Copyright Directive | p2ptk[.]org https://p2ptk.org Mon, 22 Jul 2019 14:29:05 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.7.2 https://i0.wp.com/p2ptk.org/wp-content/uploads/2016/04/icon_120px.png?fit=32%2C32&ssl=1 Copyright Directive | p2ptk[.]org https://p2ptk.org 32 32 104076971 EU理事会、第17(13)条を含む著作権指令を承認 https://p2ptk.org/copyright/1773 Mon, 15 Apr 2019 14:18:29 +0000 https://p2ptk.org/?p=1773 EU理事会が著作権指令を承認した。

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TorrentFreak

EU理事会はついさきほど、問題視されている第17条(旧13条)を含む著作権指令を承認した。イタリア、ルクセンブルグ、オラン、ポーランド、フィンランド、スウェーデンが反対にまわったものの、各加盟国の閣僚級代表の多数は賛成に回った。

2016年、欧州委員会はEUの著作権法を近代化する計画を発表した。この動きは、当初ほとんど注目をあびることはなかった。

2018年までに、著作権指令の2つの物議を醸す条項をめぐって、賛成派・反対派の双方が壮絶なロビー合戦を繰り広げた。

第11条(現15条)は、反対派からインターネット上のニュース記事へのリンクに対する「税」であると批判される一方で、この条項を支持する出版社からはプラットフォームが報道から利益を得るのを防ぐために必要なメカニズムだと主張されていた。

第13条最終条文では17条に修正)は、YouTubeなどのプラットフォームが許可なく公開するコンテンツから公正な対価を得ることを補償するために必要とされているツールだと支持者は主張していた。一方、反対派はこの条項が事実上アップロードフィルタを義務づけ、検閲につながることを懸念した。

3月26日、指令の文言修正に関する決議案が、賛成312票、反対317票の僅差で否決された。その後、EU議会は修正のない著作権指令全文の投票をおこなった。

欧州議会議員の348名が賛成、274人が反対、36人が棄権し、著作権指令は最終案通りに承認された。

しかし、正式な採択には、同指令案は閣僚理事会(EUの主要立法機関)に承認されなくてはならず、その道程はまだ続いていた。そしてその投票が数分前、農業水産理事会で行われた。

今朝方、ジュリア・レダ欧州議会委員が強調したように、議案が可決されるためには、加盟国の55%(訳註:16ヵ国)が賛成し、その賛成国がEU人口の65%を占めていなくてはならない。だが、投票では19ヵ国が賛成に回り、人口比も71.26%と規定を易々と上回った。

上記の画像が示すように、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ポーランド、フィンランド、スウェーデンが反対、ベルギー、エストニア、スロベニアは棄権した。

しかし、この反対・棄権では足りず、ドイツ・英国が賛成に回ったことで、著作権指令は承認された。

「エンターテイメント業界のロビー活動が、これで収まることはありません。今後2年間、ユーザの基本的権利を無視するような国内法の整備にむけて、彼らは邁進し続けるでしょう」とジュリア・レダ議員はコメントしている。

「市民社会が加盟国に対して圧力を掛け続けることの重要性は、これまで以上の増しています」

本記事は速報であり、随時更新する。

EU Council of Ministers Approve Copyright Directive, Including Article 17 (13) – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: April 15, 2019
Translation: heatwave_p2p
Header Image: EU2017EE Estonian Presidency / CC BY 2.0
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米テクノロジー業界、米政府にEU著作権改革への警戒を訴える https://p2ptk.org/copyright/1510 Fri, 14 Dec 2018 12:43:45 +0000 https://p2ptk.org/?p=1510 米国テクノロジー業界がEUアップロードフィルター計画を警戒するよう米政府に警告し、貿易協定交渉で圧力をかけるよう求めている。

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TorrentFreak

CloudflareやGoogle、Facebookなどのグローバルテクノロジー企業の業界団体「CCIA」は米政府に対し、EUの著作権改革計画について警告を発している。テクノロジー大手によれば、第13条は米国のデジタル経済に大打撃をあたえ、世界中にその影響を与える可能性があるという。

米国はトランプ政権のもと、新たな貿易協定の締結に向けて懸命に取り組んできた。

同政権はEUとの新たな貿易協定にも取り組んでおり、最近、米国通商代表部(USTR)がパブリックコメントの募集を開始した

今週、Amazon、Cloudflare、Facebook、Googleをメンバーとして抱えるコンピュータ&コミュニケーション産業協会(CCIA)は業界の意見書を提出した。

この意見書には、EUが進める著作権改革(アップロードフィルタリングへの扉を開く第13条)への警告が綴られている。

この提案が、EU域内でも激しい議論を巻き起こしていることは周知のことである。しかし、米テクノロジー業界は、これが米国経済に大打撃をあたえる可能性があると米国政府に警告している。

CCIAによれば、この改革案は、現行のEU法が規定するセーフハーバー保護を弱め、大手インターネットサービスの責任を強化することになりうると警告する。また、これはDMCAのセーフハーバー規定とも矛盾することになるとも指摘する。

「この著作権指令案は、2000年EU電子商取引指令における米国インターネットサービスへの確立された保護を弱め、ホスティングプロバイダに各種著作物の自動的『ノーティス・アンド・ステイダウン』をという実現不可能なフィルタリングを義務づけることで、仲介者を保護する安定した法的基盤を混乱させるものである」

「この指令案が採択されれば、長らく続いてきた保護は劇的に弱められ、現代のサービスプロバイダがその保護から外される恐れがある」とCCIAは述べている。

テクノロジー大手は、この提案がEU当局による米国企業の狙い撃ちであると指摘する。彼らはこのプランが、事実上のアップロードフィルタ義務づけをもたらすと恐れがあるという。

「現在の指令案の第13条では、オンラインサービスは事実上、コンテンツの識別技術を調達ないし開発し、実装することを義務づけている。視聴覚作品、画像、テキストなどあらゆるインターネットコンテンツの著作権様態に基づく積極的フィルタリングを強要するという決定は、危惧すべきものであり、明らかな誤りである」

現時点の提案では、第13条は一般的な監視義務を課すものではない。しかし、インターネットサービスが自動フィルターを実装することなく、侵害されたコンテンツを再びアップロードされないようにするのは不可能に近い。

さらにCCIAは指令案の曖昧さへの懸念も指摘している。ホスティングプロバイダをはじめとするサービスが、どのような要件を満たせば安全でいられるのかが明確ではない、というわけだ。

こうした不確実性と米国法との齟齬は、テクノロジー企業にとっては頭の痛い問題だ。そこで現在交渉中の新貿易協定において、米国政府がこうした懸念を念頭に交渉を進めることを求めている。

第13条の最終条文は現在作成中であり、次のトリローグは今週末を予定している。CCIAは米国政府に、米国経済に悪影響を及ぼしうる可能性があることを念頭に置き、この進展を中止するよう求めている。

「この条文は現在、トリローグにて協議が進められている。EU著作権改革の最終条文にこれらの条項が含まれた場合、EU市場における米国のデジタル経済に大打撃をもたらし、EUにおけるビジネスを展開する米国プラットフォームのリスクが極めて増大する恐れがある」

CCIAの意見書は、「EUの国際的影響力を考えると、これは世界的に波及する可能性が高い」としている。

もちろん、これは一方からの主張である。RIAAは米国通商代表部に提出した意見書の中で、べつの側面を強調している。

RIAAは第13条について言及はしていないものの、EUの著作権改革が抱える2つの問題として、「著作権セーフハーバーの広すぎる適用規定」「オンラインプラットフォームの説明責任の欠如」を警告している。

CCIAの意見書の写しはこちら(pdf)、RIAAの意見書はこちら(pdf)

Tech Giants Warn US Govt. Against EU’s ‘Article 13’ Plans – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: December 12, 2018
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: openDemocracy / CC BY-SA 2.0
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欧州リンク税はクリエイティブ・コモンズを害する https://p2ptk.org/copyright/1405 Tue, 13 Nov 2018 15:34:05 +0000 https://p2ptk.org/?p=1405 創作者には、自分の作品を自由に共有する権利がある。

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欧州議会は9月、欧州全体のクリエイティビティ、表現・研究・共有の自由に悪影響をおよぼす著作権法の大幅改正案を可決した。現在、議会と(加盟国政府によって構成される)理事会は非公開の交渉を進めており、今後数カ月に渡って指令案条文の調整を行い、来年再び欧州議会で投票が行われることになっている。

第11条:現実の問題に対する間違った解決策

議論を呼んでいる主な規定は、新たに「報道出版者の権利」(リンク税とも呼ばれる)を創設する第11条である。これは、ニュースアグリゲータが報道コンテンツをインデックスしたり、リンクとスニペットを掲載しようとした場合、インターネットで利用するための許諾を得るか、使用料を支払わなくてはならないとする規定である。議会と理事会は、不要かつ逆効果でしかない「出版社の権利」をすでに承認している。

議会が可決した第11条の条文案では、加盟国は報道機関が「情報社会サービス提供者による報道出版物のデジタル利用から公正かつ適切な対価を得ることができるよう」新たな権利を創設することを定めている。

しかし、第11条は質の高いジャーナリズムを支援するための施策とはなりえず、ニュース配信における競争とイノベーションをさらに停滞させるものとなるだろう。過去にもスペインドイツは同様のルールを導入したが、出版社の収益に貢献するどころか、出版されたコンテンツの(アクセスや収益の面で)可視性が減少したとされる。まさにその意図と逆の結果がもたらされたのである。まさに先週、中小企業連合が、トリローグの交渉担当官に、第11条が採択された場合の悪影響への懸念を書面で提出している。

巻き添え被害:CCで共有したい人びと

リンク税はビジネス上の問題を抱えているのみならず、オープンライセンスなどにより、余計な制限をつけずに作品を共有したいクリエイターの意図を損ねることにもなる。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの条件にかかわらず対価を支払わなければならないとなれば、CCライセンサーは特に被害を受けることになる。これは決して拡大解釈などではない。先週、IGELは以下のように記している

「議会の提案は、報道出版社がそのウェブサイトへのリンクを表示する検索エンジン事業者から経済的補償を受けられなくてはならないと明確にしている。しかし加盟国は、この目的を達成する最も有効な方法として、パブリッシャが報酬権を放棄できなくすることを考えついた。請求額だけは交渉の余地を残しているが、その要否の判断はさせないというわけだ」

以前にも述べたように、このような権利は「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを採用して自由かつオープンな共有を望むパブリッシャと直接的に競合する。CCを採用するパブリッシャに放棄できない報酬請求権を押し付ければ、クリエイティブ・コモンズそのもの、そしてその精神が侵され、パブリッシャのビジネスの自由や彼らの望むようなコンテンツの共有が否定されることになる」。

著者がクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを自身の作品に適用すると、世界中の市民に特定の条件で作品を利用できるロイヤルティ・フリーのライセンスを与えることができる。ライセンスのテキストには、「可能なかぎり、許諾者は、ライセンスされた権利の行使について、直接か、または任意のもしくは放棄可能な法定のもしくは強制的なライセンスに関する仕組みに基づく集中管理団体を介するかを問わず、あなたからライセンス料を得るいかなる権利も放棄します」と明記されている

たとえば、スペインのニュースサイト「eldiario.es」は、クリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承 ライセンスのもとで、全てのコンテンツを無料でインターネットに公開している。それにより、彼らは世界中の市民に特定の条件下で記事を使用する無償のライセンスを与えていることになる。ほかにもLa Stampa20 MinutosopenDemocracyなどのCCライセンスを採用する欧州ニュースパブリッシャは、この新たな規制により排除される怖れがある。これらの媒体は、記事を自由に共有してもらうためにクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを採用しているのであって、リンクやスニペットを表示するアグリゲータや検索エンジンから使用料を徴収することを望んでいるわけではない。第11条が放棄できない権利を定めた場合、CCを採用するニュースパブリッシャはライセンスと法的要件との矛盾を抱えることになり、CCを放棄しなくてはならなくなるのだろうか?

