習近平「琉球」発言に見る中共の野心 自衛隊が動かずして占領されるシナリオも

2023/06/22
更新: 2023/06/28

沖縄革命闘争の基地となり、知事が自衛隊・米軍の行動に制限をかけるなか、浸透工作に詳しい仲村覚氏は、「沖縄米軍を追い出すには、沖縄の人々に頑張ってもらう」のが中国共産党の作戦だと指摘する。習近平氏が揺さぶりをかけるなか、「知事外交」は大きな危険性を孕んでいると警鐘を鳴らした。

ーー習近平氏の「琉球」発言は揺さぶりとの見方もある。どう受け止めるか。

台湾侵略作戦の一つの布石だと見ている。台湾を中国が非軍事、もしくは軍事で乗っ取るときに、一番邪魔になるのが沖縄の米軍だ。しかし、米軍を沖縄から追い出すときに、中国は自ら手を下さない。

中国は米軍との戦闘を想定していない。米軍を追い出す際、沖縄の人々に頑張ってもらおうという作戦だ。私は、中国の台湾侵略が始まるときには必ず、沖縄の政治工作が活発化すると考えている。現在、この動きが本格的に動き始めたところだと認識している。

ーー沖縄の人々に頑張ってもらうとはどういうことか。

沖縄の人々が頑張るのと、国際世論戦の二重構造になっている。

国連の人権宣言では、先住民族の先祖伝来の土地では軍事活動を行ってはならないという規定がある。日本はこれに賛成しているため、沖縄の人々が先住民族だと認められれば、米軍や自衛隊基地の存在そのものが国連の規定に違反していると批判されかねない。

さらに、沖縄の人々は先住民族であるという国連勧告を根拠に条例を制定すれば、内政干渉のルートが一つ出来上がってしまう。しかし、今年の4月1日に沖縄県では反ヘイト条例が施行された。外国人差別に加え、「沖縄県民であることを理由とした差別的な言動」も対策を講じる対象として盛り込まれた。国連では過去に6回、沖縄の人々は先住民族だという勧告が出されている。そして、沖縄の人々に対するヘイトを犯罪として認めるよう国連の委員会が日本政府に勧告を出している。

ーー玉城知事は中国共産党の脅威をどう考えているのか。

中国共産党の脅威が高まるなか、日本政府は昨年、新たな安保三文書を策定した。沖縄でも自衛隊の配備が進められているが、玉城知事はブレーキをかけ始めている。対空ミサイルPAC3の配備に意見したほか、今度は敵基地攻撃能力を持つミサイルを沖縄に配備しないでほしいという要請書まで出している。

こうした中、玉城知事は7月に中国を訪問する。まさにシナリオ通りだ。玉城知事も沖縄の新聞も、台湾有事の際には抑止力で対抗するのではなく、話し合いで解決すべきだと主張している。訪中の際には、中国と琉球の古くからの友好関係を強調するだろう。

中国共産党も、琉球とは古くからの友好関係があるため、東シナ海を平和の海にしようと提案するかもしれない。そして沖縄に米軍基地も自衛隊もいらない、琉球の人々の幸せのために、基地のない平和な島にしようと囁くかもしれない。

ーー現地住民は防衛力増強についてどう考えているのか?

一括りで言うのは難しいと思うが、例えば与那国町長は危機感を持っていて、自衛隊を与那国島に誘致した。「もし米軍が与那国島の港を使うと言ったらどうするか」という町議会議員の質問に対し、糸数町長は、抑止力のために必要だから賛成する、と言い切った。

与那国島は有事のことを考えて、県を飛び越えて政府に対し直接シェルターの設置要望までしている。逃げ遅れた住民のことを考えて、シェルターの設置に向けたシェルター議連まで作って動いている。同じく石垣市長や宮古島市長も玉城デニー知事とは相容れない関係だ。

ーー首長の対応にこれほど違いが出るのはなぜか。

残念なことに、共産主義の革命闘争によって沖縄が陥落したと考えている。左派は辺野古という一つの争点を利用して、彼らの言葉でいう一点突破をして、県知事の地位を掌握した。そして今はそのほかの権力や人事をも握っている。かなり危ういフェーズに至っていると言えよう。

沖縄県は、堂々と税金を使って日本で革命闘争を行う基地になっている。本来であれば国防の最前線であるはずの地域だが、沖縄県政は日本政府に対立的、非協力的な態度だ。

習近平氏の「琉球」発言も、日本にとっては国家として崖っぷちに立たされているほど危機的な話だ。玉城知事が地域外交と言って訪中するのだが、これがどのくらい危険なのかということを政府はまだよくわかっていないのではないかと深く懸念している。

ーー玉城知事の知事外交は日本の安全保障にどのような影響を及ぼすか。

日本が戦わずして、自衛隊が動かずして沖縄を中国に乗っ取られる恐れがあるのではないか。自衛隊がいくら一生懸命訓練しても、戦う前に島を持っていかれると危惧している。

あくまで仮定の話だが、玉城知事が中国から帰ってきた後に、台湾海峡で小さな衝突が起きたり、与那国島のレーダー基地に中国のミサイルが一発落ちたとしよう。犠牲者が出なくても、沖縄の新聞や知事は「やっぱり基地があるから狙われた」「基地がなければ被害は出なかった」「だから基地は危ないのだ」「自衛隊はないほうがいいのだ」などとアピールするだろう。そうなれば「基地があったほうが安全だ」と言いにくい空気が出来てしまう。

さらに、自衛隊を追い出す動きが生じる恐れがある。例えば県議会で、自衛隊の基地はないほうがいいという内容の意見書が提出されれば、左派が多い現状では通ってしまう可能性もある。

(インタビューを元に再構成しました)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。
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