クリエイティブカンパニー「シリョサク株式会社」が運営しているチャンネル『シリョサクTV』では、パワポ資料の作り方から仕事をもっとおもしろくするポイントまで、さまざまなコンテンツをお届けします。本記事では、AIを使う時の3つのステップと注意点をお伝えします。
資料作成でAIを使うのに向いている人、向いていない人
豊間根青地氏(以下、豊間根):仕事をもっと!
岩本紘佳氏(以下、岩本):おもしろく!
一同:『シリョサクTV』です! お願いしまーす!
豊間根:今日はみんな気になっているAIで資料を作るというやつを考えていきたいと思います。ただ先に一応お伝えしておくと、この動画では「このツールがすごい!」とか「こういうツールを使ってこういうのが作れて、もうデザイナーいらない!」みたいなことはあんまりしません。
「Napkin AI」とか「Microsoft Copilot」とかね、いろんなツールの紹介をしてる動画はいっぱいあるんですけども。この動画はあえてAIで資料を作るというのがどういうことなのかと、どういう心構えが必要かという話にフォーカスして、考え方を中心にお伝えします。
ただ、資料に限らずこの生成AIを実務で使っていく時にすごく役立つお話ができるかなと思うので、AIで仕事を効率化したいなと思っている方、ぜひ見ていただければと思います。まぁ前提なんですけども、「明日の企画会議の資料作っておいて」と伝えて、寝てる間に全部完成みたいな世界が実現したらうれしいですよね~。
岩本:いや~、うれしいですね。もう私たちいらないじゃないですか!(笑)。
豊間根:まぁでも、できたらうれしいじゃないですか。ただ残念ながら、この2024年秋時点においては無理ですと。5年後、10年後にも完全にこれが達成されるかといったら、たぶんされないと思っていて。人間の思考を完全に読み取る技術が開発されない限りは、AIそのものがいくら発達しても完全には達成されないと思っています。
AIがあっても資料作成スキルが必要な理由
豊間根:どういうことかというと、そもそも資料を作るのは、ふだんの仕事で何気なくやっているじゃないですか。
『シリョサクTV』をご覧の方々は、けっこうご理解いただいてると思うんですけど。資料を作るっていうことは、いわゆるパワポの機能を覚えているとかデザインとか色とかフォントをうまく使いこなせるっていう部分が目立ちがちなんだけれども。
それだけじゃなくて、実際にはゴールを決めるとか、論点を設定するとか、情報を集めるとか、構造化するとか、図に落とすとか。あるいは、実際作った資料を使って仕事を前に進めていくとか、いろんなスキルが必要になるわけですよね。だから我々は、「資料作成はスキルの総合格闘技だ」って言ってるんですよ。

この全工程をAIに丸投げするのは現状不可能だし、たぶん今後もきついと思われる。だってそもそも何がしたいのかは、AIは本当にテレパシーで読み取らないとわからないわけだし。
じゃあどういう論点で答えなきゃいけないのかとか、どういう情報をどういう目的で集めなきゃいけないのかは、やっぱり指示を言語化しないといけないので。それを全部汲み取ってもらうのはたぶん無理ですと。
そもそもこのAIっていうツールが何をしてるかっていうと、要は確率論なんですよね。例えば「どんぶらこ」。「どんぶらこ」って例はちょっとあれなんですけれども。
「どんぶらこ」っていう文字列が来たら、「たぶんどんぶらこっていう言葉の説明を求めてるんだろうなぁ」と。「どんぶらこは日本の昔話、桃太郎に出てくるフレーズです」って書いたら、たぶん次は「この物語で○○××を表現する言葉として使われています」みたいに。
ある文字列の後に続きそうな文字列を、AIくんが食べた大量の情報から確率論的に一番それっぽいやつを並べてくれるのがAIです。……ってことは、彼が食べてない情報は出しようがないわけですよね。
だから新しいものを、正確性を無視して食べたことのある情報の中からざっくり書き出すとか。あるいはもらった情報を元にして、食べたことのある情報を参考にしながら、なんかぎゅってしたらこうなるよねみたいな。すでに食べたことのある情報とかもらった情報をベースに何かするのは得意なんだけれども、0から正確性を持って新しいものを生み出すのはAIくんは苦手ですと。
こういった特性を理解して、「資料作成は全体のプロセスがめっちゃあるよね」って全体像を理解した上で切り分けて、「この部分のこういうゴールのアウトプットのためにこれだけやってくれない?」って、切り分けて指示出しをして役割分担をすると、うまく使えることがある。
というのがこのAIくんという道具なんですよね。こういう話を一切無視して、「このAIツールがすごい! もう資料作成、いらない!」みたいのはね……もう意味がないんですよ! 資料作成は必要だから。
岩本:そうですね。
AIでできること・できないこと
豊間根:こういった話が、大前提としてあります。その背景知識もないまま、AIくんの知らない情報も含むような業務の全工程をお任せするのは無理なので。これは人間も一緒ですけどね。