私たちは、著者には自らの作品の使用に対価を求める権利があるのと同様に、共有を選択する権利もあると固く信じている。EU著作権指令は、ほとんど、あるいはまったく制限をかけない共有を選択する著者を尊重した解決策を見出さなくてはならない。

Chains by Christina McCarty, CC BY-NC-ND 2.0

私たちは何をすべきか

第11条は削除されなくてはならない。パブリッシャはすでにコンテンツの著作権から十分な利益を上げており、その権利を保護ないし濫用するための新たな独占的権利は不要である。新たな報道出版社の権利が、ジャーナリズムの質の向上や、コンテンツの多様性、デジタル単一市場の成長に資するものでないことは明らかだ。それどころか、情報アクセスや、プラットフォーム/テクノロジーを活用したパブリッシャの情報共有、収益性にも影響を及ぼすことになる。

何年もの間、学者や市民団体は、新たに報道出版社の権利を創設しなくても、質の高いジャーナリズムや報道出版社の持続可能性を実現する簡便かつ効果的な方法を主張してきた。このアプローチは、欧州議会法務委員会(JURI)のコモディニ元報告者が議会で提案したもので、出版社が権利者であることを前提とし、彼らの「ライセンスの締結や、措置・手続き・救済の申立」を簡便化するというものであった。

議会が独自に実施した調査でも、このアプローチが推奨されている。この枠組みは、悪影響が想定される新たな権利を導入しなくても、知財権執行に関する指令2004/48/ECに基づくコンテンツ保護のための法的枠組みを確立している。

たとえ第11条の導入が不可避であったとしても、オープンライセンスを採用した作品やパブリックドメイン作品への保護を含む理事会案が優先されるべきである。たとえば、以前の理事会案には以下のような条項が含まれている。「作品その他コンテンツが非独占的ライセンスに基づく報道出版に組み込まれている場合、この権利は […] 許諾が与えられた作品、または保護が失効した作品の使用を禁止するために行使されてはならない」。さらに、議会案では保護期間が5年間としているのに対し、理事会案は1年間のみとしている。

これまでのところ、EU著作権指令案の方向性は、オープンインターネット、表現の自由、ユーザの権利、デジタルの公益性を犠牲にして、力を持った著作権者だけを利するために、インターネットの管理を強化する不穏な道筋を描いている。現在の交渉において、議会と理事会は、クリエイティブ・コモンズのライセンサーや世界中に作品を共有したいと考える人びとを失望させ、罰してはならない。こうした著者やクリエイターは、ほかの誰かのために、意図的にクリエイティブ・コモンズを選択しているのである。コモンズへの貢献は、尊重され、保護されなくてはならない。

EU’s proposed link tax would [still] harm Creative Commons licensors – Creative Commons

Author: Timothy Vollmer and Till Kreutzer / Creative Commons / CC BY 4.0
Publication Date: November 7, 2018
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Timothy Vollmer (CC BY 2.0)
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EU著作権指令:欧州はインターネットから切り離されるのか? https://p2ptk.org/copyright/1363 Tue, 30 Oct 2018 03:09:53 +0000 https://p2ptk.org/?p=1363 欧州が求める基準に対応できないサービスは、欧州市民をブロックしなくてはならないのか。

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TorrentFreak

欧州著作権法を近代化するEUの計画は、論争を呼んだ第13条を含め、着実に前進している。推進派と反対派の主張は平行線をたどっているが、それとは別に我々は先を見据え無くてはならない。第13条が実装された場合、大手ウェブサイトは海賊版コンテンツに対する責任を恐れるあまり、欧州のユーザを遮断してしまうのだろうか。

今年はじめ、欧州の新たなプライバシー規則が世界を揺るがした

GDPRは欧州市民のプライバシーを保護するため、厳格なデータ規則を導入した。この規則は、欧州のユーザにサービスを提供する世界中のサイト、サービスに適用される。

突然、世界中のウェブサイトは、自らのデータ収集ポリシーが一線を越えていないことを確認しなくてはならなくなった。その結果、世界中のユーザが、メールの購読の『更新』や新たな利用規約への同意を求めるメールの洪水に襲われることになった。

世界中に広がったヒステリーは落ち着きつつあるが、混乱は依然続いている。もちろん、欧州市民がインターネットにおけるプライバシーを取り戻したことは喜ばしい。しかし、それは予期せぬコストを支払わされることにもなっている。

欧州域外の複数のウェブサイトやパブリッシャは、単純に欧州からのアクセスをブロッキングすることでGDPRに対応した。施行から数ヶ月を経ても、このブロッキングは依然として継続している。

欧州市民はNYデイリーニューズダラス・モーニングニュースなどの新聞社のウェブサイトにアクセスできず、USA Todayは「欧州版」という別のポータルにリダイレクトされる。

メーリングリストを簡単に解約できるサービス「Unroll.me」すら欧州からのアクセスを遮断している

欧州市民お断り

GDPRブロッキングが今なお影を落としている――この問題はある1つの疑問を投げかける。EUが来年、第13条を含む新たな著作権指令を施行した場合、その影響はどれほどのものになるのか。

「アップロード・フィルター」とも呼ばれる第13条は、多くの大規模なインターネットプラットフォームに、権利者とライセンス契約を結ぶか、サーバ上の海賊版コンテンツをブロックする手段をすることを義務づける。

これらの要件は、欧州域外の企業にも適用されることになる。ユーザにコンテンツのアップロードを許可する世界中のウェブサイトやサービスは、EUからアクセス可能だという理由で第13条の影響を受けることになるのだ。

海賊党欧州議会議員のジュリア・レダは「現行の第13条を含む著作権法は、欧州域内で閲覧可能なすべてのウェブサイトに適用されるため、域外ウェブサイトがジオブロッキングを実施(訳註:欧州からのアクセスを遮断)する可能性がある」という。

欧州企業に法的責任を負わせやすくなるのは間違いないが、しかしこれもGDPRと同じように、欧州域外のサイトに不確実性が生じることになる。

今週はじめにお伝えしたように、 YouTubeのスーザン・ウォジスキも、この欧州の動きに神経を尖らせている。

「この提案は、YouTubeを始めとするプラットフォームに、ごく一握りの大企業のコンテンツのみを許可するよう強要する可能性がある。プラットフォームが掲載されるコンテンツに直接責任を負うことになるため、プラットフォームが小規模クリエイターのオリジナルコンテツをホストするリスクが極めて高くなる」と彼女は説明した。

すでに高度なアップロードフィルターを実装しているYouTubeがサービス全体を欧州から撤退させるとは思い難いが、ほかの多くのサービス――特に欧州のユーザ数が少ないプラットフォームが、第13条を理由にジオブロックを開始する可能性は十分にある。

起こりそうもない恐怖を煽っているだけではないかと思われるかもしれない。しかし、GDPRの施行から数ヶ月が経っているにもかかわらず、まだまだウェブサイトやパブリッシャがブロッキングを解いていない状況を考慮しても、果たしてそうだと言い切れるだろうか。

こうした自己検閲はすでに行われている。以前にも、複数のYouTubeリッピングサイトが、米国や英国の著作権者からの法的措置を恐れ、米国・英国のユーザを自主的にブロックしている。

第13条が実際にジオブロッキングを引き起こしてしまったとしたら、まさにGDPRが一部の情報やサービスへのアクセスを制限しているように、第13条はコンテンツへのアクセスを制限するものとなるだろう。

ただGDPRとの最大の違いは、現行の第13条は「小規模な」サイトやサービスには適用されないことになっている点だ。従業員が50人未満、年間売上が1000万ユーロ未満の企業は除外される。

現在、複数のEU機関が著作権指令案の最終案について交渉を続けている。いずれ欧州に迫りつつある危機がより明白になってくるだろう。

Will Internet Services Block Europeans to Avoid “Upload Filters”? – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: October 28, 2018
Translation: heatwave_p2p
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YouTube:欧州著作権指令は「インターネットを激変させる」 https://p2ptk.org/copyright/1358 Mon, 29 Oct 2018 17:05:01 +0000 https://p2ptk.org/?p=1358 YouTubeのスーザン・ウォジスキCEOは、インターネットを「激変」させる欧州のアップロード・フィルターを阻止するため、YouTubeクリエイターに行動を起こすよう呼びかけている。

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TorrentFreak

YouTubeのスーザン・ウォジスキCEOは、欧州議会で可決された著作権指令案に強い警告を発している。ウォジスキは、現在の第13条の文言は、YouTubeなどのサイトにアップロードされる無数の表現を「締め出す」可能性があり、欧州のユーザが現在YouTube上にあるコンテンツを視聴できなるかもしれないという。さらに、「数十万人」の雇用が脅かされかねないとも話す。

この数年、音楽業界はYouTubeなどのサイトに起因する「バリューギャップ」に不満を抱き続けてきた。

大手レーベルは、こうしたサイトがいわゆる「セーフハーバー」を隠れ蓑にして、無断でアップロードされたコンテンツを無料で視聴させ、レーベルに支払うべきライセンス料を逃れていると主張している。

音楽業界はこうしたビジネスモデルの歪みの是正すべく、欧州の新たな指令案(第13条)の可決に向けた強力なロビー活動を行った。第13条は、ユーザにコンテンツのアップロードを可能にするプラットフォームに対し、公開前に侵害コンテンツを検出するアップロードフィルタを実装することを義務づけるものだ。

そして9月、この著作権指令案は欧州議会で可決された。音楽業界はこの勝利に沸いたものの、反対派はこの措置がイノベーションを妨げかねないと警告し続けた。

それから1ヶ月が過ぎた。YouTubeは現在、この指令案が現行の文言で成立すれば、インターネット全体が「激変」し、多くの雇用が失われる恐れがあると警告する。

YouTubeのスーザン・ウォジスキCEOは、「現在の第13条は、皆さんのようなクリエイターから、日々を楽しむユーザに至るまで、YouTubeなどのプラットフォームにコンテンツをアップロードする数百万の人々の表現を締め出すおそれがあります」とYouTubeクリエイターに向けて語る。

Photo by Fortune Conferences (CC BY-NC-ND 2.0)

第13条の懸念点は、9月の投票までの間に幾度となく強調されてきたが、音楽業界はそうした意見を鼻であしらってきた。しかし、ウォジスキは、第13条がすでにプラットフォーム上にあるコンテンツにも悪影響を及ぼすという。

「(第13条は)欧州のユーザが世界各地のクリエイターがこれまでアップロードしてきたコンテンツの視聴を遮断するよう求めています。語学学習や物理学講座、その他さまざまなハウツー動画など、YouTube上の膨大な教育的ビデオライブラリもそこに含まれているのです」とウォジスキCEOは警告する(訳註:日本語記事)。

「この法案は、あなたの生活と、あなたの声を世界と共有する手段の双方に脅威をもたらします。第13条が現在提案されているままのかたちで成立してしまえば、欧州の雇用、クリエイター、企業、アーティストら数十万人が脅威にさらされることになるのです」

欧州議会での投票までの期間、反対派は第13条が大企業を更に強力にしてしまうと主張してきた。

新たな法律の遵守は極めて難しく、アップロードを適切に取り締まれるのは大手企業だけに限られる。さらに、小規模な投稿者が非侵害的なコンテンツをYouTubeなどのプラットフォームにアップロードしようとしても、責任を負わされかねないプラットフォームから拒絶されることもありうるためだ。

