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1. 不倫慰謝料(不貞慰謝料)は減額できる?
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2. 不倫慰謝料を減額できるケース
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2-1. 不倫相手が別居や離婚をしていない
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2-2. 不倫相手の婚姻期間が短かったり、夫婦関係が悪化したりしていた
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2-3. 請求された慰謝料が相場よりも高い
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2-4. 不倫の態様が悪質とまでは言えない
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2-5. 不倫相手が「自分は独身」と言って誘ってきたなど、相手に非があるとき
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2-6. 自分だけに慰謝料請求がされた
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2-7. お金がない
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2-8. 既婚者同士の「ダブル不倫(W不倫)」だった
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3. 不倫慰謝料の減額を求める手続き
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4. 不倫慰謝料の減額交渉をする際のポイント
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4-1. 誠心誠意、謝罪を尽くす
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4-2. 請求額が妥当かどうかをよく検討する
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4-3. 示談書に清算条項を定める
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5. 不倫慰謝料の減額交渉を弁護士に依頼するメリット
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6. 不倫慰謝料の減額交渉に関する弁護士費用
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7. 不倫慰謝料に関してよくある質問
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8. まとめ|不倫慰謝料の減額交渉は男女問題に詳しい弁護士に相談を
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1. 不倫慰謝料(不貞慰謝料)は減額できる?
不倫慰謝料の相場は、数十万円~300万円程度であり、相場の範囲内で具体的な事情を加味して金額が決定されます。
この金額は、不倫された側からすれば低いと感じられるかもしれません。そのため、不倫相手の配偶者から請求される金額は300万円を超える金額であるケースもめずらしくありません。相場よりも高額の請求を受けた場合は、減額できる可能性があります。
2. 不倫慰謝料を減額できるケース
以下のような考慮すべき事情が認められれば、減額されるケースがあります。
2-1. 不倫相手が別居や離婚をしていない
不倫が原因で別居や離婚に至ったケースに比べ、同居や結婚生活を続けているほうが慰謝料額は少なくなる傾向があります。これは、不倫が夫婦関係に与えた影響が、離婚したケースに比べると小さいと判断されるからです。
2-2. 不倫相手の婚姻期間が短かったり、夫婦関係が悪化したりしていた
不倫相手の婚姻期間が短いケースでは、婚姻期間が長いケースに比べて慰謝料額が低く抑えられる傾向にあります。
もっとも、婚姻期間の長短は、不倫当時に夫婦関係がどれほど円満であったかをはかる要素の一つです。婚姻期間が長くても、不倫発覚前にすでに別の理由で夫婦関係が破綻しかけていたようなケースでは、慰謝料額は低く抑えられます 。
2-3. 請求された慰謝料が相場よりも高い
不倫慰謝料の相場は、不倫発覚により別居や離婚に至っているケースでは200万円~300万円程度、別居や離婚に至っていないケースでは数十万円~100万円程度 です。