「最終的にこういうことがゴールで、こういう要素を入れてほしくて、これを参考にしてやってね」って、必要な情報と道筋を区切って渡してあげて、初めてバリューが出せるのがAIくんなわけですね。
これはXで投稿した画像ですけども。AIって、要は自分でも作れる人が近道をする道具なんですよね。あるゴールに到達する時にAIがないと、紆余曲折があって時間かかって大変だけど、生成AIを使うとそれが爆速でできることがあるという道具であって。
そもそも何を作りたいかの解像度があんまり高くない人がよくわからないものをアウトプットしても、ろくなものは作れないんですよ。
最終的なゴールがこれで、それに至るステップはこういうふうに分解されるよねって理解している人が、一部を切り出して、要件定義がちゃんとできて、言語化できて初めてまともに使えるのがAIです。
もしくは、それをちゃんとツールとして、すでに自由度を下げて作られているものをうまく使いこなしてあげないと、「ChatGPT」とか「Copilot」みたいな、かなり自由度の高い生成AIツールは価値が出ないんですよっていうのが前提の話なんですよね。
たたき台を作る、まとめる、整えるのが得意だ。AIくんの性質を理解して完成させるとか、意思決定するとか。あるいは正確性もあるかたちで生み出すみたいな作業に集中できる、この役割分担をするのが正しい姿です。それをちゃんと理解しましょうっていうのが大前提、重要なんですよね。まぁ、これは資料に限らずですね。
岩本:そうですね。「AI使う時は」っていう感じですよね。
資料作成でAIを使う時の3つのステップ
豊間根:AI使う時は必ずこの理解が必要ですと。その大前提の上で、AIにやってもらうべきステップは大きく3つあると考えています。構成を作る。ツッコミを入れてもらう。あとスライド化ですね。

構成は要するにざっくりの流れで、かつそれの箇条書きベースの下書きです。それに対してツッコミを入れてもらう。第三者目線、聞き手目線で「こういう要素足りてないんちゃう?」ってツッコミを入れてもらうとか、実際できた文字をスライドに変換するっていう部分を任せるとうまくいくことがあります。
さっきの全体像で言うと、論点設定とかにツッコミを入れてもらう。情報収集とか構造化も含まれるんだけども。あと、スライド化するという。とりあえず切り分けるっていうこと。これを全部が全部まるっとは無理で。
今、あくまで構成を決めるところ。ざっくりと流れを決めるところと、そこに足りてない論点はない? と、全体像と今どこにいるかを理解しながら依頼をしてあげることが大事です。
あとデザイン的な観点で言うと、スライド化をする時に、コンサルの人が作るようなグラフとか表がいっぱい書いてあって、けっこう情報量が多めのスライドは、今時点では厳しいですね。
岩本:そうですね。文字量が多いとけっこう難しかったり。あと、構造化してほしい時ってけっこう難しいかなって私は思っています。
豊間根:そうですね。パッと見おしゃれっぽいやつは、まあまあ作れるんだけど、こういうふうに日本のビジネスシーンで使われるような、比較的情報量の多いスライドは現時点ではまだAIくんは作れないですね。
文字が少ないスライドはAIで
豊間根:一応動画でも紹介したいなと思ってるんですけど「Copilot」とか「Gamma」みたいなツールもあるんですけど、このスライド化の部分に関しては、さっき見たようなけっこう情報量多めのやつを0から作れるサービスは、現時点ではまだ世に出てきてないなっていう感覚ですね。
だからやっぱりスライド化の部分は、比較的情報量が少なめの部分。いわゆるピッチ資料とか、あるいはサービス説明資料ぐらいの文字が多くないスライドであれば「イルシル」とか「Napkin AI」みたいなツールは使える部分もあると思っているので、そこを切り分けて使ってあげることが大事かなと思います。
ということで、この動画はけっこう抽象的な考え方の話でいったん終わるんですけども。この思想に則って、単純に「このツールが」「こんなツールがあるよ」みたいな話ではなく、実務のシーンでこういう使い方をすればマジで使えるぜっていうTipsはどんどん紹介していきたいなと思っております。
ということで、このAI実務活用へのいざないというテーマの動画だったわけですけれども。ヒロカさん、実務でAI使ってますか。
岩本:そうですね、私はけっこう調べ物とかで、たどり着くまでにこうネットサーフィンを続けるじゃないですか。その時間がちょっと無駄だなぁと思って、プロンプトを打って調べたりすることは多いですね。あとスライドで言うとさっきの①、構造を作るっていうかそのアジェンダを決めるみたいなところはよくお世話になっている点かなぁと思います。
豊間根:正確性が必要じゃなければAIは便利なんですよね。ヒロカさんはやっぱり仕事柄使いますよね。
岩本:そうですね。プロンプトエンジニアリングとかいう言葉もありますけど、どれだけプロンプトでAIをうまく使えるかが本当に人によって違ってくるので。そこは私もまだまだ学びたいなと思っている部分です。
豊間根:間違いない。要するに要件定義であり、言語化なので。ぜひ実務で実際に使えるAIの使い方を一緒にこれから学んでいきましょう。