「この提案は、YouTubeのようなプラットフォームにごく一握りの大企業のコンテンツだけを許可するよう強制しかねません。YouTubeのようなプラットフォームにとって、小規模なオリジナルコンテンツ・クリエイターの作品をホストすることは極めてリスキーになってしまうのです」と彼女は説明する

「あらゆる権利者への公正な対価還元の重要性は理解しています。だからこそ、私たちはコンテンツIDを構築し、どんなコンテンツの所有者に対してもお金を支払うプラットフォームを構築したのです。しかし、この第13条が意図せずもたらす結果は、このエコシステムを危機に晒すことになります」

最後に、YouTubeのCEOは、同社が業界との橋渡しに取り組んでいると語る。しかし、9月の投票までの間にインターネットを駆け巡った強烈なレトリックを考えれば、今すぐにでもレーベルが態度を翻し、要請に応じるとは考えにくい。

それでも、第13条の最終的な文言はまだ確定していないため、YouTubeはまだ、うまく立ち回る余地はあると考えているようだ。

「第13条があなたのチャンネルにどのような影響をもたらすことになるのかを少し調べ、考えてみてください。そしてすぐに行動を起こしてください。なぜクリエイター経済が重要なのか、どうしてこの指令案があなたに影響を及ぼすのかを、ソーシャルメディア(#SaveYourInternet)やあなたのチャンネルを通じて世界に伝えてください」

YouTube: New EU Copyright Law Could “Drastically Change the Internet” – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: October 23, 2018
Translation: heatwave_p2p
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欧州がインターネットを破壊する。さあ、反撃しよう https://p2ptk.org/copyright/1239 Fri, 14 Sep 2018 05:00:29 +0000 https://p2ptk.org/?p=1239 欧州議会は、著作権フィルタ、リンク税、スポーツイベントの撮影禁止を含む著作権指令案を可決した。インターネットの破壊を食い止める術はあるのか。

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Electronic Frontier Foundation

主要会派で投票が割れたものの、本日、欧州議会議員は、著作権指令案のおぞましい提案のすべてを受け入れ、望ましい提案のすべてを拒絶した。これにより、インターネットは、TwitterのテキストメッセージからFacebookの更新、写真、ビデオ、音声、ソフトウェアコードにいたるまで、著作権で保護されるあらゆるメディアが大衆自動監視と恣意的検閲される舞台となる。

欧州議会が可決した3つの提案は、表現の自由、プライバシー、そして芸術に破滅的損失をもたらす。

  1. 第13条:著作権フィルタ。ごく小規模のプラットフォームを除き、あらゆるプラットフォームは、すべての投稿を検査し、著作権侵害と判定されたすべてのものを検閲する著作権フィルタを自衛のために導入しなくてはならない。
  2. 第11条:ニュースサイトとライセンス契約を交わしていないサービスでは、記事中に含まれる単語2語以上を使用してニュース記事にリンクする行為は禁止される。ニュースサイトは、引用を許す権利を主張するかライセンスを拒否することで、実質的に批判者を排除する権利を得る。加盟国は、この権利がもたらす弊害を緩和するための例外や制限を設けることができるが、必須ではない。
  3. 第12条a:スポーツイベントの写真やビデオの投稿は禁止される。スポーツイベントの「主催者」のみが、試合の記録を公表する権利を持つ。セルフィーも、好プレーの短いビデオも許されない。観客であるあなたは、指定された席に座り、受動的に試合を眺め、そのまま帰ることが求められる。

同時に、EUは21世紀に適した著作権の控えめな提案でさえ拒絶した。

  1. 「パノラマの自由」の拒絶。公共空間で写真やビデオを撮影すると、バス側面に掲載された広告やTシャツのプリントに使用される写真素材から、建築家が著作権を主張する建築物のファサード(正面玄関)にいたるまで、意図せず著作物が含まれることがある。背景にあるオブジェクトの著作権侵害を気にせずに街頭の風景を撮影することを欧州全域で合法化する提案をEUは拒絶した。
  2. 「ユーザ生成コンテンツ」の免除の拒絶。これはEU加盟国に、「批評、レビュー、イラスト、似顔絵、パロディ、パスティーシュ(作風の模倣)」のための作品の抜粋を可能にする著作権法の例外を提案していた。

この夏、私はこれらを成果として歓迎する多くの人々と対話し、なぜ彼らがそう考えているのかを理解しようとした。そこでわかったのは、こういうことだった。

*  彼らはフィルタを理解していない。まったくわかっていない

エンターテイメント業界は、この世には著作物を識別し、紙の契約書をかわさずにそれを提示することを抑止するテクノロジーが存在し、唯一の障害はプラットフォームが強情さだけだとクリエイターを信じ込ませている。

現実には、(クリエイターを含む)真っ当なユーザがによる適法な行為がフィルタによって阻止されているにもかかわらず、本当の侵害者は簡単にフィルタを回避しているのだ。

つまり、フィルタの仕組みを理解し、それを回避する方法を学ぶことなく、熟練したアーティストにはなれないということだ。たとえば、画像を遮断する中国政府のフィルタ技術は、簡単な方法で破れる。一方、こうしたフィルタは、莫大な資金と技術力を背景に、秘密裏に行われているため、著作権フィルタよりも何千倍も効果的だ。

あなたがプロの写真家であれ、趣味で写真を投稿する一般人であれ、あなたの人生にハードコアなフィルタ戦士として捧げる時間はないはずだ。あなたの作品がフィルタに著作権侵害だと誤検出されたとしても、アングラな著作権侵害テクニックを駆使してフィルタを回避することなどできようはずもない。あなたにできることといえば、ブロックしたプラットフォームに異議を申し立て、同じ目にあった数百万の不幸な人々の列に加わること、そして、疲弊しきった人間のレビュワーがあなたの申し立てを正しく判断することを願うだけだ。

もちろん、大手エンターテイメント企業やニュース企業は、こうした弊害は気にかけてはいない。フィルタが問題を起こしたとしても、彼らにはプラットフォームに直通のバックチャンネルが与えられ、ヘルプラインに優先的にアクセスすることができる。大手エンターテイメント企業に囲われたクリエイターは、フィルタによって保護されるだろう。だが、インディペンデントのクリエイター(あるいは一般市民)は、自分自身で身を守らなくてはならないのだ。

* 待遇を改善してくれるはずの「競争」を著しく損ねる

EUが義務づけるフィルタの構築には、数億ドルもの費用がかかる。それほどの資本を持つ企業は、世界を見渡しても米国のテクノロジー企業と中国のテクノロジー企業、ロシアのVKなどにごく一部だ。

インターネットをフィルタリングする義務は、競争法規制当局が巨大なプラットフォームを分割しようとした場合、どれだけ小さく分割するかに歯止めをかける。ネットワーク全体の侵害を取り締まれるのは、最大規模の企業に限られ、したがって、最大規模の企業をそれより小さくできなくなってしまうのだ。最新版の指令は、ごく小規模の企業に義務の免除を与えているが、裏を返せば小規模なままでいることを強いられるということである。さらに、ある日突然著作権警察としての振る舞いを強制されることを常に心配し続けねばならないということでもある。今日、欧州はテクノロジーセクターの企業統合の強化を支持し、インディペンデントなクリエイターの立場を極めて危うくした。競争に問題を抱える2つの巨大産業は、自らを利する取引のために交渉を続けてきたが、それにより競争環境は損ねられ、インディペンデント・クリエイターたちは蚊帳の外に置かれてしまうことになった。我々が本当に必要としていたのは、テクノロジー産業とクリエイティブ産業双方の独占的慣行を是正するためのソリューションだった。しかし、そうはならず、彼らにとって都合の良い(それ以外のすべての人たちを追いやる)譲歩案が得られただけだった。

どうしてこんなひどい状況に陥ってしまったのか。

悲しいかな、その理由は単純だ。インターネットはすでに我々の生活の一部となっている。つまり、我々の抱えるあらゆる問題は、すべてインターネットと交差しているのだ。そして、テクノロジーをよく理解していない人は、問題は『テクノロジーを修正する』ことで当然に解決できると思い込んでいる。

アーサー・C・クラークは、「十分に発達したテクノロジーは、魔法と見分けがつかない」という名言を残した。確かに技術的成果が魔法のように見えることもある。そして、こうした凡庸な奇跡を目にすることで、テクノロジーはどんなことでもできてしまうと思い込むのも必然だ。

技術者がなせることと、なしえないことを理解できないままでいると、無限の厄介が生み出されることになるーーネットワーク化された投票機が国政選挙を実施する上で十分なセキュリティを備えていると無邪気に主張する人々、いかさま師には我々のデータ破りはできないが警察にはデータ破りが可能な暗号化技術を確立できると主張する当局ブレグジット後のアイルランド国境問題を未知のテクノロジーで解決できると主張するペテン師。

一握りの巨大エンターテイメント企業が持ち出してきた青写真では、大規模なフィルタリングが可能であり、無害であると主張されてきた。そしてそれは彼らの真実となり、たとえテクノロジスト(その分野の世界的な権威であろうとも)が不可能だと伝えたところで、エンターテイメント業界は、テクノロジー企業が強情で、ビジョンに欠けているだけだと非難し、何ができて、何ができないかの有益な情報として捉えることはない。

このようなパターンはよくあることではあるが、EUの著作権指令の場合、より悪化する要因があった。著作権フィルタの提案と、テクノロジー大手から新聞社に数百万ユーロを支払わせるという提案とが結びついたことで、悩みを抱える報道機関からの好意的な報道が保証された。

最後に、インターネットがある種の視野狭窄をもたらす――我々が相互作用するネットの一部がインターネットのすべてであるかのように思えてしまう――という問題がある。インターネットは日々無数の公衆コミュニケーションを扱っている。誕生日のお祝いから追悼メッセージ、パーティや会議の通知、政治キャンペーンやラブレターにいたるまで。第13条が対処しようとしている著作権侵害はこうしたコミュニケーションの1%にも満たない。しかし、第13条の支持者たちは、プラットフォームの「第一の目的」が著作権で保護されたエンターテイメント作品を提供することにあると主張する。

エンターテイメント業界の人々が、インターネットで多くの娯楽作品に触れているのは疑いない。警察がインターネットを犯罪に利用する人々をより多く見ているように。ファッション好きがインターネットで衣装を公開する人々をより多く目にしているように。

インターネットは我々が知りうる以上に広大である。だが、だからといって、自らの狭い範囲の利益を追求するために、広大な電子世界を犠牲にし、他のインターネットユーザから何かを奪うことに無頓着であって良いわけではない。

本日の著作権指令投票は、クリエイターの生活をより困難にするだけでなく、コンテンツ大手、テクノロジー大手に巨万の富をもたらすものである。そして、我々すべての生活を脅かすものでもある。昨日、私がメンバーとして参加する制作者ユニオンの政策担当者は、彼らの仕事は「シェイクスピアを引用したい人を守ることではない」と私に言った(何者かがシェイクスピアの作品を自分の作品であるかのように著作権フィルタに虚偽の登録をすれば、シェイクスピアの引用をインターネットから消し去ることができる)――彼らの仕事は、作品を「食い物にされている」の写真家の利益を守ることだと言う。私の参加するユニオンが支持した破滅的な提案は、写真家の役に立たないだけでなく、コミュニケーションが十字砲火にさらされ、すべての人に多大な被害をもたらすもののだ。たとえ誤り率が1%であったとしても、日々数千万件の検閲が行われることになる。