不倫発覚後も同居が続いており、離婚に向けた話し合いが行われていないケースにおいて、100万円を超える金額を請求された場合は、相場より高いことを理由として減額できる可能性があります。
2-4. 不倫の態様が悪質とまでは言えない
不倫の回数が1回だけなど少ないケースでは、回数が多いケースに比べて慰謝料額が低く抑えられる傾向にあります。
これは、回数が多いケースでは、不倫当事者が積極的に婚姻関係を破壊しようとしたと評価されやすいのに対し、回数が少ないケースではいわゆる「魔が差してしまった」ケースであるとして、婚姻関係を積極的に破壊しようとしたとまでは評価されにくいからです。
2-5. 不倫相手が「自分は独身」と言って誘ってきたなど、相手に非があるとき
自分は断っていたのに既婚者である相手が積極的に誘ってきた場合や、誘ってくる際に「自分は独身だ」「妻との関係は終わっていて、離婚するつもりだ」などと言い、その言葉を信じてしまった場合には、慰謝料を減額できる可能性があります。さらに、その誘い文句が巧みで信じてしまった点についてやむを得ないと評価される場合には、慰謝料が発生しないケースもあります 。
2-6. 自分だけに慰謝料請求がされた
不倫した既婚者には慰謝料請求されず、自分だけに慰謝料請求がされた場合、不倫相手に対して「求償権」を行使することで、自分が支払う慰謝料の金額を下げられます。
不倫慰謝料請求における求償権とは、慰謝料を支払った場合に、もう一方の不倫当事者に対して支払った慰謝料のうち自分の責任を超過した分を支払うよう求める権利を指します。
たとえば、自分だけに200万円の慰謝料請求がされて全額を支払った場合、あとから不倫相手の既婚者に対して、「200万円の不倫慰謝料のうち100万円は不倫相手が支払うべきだったから(=100万円を自分が立て替えている状態だから)、100万円を自分に支払ってほしい」と請求できます。この例では、200万円のうちその半分の100万円について求償権を行使するケースを想定していますが、自分よりも不倫相手の非が大きい場合は、100万円を超える金額を請求できる場合もあります。
特に、不倫発覚後も不倫相手の既婚者が、配偶者と離婚や別居をしていないケースでは、不倫相手に求償権を行使できることを不倫相手の配偶者に説明して交渉することで、慰謝料を減額してもらえる可能性があります。
2-7. お金がない
お金がない(支払能力がない)からといって法的に慰謝料請求を免れることはできません。
しかし、お金がない相手に対して慰謝料を請求する側からすると、たとえ裁判をして慰謝料請求が認められたとしても、それだけではお金がない相手から実際に慰謝料を回収するのは難しいため、裁判費用や弁護士費用だけがかかってしまうリスクを抱えることになります。
弁護士である筆者の経験上、慰謝料を請求したいという相談者のなかには、「不倫をした責任を取るための慰謝料なのだから借金してでもお金を用意すべき」と考える人が少なくありません。一方、慰謝料請求されている相談者からは「借金してでも払わなければならないのでしょうか」と質問を受けることがあります。しかし、借金を強制する(強制される)ことは法的に不可能 です。
したがって、「お金がないから◯円までしか払えません」という交渉をして、慰謝料を減額してもらえる可能性 があります。
2-8. 既婚者同士の「ダブル不倫(W不倫)」だった
不倫当事者がいずれも既婚者同士のいわゆる「ダブル不倫」のケースでは、お互いの家庭が不倫発覚後も離婚しない選択肢が考えられます。
その場合、そもそも慰謝料請求されない可能性や、慰謝料請求されても、不倫の被害者である自分の配偶者から不倫相手への慰謝料請求が可能であることを説明して交渉することで慰謝料請求自体を諦めてもらえる可能性があります。
不倫相手の配偶者が不倫した自分に対して慰謝料請求できるのと同じように、自分の配偶者も不倫相手に対して慰謝料請求できることから、お互いに慰謝料請求のメリットを得にくいためです。
もちろん、上記は「自分と不倫相手の責任割合(どちらに非があるか)に大きな差がない」ことが前提です。また、一方の家庭は不倫が発覚しており、他方の家庭はまだ発覚していないケースでは、交渉における力関係も変わってきます。ダブル不倫における不倫慰謝料の交渉は複雑なため、弁護士に依頼することを強くお勧め します。
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3. 不倫慰謝料の減額を求める手続き
不倫相手の配偶者から請求された慰謝料額が相場を超えている場合や、不倫に関して減額要素がある場合には、減額交渉を行います。
減額交渉は、不倫相手の配偶者からの慰謝料請求に対して、こちらの立場を説明する回答書を送ることでスタートします。
書面やメールによって慰謝料請求を受けたのであれば、回答書も書面やメールで送るのが無難 です。特に、不倫の頻度や期間、どちらにより非があるかといった事実関係について説明する場合、文章で回答することで、誤解が生じたり、言った言わないの水掛け論により減額交渉が難航したりするリスクを回避できます。
