦の共有財産に積極財産と消極財産が両方ある場合には、原則として積極財産の総額から消極財産の総額を差し引いた残額を財産分与の対象 とするからです。

夫婦間の話し合いや調停で財産分与を検討する場合には、いずれか一方が借金を負担することで合意する可能性もありますが、審判や判決で解決を図る場合には、借金は夫婦で分担するという結論になるケースがほとんどです。

4. 借金がある場合の財産分与の方法

借金がある場合、財産分与は以下の手順で進めます。

【STEP1】
積極財産と消極財産をリストアップする。

【STEP2】
積極財産の総額から消極財産の総額を引いてプラスになるか確認する(この時点でマイナスになる場合は財産分与を行わない )。

なお、消極財産(=債務)がある場合の原則的な計算方法は以下のとおりです。

夫婦共有財産=(夫の資産 ー 夫の負債)+(妻の資産 ー 妻の負債)

【STEP3】
【STEP2】の結果がプラスになったら、そのプラス部分を夫婦で2分の1ずつ分ける(ただし、話し合いで合意できれば、これ以外の割合で分けてもよい)。

たとえば夫の預貯金が3000万円、妻の預貯金が1000万円、夫名義の借金が1000万円あったとします。その場合、以下の計算で財産を算出します。

(夫の預貯金3000万円-夫名義の借金1000万円)+妻の預貯金1000万円=3000万円

この場合、借金を夫婦の財産の合計が上回り、財産分与の対象となるのが3000万円です。これを夫婦で2分の1ずつ分けます。

借金があるときの財産分与に関する図解
借金があるときの財産分与を図解。積極財産から消極財産を引いた額を原則として2分の1ずつ分ける

5. 離婚成立後、借金は誰が返済する?

借金は、基本的に借りた人(債務者)が返済 します。お金を貸している債権者の承諾なく債務者の変更はできないからです。そのため財産分与として借金を分担する場合は、2人の間で金銭のやりとりをして清算し、債権者へは借りた本人が返していく流れになります。

たとえば、夫名義の3000万円の預貯金と夫名義の1000万円の借金がある場合、離婚後も夫が借金の返済を続けることとなります。この場合、財産分与の対象となる夫婦共有財産は2000万円(預貯金3000万円-借金1000万円)となります。夫は妻に対して、その2分の1である1000万円を金銭で分与しますが、実質的には夫は自己名義の預貯金のうち2000万円を取得するため、借金1000万円を返済しても手元に1000万円が残ります。このように、離婚後の資産額が最終的に均等になるように財産分与額を調整します。

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6. 借金しかない場合、財産分与はどうすべき?

夫婦に借金しかない場合、借金だけを分担する財産分与が求められるかどうかについては、見解が分かれています。

積極財産がなく借金しかない場合や、住宅ローンなどの残債が積極財産を上回ってしまうオーバーローンの場合、現実のケースでは財産分与は行わないというのが実務上の考え方です。実際に、債務のみの財産分与を認めた判例はほとんどありません。

なぜなら、債務は金融機関などの債権者に対して返済する義務があるものであり、債権者の承諾なく裁判で夫婦どちらかの債務をもう一方に肩代わりさせることはできないと考えられているからです。さらに、多くの債務を負担している配偶者は、通常収入も多いと考えられるため、もう一方の配偶者に均等に債務を負担させるのは不公平だとの指摘もあります。

一方で、財産分与は婚姻中の財産関係の清算であるという観点から、住宅ローンなど夫婦の共同生活のための債務は、2人の関係性によっては夫婦で分担することが公平な解決につながるという見解もあります。

借金しかない場合の財産分与はケースによって結論が異なるため、弁護士に相談することをお勧めします。

7. 借金の財産分与について弁護士に相談するメリット

借金がある場合の財産分与は、弁護士に相談しながら進めるのが望ましいです。財産分与の考え方や対応などが複雑になりがちであり、自分で対処するのは容易ではありません。

弁護士に依頼することで、財産分与の対象となる財産や借金をより正確に把握できます。相手が積極財産に関する資料を開示しない場合や、財産隠しが疑われる場合なども、弁護士会照会や裁判所を通じた調査嘱託などにより、相手の財産を把握することが可能です。

弁護士であれば、対象となる財産を洗い出し、正確に評価したうえで、個別の夫婦の事情を適切に分析し、将来のリスクを想定したうえで最善の分与方法を検討できます

財産分与について少しでも疑問に思うことがあったら、弁護士のアドバイスを受けましょう。

8. 借金の財産分与に関してよくある質問

Q. 借金を隠しているが、財産分与を請求すると借金の存在はバレる?
婚姻前にした借金や個人的に負った借金は、配偶者に開示する義務はありません。配偶者から積極的に開示を求められる可能性は低いので、借金の存在が発覚するケースも少ないと考えられます。 ただし、婚姻前にした借金でも、婚姻中に協力して返済していた場合には、財産分与の清算時に考慮される可能性があります。その場合は、借金の存在を開示しないでいると財産分与の際に不利になるので注意してください。
Q. 家族カードで妻が浪費をしている場合、誰が支払うべき?
クレジットカード契約者の家族が利用できる「家族カード」の支払い義務は、契約者本人(本会員)にあります。つまり家族カードで浪費をしたのが妻であったとしても、浪費した分の支払いは、契約者である夫がしなければいけません。このようなケースでは、財産分与の際に不公平にならないよう調整が必要です。
Q. 親から相続した借金は、財産分与の対象になる?
親から相続した借金は、財産分与の対象になりません。親から相続する財産は、積極財産か消極財産かにかかわらず、夫婦の共有財産ではなく、相続した本人だけが所有する特有財産となるからです。
Q. 親からの借金は、財産分与の対象になる?
親からの借金は、財産分与の対象になる場合とならない場合があります。親から借りたお金で夫婦生活に必要なものを購入したのであれば、その借金は財産分与の対象になる可能性があります。 ただし、親からお金を借りる際に借りた事実を証明する書面を交わすことはあまりありません。そのため借金だと証明できずに贈与と判断されるケースが多いのですが、贈与は財産分与の対象外とされています。
Q. 夫の借金を肩代わりしたことは、財産分与の際に考慮される?
婚姻期間中に夫の借金を妻が肩代わりした場合、共有財産を形成するうえで妻が寄与したと判断され、財産分与の際に考慮される可能性があります。財産分与の割合は、共有財産の形成に関してどのぐらい寄与したかに応じて決められるからです。

9. まとめ|離婚後の生活のために、財産分与は弁護士に相談を

婚姻期間に夫婦で築いた財産を分け合う財産分与は、感情的な行き違いから話し合いがうまくいかないケースが少なくありません。また、財産分与は義務づけられているわけではないため、手続きの複雑さや、話し合いが面倒だからという理由であきらめてしまう人もいます。

しかし、離婚後の生活を安定させるためにも財産分与は重要です。多くの夫婦が財産だけでなく住宅ローンなどの借金も抱えているため、財産分与ができるかどうか判断に迷うかもしれませんが、資産や借金をどのように分け合うべきかはそれぞれの夫婦ごとに異なるため、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

(記事は2025年2月1日時点の情報に基づいています)

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