では、これからどうなっていくのか。

この問題について、欧州市民が選出された指導者に影響を及ぼす方法はいくつかある。

* 直近:この指令は今、加盟国の代表者と欧州連合による秘密主義的な非公開会合となる「トリローグ」に進んだ。ここで議会が次の投票する最終指令案が決定されるが、ここに影響を及ぼすのは極めて難しい(難易度:10/10)

* 来春:欧州議会はトリローグで決定された最終指令案に投票する。しかしここでは条文の修正はできず、指令案自体の可否のみを問う投票が行われることになるだろう。この段階で指令を打ち破るのは非常に困難だ。(難易度;8/10)

* その後:28の加盟国は、指令に応じた国内法を議論し、制定しなくてはならない。EUレベルでの修正に比べ、28カ国の議会それぞれに影響を及ぼすのは多くの点で困難が伴うが、一方で、加盟国の議員は個々のインターネットユーザにより一層の責任を感じているはずだ。さらに、1カ国で勝利すれば、それをてこに他国に広がっていく可能性もある(「見ろ、ルクセンブルグがやりやがった。我々も続くぞ」)。(難易度:7/10)

* いつか:法廷闘争。これらの提案は極めて広範囲に及ぶ性格、既得権益、および関連する権利との比較衡量に未解決の問題を抱えており、いずれ、欧州司法裁判所の判断が求められることになるだろう。しかし残念ながら、法廷闘争は時間も、金もかかる。(難易度:7/10)

そんななかで、欧州選挙が迫りつつある。EUの政治家は、自らの地位をかけて戦わなくてはならない。欧州議員候補者が著作権の拡大を自らの業績として選挙戦を勝ち抜ける地域などほとんどないだろうが、対立候補が「私に投票を!対抗馬はインターネットを破壊した」と訴えるキャンペーンに直面する可能性は大いにある。

米国のネット中立性をめぐる混乱で見られたように、フリーでオープンなインターネットを守ろうとするムーブメントは幅広く強力な支持を得ており、政治家が自らの地位を失いかねないトピックになるかもしれない。

振り返ってみよう。これまで、1度きりの「勝利」ですべてが終わる戦いなどはなかった。自由で、公正で、開かれたインターネットを守る戦いは、永遠に続いていく。

人々が

a) 問題を抱え、それが

b) インターネットと交差する限り、

問題を解決するためにインターネットを破壊しようとする試みが絶えることはない。

確かに今日、我々は強烈な挫折を味わった。しかし、我々のミッションが変わることはない。オープンで自由でフェアなインターネットを守り、インターネットを人種やジェンダー、表現、民主的正統性などの問題をめぐる闘争のための場とし続けるために、戦って戦って戦い抜くことだ。

この投票が別の結末を迎えていたとしても、我々は今日も戦い続けているだろう。明日も、そして明後日も。

自由でフェアでオープンなインターネットを守り、回復するための戦いは、勝利のための戦いではない。自分自身のコミットするためにこそある。そうでなくては、あまりにもつらい戦いだ。

Today, Europe Lost The Internet. Now, We Fight Back. | Electronic Frontier Foundation

Author: Cory Doctorow (EFF) / CC BY 3.0 US
Publication Date: September 12, 2018
Translation: heatwave_p2p
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EU著作権フィルタは万人にネット検閲の扉を開く(だがクリエイターは救われない) https://p2ptk.org/copyright/1238 Tue, 11 Sep 2018 16:34:42 +0000 https://p2ptk.org/?p=1238 悪用を防ぐ仕組みを持たない著作権フィルタは、容易に悪用され、検閲ツールとして機能する。

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Electronic Frontier Foundation

EUは水曜、新たな著作権指令に大きな問題を抱えた2つの提案を受け入れるかどうかを決める投票をする。その1つ、第13条は世界中のインターネットに大規模な検閲を引き起こす可能性を秘めている。

現在、ユーザに(ビデオやテキスト、画像を投稿を許す)コミュニケーションサービスは、著作権侵害の申立があった場合、ユーザが反論しない限り、申し立てのあった投稿を削除しなくてはならない。著作権侵害の申立が不当であると判断した場合には、その投稿を削除しないことも選択できるが、その場合には(少なくとも米国においては)ユーザとともに著作権侵害で訴えられ、多額の賠償金を支払わされる可能性がある。そのリスクを考えれば、通常、企業はユーザの表現を守るために立ち上がろうとはしない。ユーザにしても全財産を投げ売ってまで、自らの表現を守るために裁判を戦い抜こうはしないだろう。

米国のデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に組み込まれ、世界中の国に輸出されているこのシステムは、「ノーティス・アンド・テイクダウン(通知と削除)」と呼ばれている。このシステムでは、権利者は証拠も司法による判断も必要とせず、自らの主張するがままにインターネットを一方的に検閲することが許されている。物理的な著作権侵害の世界には類を見ない、過剰な特権が与えられているのだ(映画館に行って、スクリーンを指さして「あれは俺の映画だ」を喚き散らして、映画を終了させることができるだろうか?)。

それでも権利者はこのノーティス・アンド・テイクダウンに不満を訴えている。削除されたコンテンツは、ボットによって自動的に再投稿されることもあり、権利者は何度も何度も同じ著作権侵害ファイルの削除を申立なくてはならない。そのため、彼らはノーティス・アンド・テイクダウンをいたちごっこだと主張する。

その代わりとして権利者たちが求めてきたのは、「ノーティス・アンド・ステイダウン(通知と予防)」だ。このシステムではまず、権利者はオンラインプラットフォームにカタログ全体のコピーを送信する。そしてプラットフォームはユーザの投稿がデータベースに登録された既知の著作物であるかどうかを比較し、一致すると思われるものをブロックする「著作権フィルタ」を構築する。

すでにテクノロジー企業は、このようなシステムを自発的に構築している。最も有名なのはYouTubeのコンテンツIDだ。その開発には6,000,000,000ドルの費用がかかり、ビデオのオーディオトラックをカテゴライズするフィルターによって機能している。権利者たちは頑としてコンテンツIDは十分に機能していないと主張するが、YouTubeユーザたちは、正当な作品が著作権侵害として検閲されてしまうオーバーマッチの問題を報告している。その例は枚挙にいとまがない。NASAは自らの火星探査映像を投稿してブロックされた、ピアニストはクラシックの演奏を投稿してブロックされた、ビデオ内の鳥のさえずりによってビデオが検閲された、学術会議の昼休み中にホール内にBGMが流れたために登壇者の声が消されてしまった――だからといって、無音ならいいというわけではない。それも著作権クレームを引き寄せてしまうのだから。その他にも、著作物の利用がフェアディーリング(公正利用)にあたるかを判定するボットも存在してはいないという問題もある。フェアディーリングは法律で保護されているが、コンテンツIDでは保護されていないのだ。

コンテンツIDがプロトタイプなのだとしたら、最初からやり直すしかない。それはオーバブロック(あらゆる種類のメディアを検出してしまう)と、アンダーブロック(大手エンターテイメント企業を激怒させる取りこぼし)をもたらしている。やたらカネがかかり、役に立たず、そして効果がないのだ。

しかし、それはあなたのインターネットのすぐそばまで忍び寄っている。

水曜、EUは次の著作権指令に、コンテンツIDスタイルのフィルタをインターネット全体に義務づける「第13条」を含めるかどうかを投票する。ビデオのサウンドトラックだけでなく、映像、静止画、コード、さらにはテキストも対象となる。我々がコミュニケーションのために利用するサービスは、この第13条によって、あらゆる著作権侵害の申立を受け入れ、マッチすると考えられるものは全てブロックしなくてはならなくなる。

この措置は、インターネットを検閲する一方で、アーティストの利益に何ら寄与することはない。

こうしたフィルタがどのように機能するかを考えてみよう。まず、フィルタはデータベースを作成するために一括申請を受け付けることになる。ディズニーやユニバーサル(科学出版社やフォトストック、不動産ブローカーは言うまでもない)は、数十、数百のプラットフォームに膨大な著作物のカタログを慎重に手作業で入力していくわけではない。著作権フィルタがその目的を達成するためには、膨大なエントリを一度に受け入れなくてはならない。人間のモデレータがいちいちチェックするなどできやしない。

仮に、プラットフォームが著作権データベースのエントリをレビューするために、欧州労働人口の20%を雇用できたとしても、権利者はそれを認めることはないだろう。労働者が著作権侵害と適法な利用とを正確に判断するトレーニングを受けていないからではなく、申立のレビューに費やされる時間を絶対に受け入れられないためだ。

権利者の間では、セールスの大半が作品のリリース直後にもたらされると強く信じられている。そのため、作品のリリースと同時に海賊版コピーが入手可能になってしまうと、著しい損害を被ると考えているのだ(だからこそリリース前のリークに頭を悩ませている)。

たとえば、ディズニーの最新作が公開前にインターネットに流出したとしよう。人間のモデレータがちまちまと順番に著作権申立を処理することで貴重な時間を浪費するのではなく、一瞬のうちに海賊版コピーが削除されることを望むはずだ。

これら3つの事実を組みわせるとこうなる。

  1. インターネットユーザが公開できない「著作物」のブラックリストに誰でもなんでも追加できる。
  2. ブラックリストは一度に膨大な数の作品を登録できなくてはならない。
  3. ブラックリストに登録された新たなエントリは、即時有効にされねばならない。

だが、このシステムの悪用を防ぐための技術的専門家が置かれることはない。悪人たちはボットの軍勢を率いて、数百万の作品をブロックすることができるだろう(たとえば、クソ野郎がボットを使ってデータベースを爆撃し、シェイクスピア全集の所有権を主張し、人間のモデレータが排除するより早くブラックリストに登録してしまえば、シェイクスピアをインターネット上で引用できなくなる)。

しかし、よりやっかいなのは_標的型_の検閲だ。政治家は、恥ずべき政治スキャンダルを検閲したり、批判者を黙らせるためにテイクダウンを悪用してきた暴力警官同性愛者へのトロールもそうだ。

こうした連中がコンテンツIDを悪用したとしても、これまではインターネット全体を検閲することはできなかった。インターネット中を駆け巡って批判者を探し出し、1つ1つ手動でテイクダウンを申し立てなくてはならなかった。コンテンツIDはあくまでもYouTube上でしか機能せず、その「ノーティス・アンド・ステイダウン」データベースに作品を登録できるのは「信頼された権利者」に限られている。

しかし、第13条では、_誰も_が全体の検閲官として振る舞うことができ、_あらゆる_サービスがその検閲官の要請に応じなくてはならなくなる。「権利者」アカウントに登録し、投稿して良いものとしてはいけないものを登録すればよいだけだ。第13条は、こうした悪用を防ぐための手当てをまったくしていない。たとえサービスから追い出されたとしても、アカウントを作り直せば簡単にゲームを再開できる。

一部の権利者団体のロビイストは、こうした悪用の可能性を認めているものの、それでも「アーティストが収入を得られる」ようになるのだから、やる価値は十分にあると主張している。残念ながら、これも真実ではない。

これらのフィルタはオーバーブロッキングを起こし、悪用されやすいにもかかわらず、本当に対処したい連中には大して効果はない。

世界で最も強力なコンテンツフィルターー中国政府が「政治的にセンシティブな」コンテンツを抑止するために使用している検閲フィルタを見てみることにしよう。これらのフィルタは欧州企業が実装しなくてはならないフィルタとくらべると遥かにイージーである。中国の検閲フィルタは、世界最大規模の経済大国の政府から事実上無限の予算と助成金を受け、数千万人の熟練した技術者が暮らす環境で構築されているのだ。さらに、この検閲システムを破ろうとすれば、厳しい監視の対象となり、長期に渡り投獄され、拷問を受ける可能性すらある。