他方、事実関係は争わずに金額交渉のみを行う場合は、書面やメールに加えて電話での交渉でも構いません。
減額交渉後、金額や支払い方法などに合意できれば示談書を締結します。合意できない場合は、相手からの調停申立てや訴訟提起を待って、これらの手続きのなかで話し合います。
4. 不倫慰謝料の減額交渉をする際のポイント
不倫慰謝料の減額交渉にあたって、重要となるのは次の3点です。
4-1. 誠心誠意、謝罪を尽くす
不倫相手の配偶者からの慰謝料請求には、高額な慰謝料が発生する理由として「不倫した自分の配偶者ではなくあなたに非がある」「不倫による精神的ショックが大きい」といった内容が、感情的な表現で書かれていることがあります。請求された側からすると、その内容が事実と異なっている場合や、過去に不倫相手から聞いていた内容と違うと感じる場合もあり、感情的に反論や弁明をしたくなるかもしれません。
もちろん、事実ではないことを認める必要はありませんし、認めてはいけません。しかし、不倫の事実が存在する以上は、まずは誠心誠意、謝罪を尽くす姿勢が重要です。真摯な謝罪により被害感情が少しでも緩和されれば、慰謝料を減額できる可能性も高まります。
4-2. 請求額が妥当かどうかをよく検討する
不倫相手の配偶者からの請求額は、あくまで請求する側の希望額であり、相場を超える金額であるケースもめずらしくありません。
特に、不倫相手と配偶者が別居や離婚をしていない場合に100万円を超える慰謝料を請求された場合や、別居や離婚をしていても300万円を超える慰謝料を請求された場合は、減額できる可能性がある と言えます。
請求額が妥当であるかどうかは単純に金額の問題だけではなく、減額できる要素がどれくらいあるか、証拠があるか、訴訟となった場合の見通しや訴訟提起されることそのもののリスクなど、事案に合わせて判断しなくてはなりません。判断に迷う場合は、弁護士のアドバイスを受ける選択をお勧めします。
4-3. 示談書に清算条項を定める
減額交渉の結果、合意できた場合は示談書をとり交わします。
示談書には、清算条項を必ず盛り込みます。清算条項とは「示談書に書かれている内容以外に請求できる権利がないことをお互いに確認します」という内容の条項です。清算条項を定めずに示談書を締結してしまうと、あとになって「示談書で決めた慰謝料では足りないからもっと支払ってほしい」と追加の慰謝料請求されるリスクを抱える 状況になるため、必ず盛り込む必要があります。
5. 不倫慰謝料の減額交渉を弁護士に依頼するメリット
当事者同士の減額交渉では、どうしても感情的な対立が激しくなりがちです。
不倫相手の配偶者に「不倫当事者が減額を主張する=反省していない」と思われて被害感情を逆なでしてしまい、交渉が難航するケースがしばしば見られます。これは、謝罪するポイントがずれていたり、「自分も苦しんでいることをわかってほしい」という気持ちが大事な局面で漏れてしまったりするのが原因です。
弁護士に依頼すれば、言うべきことと言わないほうがよいことを整理したうえでポイントを押さえた謝罪ができ、比較的冷静に交渉を進められます 。
6. 不倫慰謝料の減額交渉に関する弁護士費用
不倫慰謝料の減額交渉を弁護士に依頼した場合の費用相場は次のとおりです。
相談料:5000円/30分(初回は無料の事務所も多い)
着手金:20万円~30万円
報酬金:減額できた金額の10~20%
実費:交通費やコピー代など
裁判期日や相手方との対面交渉の日当:1万円~2万円/日
実際の弁護士費用は法律事務所によって異なります。たとえば、報酬金を固定額で設定している事務所も存在します。弁護士に相談する際は、弁護士費用の見積もりを提示してもらい、きちんと確認しましょう。
筆者の事務所では、事案の内容や請求されている金額などによって多少上下しますが、着手金、実費、日当は相場と同程度、報酬金は減額できた金額の17.6%に設定しています。また、請求されている金額が数千万円など、相場の何倍もの金額であるケースでは、報酬金の上限を設定することで想定以上の報酬金が発生しないよう調整する場合もあります。
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7. 不倫慰謝料に関してよくある質問
8. まとめ|不倫慰謝料の減額交渉は男女問題に詳しい弁護士に相談を
不倫慰謝料の減額交渉は、相手方が感情的になっているケースがほとんどであり、請求された側は不倫に対する罪悪感から「弁護士に頼むと感情を逆なでするのではないか」と思い込んでしまうこともあります。その結果として、法外な慰謝料の支払いに合意してしまうケースもめずらしくありません。
不倫を真摯に謝罪して適切な金額の慰謝料を支払うことは大切ですが、相場以上の金額を支払う必要はありません。不倫慰謝料の請求に対しては、冷静かつ計画的な対応が求められます 。
不倫慰謝料を減額したい場合は、早めに男女問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2025年2月1日時点の情報に基づいています)