数週間前、トロント大学シチズンラボの研究者が発表した研究報告書にあるように、中国の検閲システムは極めて容易に破ることができる

著作権侵害を試みる人々にとって、フィルタを破ることは造作もないことだ。著作権の正しき側にいることを望みつつ、しかし自らが意図せずフィルターの悪しき側に置かれていることに気づいた多くの人々は、自らが克服できない問題を抱えていることに気づくだろう。袋小路を作り出すシステムを支えるテクノロジー大手の恩情にすがるしかなくなる。また侵害ユーザを捕らえるためにフィルタをさらに強化すれば、非侵害的コンテンツがブロックされる可能性がさらに高まってしまう。

検閲と著作権侵害の双方を横行させる一方で、適法な対話を塞いでしまうシステムというだけでも十分に酷いのだが、さらにアーティストにも悪影響を及ぼすものでもある。

コンテンツIDには6,000,000,000ドルものコストを要した。しかしこれは、第13条が求めるフィルタ全体からすればほんの一欠片にすぎない。欧州でオンラインプラットフォームを運営するためには、著作権フィルタリング技術に数百万ドルを投資せざるを得なくなり、競争的環境は大きく損ねられることになる。米国のテクノロジー大手に比べ、規模が小さい欧州企業が、著作権フィルタにかけられるコストはたかがしれている。

一方、米国のテクノロジー大手には十分な資金的余裕がある(実際、EFFをはじめとする団体が抗議の声を上げるなか、すでに著作権フィルタをソリューションとして開発した)。確かに彼らも規制は回避したいところだろうが、数億ドルを支払って競争がなくなるのであれば、彼らにとっては望ましい取引だ。

大手エンターテイメント企業は、米国テクノロジー大手に恒久的なインターネット支配ライセンスをそれなりの額で売り渡す取引に大喜びするだろうが、それがそのままアーティストの利益に繋がることはない。創造的作品の出版、プロモーション、流通、販売の競争が少なくなればなるほど、クリエイターの取り分はますます減らされていく。

私たちはより良い解決策を講じるべきだ。問題が独占的プラットフォーム(そして独占的ディストリビュータ)にあるのであれば、EUの競争法の問題として取り組むことで、市場支配力を悪用したクリエイターからの搾取を防せげるはずだ。しかし、著作権フィルタはそうした独占禁止とは真逆の方向性を持っている。エンターテイメント業界の「力なき者たち」や、表現のためのインターネットプラットフォームを犠牲にして、巨大なテクノロジー企業をさらに巨大化させてしまうのだから。

How the EU’s Copyright Filters Will Make it Trivial For Anyone to Censor the Internet | Electronic Frontier Foundation

Author: Cory Doctorow (EFF) / CC BY 3.0 US
Publication Date: September 11, 2018
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1238
9月12日に迫る欧州著作権指令案の投票、その偽りの譲歩案と真の脅威 https://p2ptk.org/copyright/1235 Mon, 10 Sep 2018 16:54:51 +0000 https://p2ptk.org/?p=1235 アップロードフィルターとリンク税に揺れる著作権指令案。欧州議員がその修正案を精査できる時間は1週間に満たない。

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Electronic Frontier Foundation

7月、数百万の欧州市民が、ソーシャルメディアに著作権フィルターを課し、ニュース記事へのリンクに使用料を支払わせ、さもなくば訴えることを可能にする新聞社のための新たな権利を創設する著作権指令案に反対票を投じるよう欧州議員に訴えた。欧州議員はその呼びかけに耳を傾け、通常の手続きを否決し、条文の再投票を実施することを決定した。

現在、彼らはさらに複雑な選択を迫られている。その内容を精査する時間はもはや1週間に満たない。

水曜の正午(中央ヨーロッパ標準時)、751名の欧州議員は「デジタル単一市場における著作権」指令の203の修正案に投票を行う。そのなかには、真っ当な改革案もあれば、一見すると差し障りのない文言に見えて、以前に拒絶された草案にあった著作権フィルターやリンク税をさらに強化するものも含まれている。

あなたがインターネットの仕組みを理解する欧州市民――あるいはそうした知り合いがいる――であれば、欧州議員にどの選択肢を、どの修正案を選ぶべきかを正直に教えてあげられるだろう。

あなたの訴えは、音楽業界やマスメディアが仕掛ける新たなロビー活動や、インターネット大手の葛藤を抱えた曖昧な態度、さらには激しくロビーされている偽りの譲歩案と戦わなければならない。だが、状況は7月よりもだいぶマシだ。我々は7月の戦いで勝利した。さらにもう1度勝利しなくてはならない。

ここでは問題の所在を明らかにし、あなたがいま欧州インターネットの目前に迫る氷山を避けるために何ができるかをお伝えしたい。

何が問題なのか

欧州議員がなすべきは、欧州連合の別の統治機構である欧州委員会と欧州理事会の提案を修正――願わくば改善――することである。残念なことに、当初から酷かった「デジタル単一市場の著作権」指令は、修正案によって更に酷くなった。著作権フィルターの義務づけ(第13条)や、報道メディアにニュース記事のリンクテキストをライセンスし、コントロールする新たな権限(第11条)を与える文言が盛り込まれている。

修正案の文言の多くは、アクセル・ヴォス議員が法務省委員会で提出したものだ。7月5日、議会はヴォス議員の修正を加えず、元の提案に差し戻すことを決定した。そして、各会派に新たな修正案の提出を求め、9月12日にその投票を実施することとなった。

これら修正案の提出締切は、投票日のちょうど1週間前、9月5日であった。まさにその日こそ、欧州議員とそのアドバイザーが、欧州委員会・理事会の元の条文案に寄せられた200を超える修正案を目にする最初の日であった。

ヴォス議員の偽りの「妥協」案

アクセル・ヴォス議員が反対派との妥協点を見つけるという仄かな希望は、先週彼が「譲歩案」を公表したことで消え去った。ヴォス議員は取ってつけたように「オンライン百科事典」と「オープンソースコード共有サイト」を彼のプランから除外し、問題は解決されたと主張した(WikipediaとGithubはこれを是としておらず、依然として第13条への反対の声を上げている)。この変更は一見する友好的に見えるが、むしろその逆で、第13条をさらに改悪するものだ。

ヴォス議員の第13条修正案には、著作権フィルターの明示的な言及は含まれてはいない。ただし、それを導入しなければ、コミュニティコンテンツを共有するウェブサイトが生き残れないような文言に変更されている。たとえ、最大限にユーザをフィルタリングしたとしても、適法状態を維持するのは極めて難しくなる。

欧州指令第2001/29号の第3条1項および2項に影響を及ぼすことなく、オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダは、公衆とのコミュニケーションを行う。

(ユーザではなく)共有ウェブサイト自身を「コミュニケーション行為の主体」として定義することにより、ユーザが著作権侵害で訴えられた場合にウェブサイトを守る責任制限を剥ぎ取ることができるのだ。共有サイトは突如として、リミックスからミームに至るまで、ユーザによる権利管理上の過ちのすべてに一括して責任を負うことになる。

別の新たな条文においても、サイトは掲載するすべてのコンテンツについて事前的ライセンス交渉を行うことで、存続が可能になると述べられている。つまり、完璧な著作権フィルターを実装する限りにおいては、大手音楽レーベルやハリウッドスタジオからの訴訟を回避することができるというわけだ。もちろん、彼ら以外から訴訟を起こされる可能性も大いに残されている。

改善どころか、むしろ酷くなっているのだ。

ヴォス議員の第11条修正案にも偽りの譲歩が含まれている。彼の修正案では、「個々の単語(individual words)」をニュース記事のリンクに使用できるとしているが、リンク税に反対する人々はこれを譲歩とは捉えていない。ヴォス議員の提案は、間違っても2つの連続した単語を引用せずに、脅迫状スタイルの単語の切り貼りをしている限りにおいては、ニュース記事のリンクに独自のテキストを付随させることができるだけだ。

提出されているより良い提案

これらの条項は、テキストから削除されねばならない。すでに、欧州懐疑主義の右派・左派双方がこの立場をとっている。

さらに優れた譲歩案が、ドイツ海賊党のジュリア・レダ議員や、欧州議会でデジタル問題を専門的に扱ってきたオランダのマリエッテ・シャーケ議員から提案されている(シャーケ議員の提案はこちら。レダ議員の提案は、他の提案との対照表とともに彼女のウェブサイトで提示されている)。

投票手続きの変更がなければ、欧州議員は9月12日、条項の削除と、レダ/シャーケ修正案の双方に投票することになる。最初に各条項の削除について投票を行うが、そこで条項の削除ができなかったとしても、欧州議員は修正案について投票を行うことになる。

我々はすべての議員に、第13条および第11条を完全に削除するよう求めている。これは、過去20年近くに渡り、政治的な立場を超えて、業界から広く支持されてきた体制の賛否を問う投票となる。たとえ削除に至らなかったとしても、レダ/シャーケ議員の修正案が代替案としては最良の選択肢となる。

ユニバーサル・ミュージック・フランスの元CEOで、自身も音楽レーベルを所有するパスカル・ネグレ氏は今週、ル・モンド紙のコラムでこのように述べている。

「音楽業界で35年の経験を積んだ私には、この指令がアーティストに、業界に、そして最終的には公共の利益にとって、不利益をもたらすものと思えてならないのです」

あなたにいまできること

さまざまな政党や圧力団体が投票にかけられる修正案それぞれ――我々があまり取り上げてこなかったものではデータマイニングなど――の詳細を伝えてくれるだろう。

現時点で、あなたはこの指令が抱えている問題点をどう扱うべきかは理解しているはずだ。

今すぐ欧州議員に連絡を取り、欧州域内に知り合いがいれば、その人にも議員に声を届けるよう伝えてほしい。

SaveYourInternet.euのサイトや議会のウェブサイト(地図をクリックするだけ)で、地元の議員の情報を見つけられるはずだ。

あなたが欧州域外にお住まいの場合には、このブログ記事を欧州の友人や家族に共有し、危機が迫っていることを教えてほしい。投票日まであと数日しか残されていない。

ヴォス議員の修正案を否決し、第11条と第13条を削除し、著作権フィルターを否決し、報道スニペットの付随的権利を否決するよう伝えてほしい。そして、あなたの議員に、アップロードフィルタリングやリンクの制限を回避する選択肢を選ぶよう、後押ししてほしい。

Fake Compromises, Real Threats in Next Week’s EU Copyright Vote | Electronic Frontier Foundation

Author: Danny O’brien (EFF) / CC BY 3.0 US
Publication Date: September 7, 2018
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1235
Facebook「Sonyがバッハの作品を所有しているため、Facebookではバッハを演奏できません」 https://p2ptk.org/copyright/1231 Sun, 09 Sep 2018 15:18:03 +0000 https://p2ptk.org/?p=1231 ピアニストがFacebookにアップロードしたバッハの演奏が、著作権侵害を理由に削除された。

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BoingBoing

ピアニストのジェームズ・ローズは、自身のFacebookアカウントにバッハの曲の演奏をアップロードした。しかし、それはうまくいかなかった。彼の演奏はFacebookの著作権フィルターシステムにより削除され、著作権侵害だと彼をなじった。彼の演奏は、300年前にこの世を去った作曲家の作品を所有すると主張するSony Music Globalの権利を侵害しているのだという。


これはまさにこれから起こりうる、差し迫った未来を表している。数日後、欧州議会はすべてのオンラインサービスにコンテンツIDスタイルの検閲を義務づける指令案に投票を行う。これはビデオのみならず、オーディオ、テキスト、静止画、コード、あらゆるものが対象となる。

先週、ドイツの音楽教授、ウルリッヒ・カイザーは、クラシック音楽の自動検出問題の調査結果を公表した。彼はバルトークやシューベルト、プッチーニ、ワーグナーら作曲家の作品の投稿はほぼ不可能であることを明らかにした。いずれも大小さまざまな企業が、パブリックドメインとなっているはずの作品に著作権を主張しているためだ。

欧州議員にこの大惨事を回避するよう訴えるための時間はもう残り少ない。

いますぐ、EUの友人たちにSave Your Internetを伝えてほしい。手遅れになる前に。

The future is here today: you can’t play Bach on Facebook because Sony says they own his compositions / Boing Boing

Author: Cory Doctorow / BoingBoing / CC BY-NC-SA 3.0 US
Publication Date: September 5, 2018
Translation: heatwave_p2p

追記(September 10, 2018)

タイトルを修正。修正前は「バッハの著作権を主張するSony Music、ピアニストのFB投稿を削除」。

うかつにも誤解を招くタイトルをつけてしまって申し訳ない。この記事は、Sonyを批判しているものでも、Facebookを批判しているものでもない。Sony Music GlobalがFacebookのシステムの不完全さによって、意図せず著作権(ないし隣接権)を主張しているかのように振る舞ってしまっているということである。

ここでの批判のフォーカスは、欧州が検討を進めている著作権指令案第13条にある。現在の提案では、テキスト、オーディオ、画像、コードを含む、あらゆるCGMプラットフォームに著作権侵害の自動検出・削除機能(アップロードフィルター)の導入を義務づけることになっている。

上述したように、Facebookの自動検出システムや、YouTubeのコンテンツIDをはじめとするコンテンツフィルターは著作権侵害と、フェアユースや引用をはじめとする権利制限を受ける利用とを区別できない、という致命的な問題を抱えている。

さらに深刻なのは、FacebookやYouTubeのような莫大な資金を抱えているテクノロジー企業ですらこの問題を解決できてはおらず、ポンコツとすら揶揄される程度でしかないという点である。スタートアップをはじめ、あらゆる企業のCGMサービスが、GAFA以上の自動検出システムを作り上げられるとは思い難い。しかも、違反を避けたいがあまり、その判断はより安全寄りーーつまり疑わしきは削除という方向に偏ることは必然だ。アップロードフィルターが義務づけられれば、上記の記事の事例と同様の、あるいはもっと酷い事例が頻発することは避けられない。

にもかかわらず、こうした問題を十分に考慮することなく、世界中のあらゆるプラットフォームに適法な著作物の利用ですら検閲されてしまうコンテンツフィルターを義務づけてよいはずがない、というのがアップロードフィルター反対派の主張であり、この記事の背景にある文脈であった。

音楽業界ロビーがアップロードフィルターの導入を必死に訴えてきたということもあり、当初のタイトルは、音楽業界を煽り気味に揶揄する意図があったことは否定できない。申し訳ない。

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1231
Creative Commons:著作権は「知」と「コモンズ」を守るものでなくてはならない https://p2ptk.org/copyright/1227 Sun, 09 Sep 2018 14:50:49 +0000 https://p2ptk.org/?p=1227 Creative Commonsは著作権フィルターやリンク税を含む著作権指令案を阻止するよう訴えている。

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以下の文章は、Creative Commons Blogに掲載された”It’s now or never: EU copyright must protect access to knowledge and the commons“という記事を翻訳したものである。

クリエイティビティへのアクセスやその共有の未来を左右するEU著作権改革に関する重要な決定が差し迫っている。9月12日、欧州議会はデジタル単一市場における著作権指令案への投票を行う。

あなたがEU市民であれば、https://saveyourinternet.eu/にアクセスし、欧州議員に有害な第13条アップロードフィルターを阻止し、バランスの取れた著作権改革を支持するよう求めてほしい

欧州議員は、オンラインプラットフォームにアップロードされた全てのコンテンツをスキャンし、登録された著作物と一致した場合に、その公開を防ぐアップロードフィルターを義務づける第13条に反対票を投じるべきである。アップロードフィルターは、著作権侵害と、著作権の例外・制限にもとづく適法な著作物の利用とを区別できず、それゆえ表現の自由を制限する。ビデオのリミックスやミーム、パロディ、コード、さらにはオープンにラインセスされたコンテンツを使用した作品の共有すら危険にさらされることになる。

欧州議員は、報道コンテンツのスニペットの使用に対し、パブリッシャーからライセンスを得たり、使用料を支払わなければならないという不必要で非生産的な報道出版者の権利を持ち込む第11条に反対票を投じなければならない。

欧州議員は、教育に関する著作権の制限を定めた第4条、「読む権利はマイニングする権利」とするようテキスト・データマイニングに関する権利制限を定めた第3条を含む修正案を支持するべきである。ほかにも、リミックスやユーザ生成コンテンツの共有を拡大する権利制限や、公共空間にあるアートの写真を撮影し、共有できる一般的な慣習を可能にする「パノラマの自由」など、支持されるべき修正案がある。

欧州議会の法務委員会は、6月に極めて有害な措置を含む指令案を承認したものの、7月5日の総会では、この指令案にさらなる議論を重ねるよう採決された数十万の人々が声を上げ、第13条が義務づけるコンテンツフィルターのような後ろ向きな提案を取り下げ、著作権をより進歩的なものとするよう求めたためだ。

著作権指令の大半は、エンターテイメント産業や出版業界といった、強力な著作権者の利益という狭い範囲に適うよう調整されている。こうした強力なプレイヤーたちは、デジタル技術とインターネットがもたらした革新的な変化による減収を抑止したいと考えている。

しかし、彼らの声は、インターネットにおけるクリエイティビティの多様性を代表するものではない。インターネットでは誰もが創作者である。我々は知識を、芸術的、政治的表現を、写真やホームビデオを、ニュースやコードでさえも、WikipediaやYouTube、オープンアクセスジャーナル、オンラインの学習サイトを始めとする世界規模のコモンズで、誰かと共有したいのだ。

研究や教育へのユニバーサルなアクセス、そして新時代の開発、成長、生産性を牽引する文化への参加という我々のビジョンを達成するためには、アクセスや共有を支援する進歩的な政策こそ必要とされている。

いま欧州には、特定業界の利益だけでなく、すべてのクリエイターとユーザを真に保護する、進歩的な著作権のルールが必要とされている。欧州議員は、クリエイティビティやイノベーション、オンライン共有の未来を懸念する無数の声に耳を傾けなくてはならない。

手遅れになる前に、いますぐ、あなたの声を伝えてほしい。

It’s now or never: EU copyright must protect access to knowledge and the commons – Creative Commons

Author: Timothy Volmer (Creative Commons) / CC BY 4.0
Publication Date: September 9, 2018
Translation: heatwave_p2p
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1227
EU著作権フィルター論争にYouTubeが参戦 https://p2ptk.org/copyright/1220 Sat, 08 Sep 2018 15:30:04 +0000 https://p2ptk.org/?p=1220 欧州著作権指令案の投票が9月12日に迫るなか、静観を続けてきたYouTubeがついに口を開いた。

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TorrentFreak

YouTubeの最高ビジネス責任者が、侵害コンテンツに対するプラットフォームの責任を強化し、フィルタリングを義務づけるEU著作権指令案第13条の議論に加わった。ロバート・キンセル氏は、この提案がプラットフォームによるユーザ生成コンテンツのホスティングを阻害し、クリエイティブ・コミュニティを損ねる可能性があると主張する。

来週、欧州議員は、論争を巻き起こしている著作権指令案第13条の投票を再び行う。

反対派は、この著作権指令案が違法アップロードを防止する厳格なアップロードフィルターの導入を、YouTubeをはじめとするプラットフォームに強制するものだと批判している。こうしたシステムは、フェアユースなど適法な著作物を利用を判別できず、クリエイティビティを阻害するものだと主張している。

一方、賛成派は、YouTubeはセーフハーバーを利用したフリーライダーであり、第三者のコンテンツをフェアに扱うべきだと主張する。

音楽業界の理屈では、第13条がプラットフォームの責任を強化することで、最大のターゲットであるYouTubeに対し、通常よりも高い音楽ライセンス料の支払いを強制できるという。業界関係者は、YouTubeからセーフハーバーを引っ剥がすことこそが、アーティストへの公正な補償をさせる唯一の方法だという。

この数ヶ月、音楽業界とテクノロジー業界、そしてインターネットの自由の唱導者らによる議論が激化している。しかし、YouTubeとその所有者であるGoogleは比較的静観を保ってきた。自らがこの規制の標的にになっていることを考えると、いささか不自然ではある。

しかし現在、YouTubeの最高ビジネス責任者のロバート・キンセル氏が議論に参入し、第13条が通過すれば、クリエイティブな環境がさらに制限されることになると警告している。

「オープン・インターネットは、伝統的なメディアゲートキーパーという障壁を排除し、クリエイターやアーティストに世界規模のあたらしいクリエイティブ・エコノミーをもたらしました。情熱を共有し、世界中でファンを見つけ出し、ビジネスを構築するアイデアが万人に開放されたのです」とキンセル氏はYouTubeクリエイターブログで述べている。

「9月12日の新たな欧州著作権指令案の投票に向け、欧州議員が準備を進めていますが、それが善意によるものだとしても、危機をもたらすと感じています」

実際、提案の一部――特に「第13条」は、プラットフォームによるユーザ生成コンテンツのホスティングを阻害し、その結果クリエイティブ・エコノミーを害することになると見られている。

キンセル氏は、この指令案を通過させてしまえば、クリエイティビティは鈍り、すべてのYouTubeユーザに悪影響がもたらされると警告する。

プラットフォームが厳格な責任を負うことになれば、YouTubeのクリエイターたちの収益がリスクにさらされることになる。反対派は、YouTubeのようなサイトが、用心しすぎるあまり、判断の難しいコンテンツを検閲(フィルタリング)するようになってしまうと長らく警告してきた。

YouTubeの最高ビジネス責任者は、同社が著作権者を支援するためのテクノロジーに投資してきたことを改めて訴えている。

同社のコンテンツIDやコンテンツマッチシステムは、著作権者の求めに応じて、検出されたコンテンツの収益化や削除を可能にしている。

「著作権者は自分のコンテンツを管理しています。彼らはツールを使って、作品をブロックまたは削除したり、YouTube上にそのまま残して広告収入を得ることができます。90%以上のケースで、権利者たちはコンテンツを残すことを選択しています」と彼は記している。

「このような新しいクリエイティビティやファンとのエンゲージメントのかたちを可能にすることで、世界規模のプロモーションが可能になり、さらに多くの収益がもたらされています。世界的なアーティストを例にとっても、ドレイクの「In My Feeling」やMaître Gimsの「Sapés Comme Jamais」のように、バイラルしたファンメイドのダンスビデオのなかでその楽曲が使われています。Dua Lipaのキャリアはカバー動画からスタートしていますし、Alan Walkerは自身の楽曲『Fade』をユーザ生成コンテンツやビデオゲームで使用することを許し、世界にファンを増やしています」

今週、音楽業界関係者との非公式協議において、TFはなぜコンテンツIDやコンテンツマッチのようなツールでは、YouTube上の著作権侵害問題を解決できないのかと質問した。これらのシステムの有用性については認めつつも、YouTubeによるコンテンツの過小評価を是正し、公正なライセンス料を支払わせるためには、第13条による責任強化が唯一の方法だと彼らは答えた。

音楽業界が電子商取引指令のセーフハーバー保護からYouTubeを除外しようとする一方で、YouTubeは第13条の影響がインターネットで最も人気のあるビデオサイトだけに留まるものではないと警告する。

「この著作権指令案の影響を受けるのは、YouTubeのクリエイターやアーティストだけにとどまりません。インターネット上のありとあらゆるユーザ生成コンテンツにも影響します。だからこそ、多数の人々が懸念を表明しているのです」

「個人や組織(European Digital RightsやInternet Archiveなど)、企業(PatreonやWordpress、Mediumなど)、インターネットを作り上げたアーキテクトやパイオニア(ティム・バーナーズ=リー卿ら)、表現の自由を担当する国連特別報告者が、声を上げています。Phil DeFranco、LeFloid、TO JUZ Jutroをはじめ、インターネット中のクリエイターが、創造し、表現するための権利のために立ち上がっています」

そのために、キンセル氏は第13条の反対派に、ソーシャルメディア(#SaveYourInternet)で自らの意見を訴え、ChangeCopyright.orgを通じて議員に声を届けることを推奨している。極めて重要な投票が9月12日に迫っている。これから数日間、議論はさらに白熱していくのだろう。

YouTube Chief Says Article 13 “Undermines Creative Economy” – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: 2018/09/09
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Musickness
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1220
YouTubeのコンテンツIDを使えばベートーベンやワーグナーの著作権を主張できるらしい https://p2ptk.org/copyright/1215 Thu, 06 Sep 2018 17:02:54 +0000 https://p2ptk.org/?p=1215 ドイツの音楽教授がYouTubeにアップロードした教育ビデオに、ベートーベンやワーグナーの権利侵害の申立が寄せられた。いずれもパブリックドメインのはずなのに。

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TorrentFreak

YouTubeのコンテンツIDシステムは、著作権者を保護することを目的としているが、時に公共の利益を損ねる存在でもある。ドイツの音楽自らの教育的ビデオへの著作権侵害の申立を受けた教授ウルリッヒ・カイザー博士は、ベートベンやワグナーら歴史的作曲家のパブリックドメインの演奏が、YouTubeのアップロードフィルタにおいて安全ではないことを明らかにする実験を行った。

YouTubeは著作権者を保護するため、許可なく投稿されるビデオに著作権侵害のフラグを立てたり、無効にしたりする高度な海賊版検出システムを実装している。

コンテンツIDとして知られているこのシステムは、たいていはうまく機能しているものの、完璧とは言えない。

アップロードされたコンテンツがパブリックドメインであるのか、あるいは『フェアユース』によって保護された利用であるのかを判断できるほどの能力を持ち合わせてはいないのだ。

自動化処理が間違いを起こすのは世の常ではあるが、それが明確なパターンを持つ場合には問題になる。特に、それが明らかに公共の利益に干渉する場合には。

この問題は、ドイツの音楽教授、ウルリッヒ・カイザー博士によって再び強調されることになった。Wikimediaの記事や、それを再編集したArs Technicaの記事のなかで、博士はYouTubeに投稿した自身の教育ビデオに著作権侵害のフラグを立てられた経緯について説明している。

「このビデオは、私のプロジェクトを説明したもので、事例となる音楽をBGMとして流しています。アップロードしてから3分と経たないうちに、コンテンツIDからこの動画に申立があったという通知を受け取りました」とカイザー博士は言う。

しかし、このビデオでの音楽の使用は著作権侵害にあたるものではなかった。17世紀にハインリヒ・ビーバーが作曲し、その音源も1962年に公表されたものであるため、ドイツ法に従えばパブリックドメインとなる。博士がクレームに異議を申し立てると、ビデオはすぐに復旧された。しかし、問題はそれで終わりではなかった。

コンテンツIDプロセスの信頼性に興味を持ったカイザー博士は、テストアカウントを作成し、この現象が偶発的なものなのかを調べることにした。

「元のアカウントとは別に『Labeltest』というアカウントを作り、著作権フリーの音楽の抜粋を共有してみました。するとすぐに、バルトークやシューベルト、プッチーニ、ワグナーといった著作権が存在しないはずの曲にコンテンツIDから通知が届きました」

「YouTubeは何度も何度も、私がはるか昔に亡くなった作曲家の著作権を侵害していると通知してきました。そのすべてがパブリックドメインであるにもかかわらずです」

カイザー博士は、これらすべてのクレームに、いずれの作曲家も古くに亡くなっており著作権侵害にはあたらないと反論した。著作者は遠い昔にこの世を去り、その音源もすべて1963年以前のもの――つまり、ドイツ法ではブリックドメインに該当するものであった。

一方、YouTubeのコンテンツIDはベートーベンの作品も検出したが、こちらは広告がつけられることも、削除されることもなかったという。

「とにかくたくさんの申立を受け取りましたが、ベートーベンの交響曲第5番に関する申立には、次のようなメッセージが添えられていました。『あなたのビデオから、著作権のあるコンテンツが検出されました。申立人はあなたのYouTubeビデオでのコンテンツの使用を許可しました。ただし、広告が表示される場合があります』」

最終的に、カイザー博士はパブリックドメインコンテンツに寄せられた大半のクレームを排除することに成功した。しかし、クレームが取り下げられたにもかかわらず、彼がつけたはずのクリエイティブ・コモンズ・ライセンスが適用できなくなったという。彼が当初目的としていた教育ビデオの共有が俄然難しくなってしまった。

カイザー教授は、コンテンツIDをはじめとするアップロードフィルターによって、文化的・教育的コンテンツの配布に深刻な影響がもたらされる可能性があると結論づけている。

「コンテンツIDのようなフィルターは、大量のユーザ生成コンテンツをホストするプラットフォームにとっては有用かもしれませんが、私の経験が示すように、インターネット上の教育的・文化的リソースの後退を招く重大な欠陥を抱えています」

カイザー博士は、欧州議会議員に対し、広範囲に及ぶアップロードフィルターを義務づける前に、このような悪影響を念頭に置くよう強く求めている。EUのアップロードフィルターに関する投票を数日後に控え、このメッセージは第13条の反対派には音楽を奏でているように聞こえるだろう。

YouTubeを批判するのは簡単だが、このケースでは、一部の出版社がパブリックドメインの作品に著作権を主張していることのほうが大きな問題であろう。もしかすると、いずれYouTubeは間違ったクレームに対するストライクシステムを用意するかもしれない。

Note September 4: 同様の問題がFacebookでも生じている

Update: 元の記事からは、ビデオが削除されたのかは判断できない。混乱を避けるため、本稿公開後にタイトルを修正した。

Update2: ウルリッヒ・カイザーは、問題のビデオが(いまのところ)削除されていないことをTorrentFreakに確認した。一部、不正確な報道もあるが、ビデオにはクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY)を適用できない以外の制限は課せられていない。

カイザー博士がここに記しているように、2つのビデオへの申立を排除できなかったという。

YouTube’s Content-ID Flags Music Prof’s Public Domain Beethoven and Wagner Uploads (Updated) – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: September 3, 2018
Translation: heatwave_p2p
Material of Meader Image: W.J. Baker
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1215
我々が本当に必要だったもの「表現の自由を犠牲にしない著作権改革」 https://p2ptk.org/copyright/1211 Thu, 06 Sep 2018 12:13:02 +0000 https://p2ptk.org/?p=1211 著作権フィルターやリンク税が物議を醸しているEU著作権指令案。その運命を決める投票が今月12日に迫っている。

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以下の文章は英国のデジタル権利団体「Open Rights Group」の”We need copyright reform that does not threaten free expression“という記事を翻訳したものである。

物議を醸す著作権指令の行方を左右する投票が、9月12日に迫っている。この半年で3度目となる投票では、自動化されたゲートキーパーにあらゆるコンテンツの承認/拒否を決定させる第13条――あるいはさらに酷いもの――に新時代の扉を開かせるかどうかを欧州議員が投票する。

経済というレンズを通すと、この指令をめぐる議論は権利者とテクノロジー企業との対立と見られてきた。しかし、一般市民、インターネットのパイオニア、人権団体、クリエイターらの声が高まるに連れ、それまで無視されてきた人間的側面を含めた議論が巻き起こっていった。

Open Rights Groupは、インターネットにおける表現の自由という基本的権利を損ねる第13条(あるいは提案されている同様の修正案)に反対する。

今夏、欧州議員がこの指令の拙速な進行を否決したことで(訳註:日本語記事)、表現の自由の守護者たちは業界ロビイストに対する勝利の雄叫びを上げた。そして、その勢いはまだ続いている。英国の欧州議員の多くが態度を決めあぐねていることもあり、英国市民は、この指令の行方に大きく影響を及ぼすことができる。英国の議員による投票は、他のEU加盟国とは異なり、会派の影響はそれほど強くない。

今回、新たな修正案が追加されてはいるが、第13条と同様の原則を含むものが再び投票にかけられることになる。修正案には以下のものが含まれている。

プラットフォームの責任強化

インタネットプラットフォームがユーザのコンテンツに直接責任を負うことになれば、彼らは事実上、著作権の執行者として振る舞うことになる。これを回避することはほぼ不可能であり、プラットフォームは自動フィルターを用いてすべてのユーザコンテンツを監視しなくてはならない。しかし、企業は表現の自由を取り締まるには不適任である。プラットフォームは、罰則を避けようと、ユーザコンテンツを過剰にブロックすることになるだろう。

アップロードフィルタの暗黙的または明示的な導入

自動フィルターが文脈を理解する能力に欠けていることはこれまで何度も示されてきた。しかし、研究や批評、創作的作品、パロディなどを許す著作権の例外を判断するためには、文脈をきちんと理解できなくてはならない。アルゴリズムが間違った判断をすれば、著作権侵害コンテンツと共に、無辜の表現がブロックされ続けることになる。

全体監視の導入

あらゆるユーザコンテンツの全体監視は、自由でオープンなインターネットを後退させる。また、第13条で規定されているテキスト、オーディオ、ビデオ、イメージ、ソフトウェアといった幅広いフォーマットを網羅的に監視することは技術的に実現不可能である。

言いたい放題の第13条の唱導者、アクセル・ヴォス欧州議員は、「我々は検閲マシンを導入したいのではない。欧州議会の誰一人としてそんなことは望んでいない」と言う。

第13条における提案は、インターネットを自由かつクリエイティブな共有の場から、コンピュータが警告なしにあらゆるものを削除できる場へと変える。これは著作権執行のためとはいえ、あまりにも大きすぎる代償だ。基本的人権とデジタル権を犠牲にすることのない著作権リフォームが必要とされている。

英国市民の方は、9月12日水曜の投票までに、欧州議員にコンタクトしてほしい。以下に用意したツールを使えば、簡単にアクセスできる。

https://action.openrightsgroup.org/robocopyright-returns

英国外にお住まいの方であれば、以下のウェブサイトにアクセスしてほしい。

https://saveyourinternet.eu

Open Rights Group – We need copyright reform that does not threaten free expression

Author: Mike Morel (Open Rights Group) / CC BY-SA
Publication Date: September 04, 2018
Translation: heatwave_p2p
Header Image: François Grimonprez
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Wikipediaはなぜリンク税と著作権フィルタに反対しているのか https://p2ptk.org/copyright/1063 Wed, 04 Jul 2018 12:23:55 +0000 https://p2ptk.org/?p=1063 著作権フィルタの義務づけ、リンク税など、インターネット全体を巻き込むEU著作権指令案にWikimedia財団が強い反対の声を上げている。

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欧州連合で新たに提案されている著作権パッケージは、自由な情報共有という基本的権利に対する脅威である。今こそ、声を上げよう。

Wikimediaは、市民社会のステークホルダーテクノロジストクリエイター、そして人権の擁護者の大きなムーブメントにとって不可欠な存在だ。彼らはみな、文化、進歩、民主主義のための自由でオープンなウェブの重要性を認識している。私たちのムーブメントは、すべての人のオンラインの自由を促進することを目指している。世界中で言論の自由、そして知へのアクセスが制限されつつある時代――それはWikimediaのミッションとビジョン、そのプロジェクトであるWikipediaに直接的な驚異をもたらす――において、私たちのパブリックポリシーの実現に向けた取り組みますます重要性を増している。

提案されているEU著作権指令に強く反対し、欧州議会議員に先日法務委員会が採択した提案の再考を求めているのはそのためだ。これら欠陥をはらんだ提案は、すべての人の表現の自由の権利や、インターネットにおける欧州市民の福祉を害することになるため、私たちは強く懸念している。

欧州議会は来週(訳註:7月5日)、法務委員会が可決した指令案の手続きを進めるかどうかについて本会議で投票を行うことになっている。欧州議員が否決すれば、現在の指令案の問題部分を修正することは可能だ。これが最後のチャンスになるかもしれない。

私たちは、インターネットの自由、知へのアクセス、オンライン・コラボレーションに悪影響をもたらすEU著作権パッケージ案に強く反対する。私たちは次のように考えている。

  • プラットフォームに対するアップロード・フィルタ実装の義務化は、表現の自由やプライバシーへの深刻な脅威となる。私たちの基礎をなすビジョンは、Wikimediaの各プロジェクトを越えて、ウェブ全体の知の自由な交換にある。
  • 報道出版社がニューススニペット(抜粋)の使用を制限できる新たな排他的権利を持つことにより、世界中の最新の出来事へのアクセスや共有が困難になり、Wikipediaの投稿者によるネット上の記事の引用が難しくなる。
  • この提案は、ユーザの権利を手当てすることなく、パブリックドメインへの強力なセーフガードもなく、人々が研究や文化に参加できるようにする例外を規定してもいない。

この著作権パッケージが成立してしまえば、世界中の人々が自由にアクセス可能なコンテンツが大幅に減少することになると考えられる。著作権という幅広い概念を侵害しうるコンテンツを予防的にフィルタリングするためのコストは極めて高く、コンテンツの決定権がごく一握りの大手プラットフォームに集中することになりかねない。

Wikimediaは草案が公表された2年前から、この間違った著作権リフォーム案に反対してきた。当初、私たちはアップロード・フィルタの義務化がもたらす影響について警告し、パブリックドメインに緊急に必要とされるセーフガードを求めてきた。最近では、義務的な自動コンテンツ検出がコラボレーションや表現の自由に与える悪影響について強調してきた。

全世界のWikimediaコミュニティが、EU著作権パッケージに強く反対している。5月にはドイツとブルガリアのWikipeidaコミュニティが、著作権指令案第13条に反対するバナーを掲載した。フランスエストニアドイツデンマークスペインのWikimedia支部をはじめ、複数の欧州Wikipeidaユーザ組織が、6月12日の著作権パッケージに反対するDay of Actionに参加したり、ブログ記事を投稿したり、ハッシュタグ「#SaveYourInternet」をつけたツイートをしている。ドイツ支部では、ベルリンの屋外でイベントが開催されており、現在、さらに多くの言語コミュニティがこの問題に関わる方法を模索している。

この提案は、真に著作権を現代化するものでも、現実に法律を追いつけるためのものでもないため、私たちのミッションによって、重大な脅威となっている。Wikimediaは、誰もが自由に情報を共有し、Wikipediaやその姉妹プロジェクトの知識の収集に貢献することができて、そして、私たちがそのような自由や開放性を支持する場合にのみ、そのミッションを達成することができる。この著作権提案は、そのミッションとは矛盾している。

Wikimediaは非営利のウェブサイトとして運営されているので、、EU著作権パッケージの例外の恩恵に授かるかもしれないが、私たちのミッションは、自由でオープンなインターネットのエコシステムに強く依存している。

欧州議会には、この間違った著作権パッケージを来週の投票で否決し、バランスが取れた未来志向的な法律を作る機会について再検討するよう強く求める。遅すぎることはない。あなたにはこの間違った提案を止めるためにできることがある。changecopyright.orgからあなたの声を欧州議会議員に伝えよう。そしてあなたの身の回りの人たちに、ソーシャルメディアにその言葉を広げよう!

ウィキメディア財団・法務責任者
エイリーン・ハシュノフ

How the EU copyright proposal will hurt the web and Wikipedia – Wikimedia Blog

Author: Wikimedia Blog / CC BY 3.0
Publication Date: February 15, 2018
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Dr Mirko Junge / CC BY-SA 3.0
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欧州がWikipediaを殺す https://p2ptk.org/copyright/1033 Wed, 20 Jun 2018 09:59:18 +0000 https://p2ptk.org/?p=1033 EU著作権指令案第13条(著作権フィルタ)と第11条(リンク税)は、我々の知るインターネットを破壊してしまうかもしれない。

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Electronic Frontier Foundation

現在審議が進むEU著作権指令改正案は、6月20日または21日に委員会で採決が行われ、7月上旬または9月下旬に議会投票が行われることになっている。この指令は、欧州が長年抱えてきた問題を修正するものであると同時に、インターネット自体を破壊するほどの大きな問題を抱えている。

提案の第13条は、ユーザがテキスト、サウンド、コード、画像、動画、その他著作権の対象となる作品の公表できるウェブサイトに対し、ユーザがアップロードする全てのコンテンツを著作物のデータベースに照らしてフィルタリングすることが義務づけている。ウェブサイトは、ユーザがアップロードするコンテンツをデータベースを参照してフィルタリングしたり、完全な一致だけでなく部分的な一致も検出するためのテクノロジーをライセンスするために出費を強いられることになる。また、ウェブサイトは著作権者が著作物をリストに追加し、更新するための手続きを整えなければならない。

どれほど理想的な環境においても、大きな問題を抱えることになると言わざるを得ない。率直に言って、コンテンツマッチングのアルゴリズムは極めてひどい。著作権フィルタの米国版にあたるYouTubeのコンテンツIDシステムは、頻繁に適法なコンテンツを誤って著作権侵害と判定する一方で、エンターテイメント業界からは対策が不十分だと強い批判を浴び続けている。

インターネットユーザが、著作物をアップロードする正当な理由は無数にある。著作権で保護された音楽がBGMとして流れるナイトクラブ(あるいは抗議、テックプレゼンテーション)の映像をアップロードすることもあるだろう。あるいは、大好きなアルバムのジャケットがプリントされたTシャツを来た写真をTinderのプロフィールに設定することもあるだろう。オークションサイトに本の書影をアップロードすることもあるだろうし、部屋を貸し出す際にテレビの映像が映り、壁にポスターが貼り付けられた部屋の写真を投稿することもあるだろう。

さらに、ウィキペディアンには、著名人の写真、報道価値のあるイベントで撮影した写真など、素材をアップロードする特別な理由がある。

しかし、第13条が要求するボットは、完全ではない。それどころか、設計によっては、極めて不完全なものになりうる。

第13条は、著作権侵害を予防できなかったサイトを罰する一方で、システムを悪用する者を罰するようにはなっていない。つまり、誰か(たとえばWikipediaのコンテンツを自身のデータベースに組み込んだサイト)がWikipediaの全コンテンツをフィルタシステムにアップロードし、TwitterやFacebook、Wordpressにその所有権を主張すれば、それが間違いであると判断されるまで、誰もWikipediaのコンテンツを引用できなくなってしまうのだ。数百億もの著作権クレームのなかから、どれが本物で、どれがいたずら、虚偽、あるいは検閲の試みであるかを判別しなければならないのだから、この手の虚偽の申し立ては極めて容易になるだろう。

さらに、第13条が義務づけるポンコツ著作権ボットのせいで自分の作品が検閲されてしまえば、更に厳しい仕打ちが待っている。検閲された際に唯一取りうる選択肢は、プラットフォームに異議申立をし、それが認められることを祈ることだけだ。しかし、プラットフォームがその請願に耳を貸さなければ、訴訟を起こすよりほかなくなってしまう。

第13条はWikipediaを危機に陥れる。不誠実な人びとや無能な人々に自らの理解を超えるWikipediaのコンテンツをブロックさせる機会を与えるだけでなく、百科事典プロジェクトやWikipedia Commonsのような周辺プロジェクトのフィルタリングをWikipedia自身に義務づけるのだ。第13条の起草者は、Wikipediaをルールから除外しようとしていたが、ずさんな起草であったがためにそれに失敗した。例外は「非営利活動」にのみ限定されている。Wikipediaにあるすべてのファイルは、商用利用可能なライセンスで提供されている。

また、Wikipediaはウェブサイトの参照にも問題を抱えることになる。Wikipediaに必要不可欠な脚注に関しては、すでにリンクの脆弱性や非永続性が大きな問題になっているが、第13条が成立してしまえば、EUでホストされている情報は、熱心な著作権ボットのおかげで、すぐさますべて消え去ることになるだろう。米国版へのリンクも著作権侵害とされる。こうした理由から、ウィキメディア財団は第13条を批判する立場を表明している。

参照に関して言えば、欧州の著作権指令提案の問題はこれにとどまらない。第11条において、各加盟国は新たに報道の著作権を創設することになる。それが成立すれば、28カ国すべての制限と例外を満たすようにするか、ライセンスを取得しなければならない。これは本質的にあらゆるウィキにそぐわず、特にWikipediaにとっては致命的だ。

また、Wikipediaが参照リンクとして頼るサイトもまた、ライセンスを盾にソースの引用を制限されることになる。ニュースサイトは、批評家が分析、修正、批判のために記事を引用しようとしても、リンクライセンスを理由に阻もうとするだろう。そうなれば、議論の全体像を把握することが極めて難しくなってしまう。ストレートニュースにのみ関心を寄せる人には大した事ではないかもしれないが、重要な議論を長期的にまとめ、保存するプロジェクトには大打撃だ。

すべての加盟国が独自の引用とリンクのルールを作成するため、Wikipeidaの投稿は、相矛盾するルールのパッチワークを満たさなければならない。すでにいくつかの国では、記事が直接的に言及あるいは批評されていなければ、「さらに読む(Further Reading)」リストに加えることを禁じる厳しいルールを敷いている。

この問題含みの対策は、すでに試されたことがある。過去にもスペインやドイツでリンク税が導入されているがいずれも失敗し、もはや出版社ですら望んではいない。実際、このアイデアがうまく機能しているのは中国だけだ。中国では、言論統制システムの一部に、義務的な著作権執行ボットが添えられているのだ。

第13条と第11条は、熟慮に欠け、ずさんに起草され、実行不可能であり、そして何より危険である。公共のあらゆる領域にもたらされる副次的損害は計り知れない。インターネットは数億の欧州市民の生活に密着している。つまり、第13条の悪影響は全世界のウェブサイトやサービスに波及するのだ。欧州は、教育、雇用、家庭生活、クリエイティビティ、エンターテイメント、ビジネス、抗議、政治、その他あまたの活動を、無責任なアルゴリズムフィルタに委ねてはならない。もし、あなたが欧州市民で、この提案に懸念を持ったのなら、こちらから地元の欧州議員に声を届けてほしい

The EU’s Copyright Proposal is Extremely Bad News for Everyone, Even (Especially!) Wikipedia | Electronic Frontier Foundation

Author: Cory Doctorow (EFF)/ CC BY 3.0 US
Publication Date: June 7 2018
Translation: heatwave_p2p
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