天の川銀河(銀河系)の地球近傍領域で大質量星の完全な全数調査を実施した結果、重力崩壊型超新星の出現率と、地球で発生した過去5回の大量絶滅のうちの少なくとも2回との間に明白な関連があることが明らかになった。この研究結果をまとめた最新の論文は英国王立天文学会の学会誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyに掲載される。
英キール大学が率いる研究チームは、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡ガイア(Gaia)のデータを用いて、地球からの距離が約3200光年までのスペクトル型O型およびB型の恒星2万4706個の特性を調べ、地図を作成した。OB型星はある種の重力崩壊型超新星を引き起こすことにより、地球類似惑星の大気中のオゾンを減少させ、酸性雨を降らせ、惑星の表面を有害な紫外線に晒す可能性がある。
論文によると、地球で起こった2回の大量絶滅事象は、極度の寒冷化との明確な関連が指摘されている。このような寒冷化は、地球近傍の重力崩壊型超新星による大気中オゾン濃度の急激な低下によって引き起こされたのかもしれない。結果として、古生代オルドビス紀末(約4億4500万年前)の大量絶滅と古生代デボン紀後期(約3億7200万年前)の大量絶滅は古代の超新星によって引き起こされた可能性が高いと、研究チームは結論づけている。
論文の筆頭執筆者で、スペイン・アリカンテ大学の天体物理学・天文学の博士課程修了研究者のアレクシス・キンタナは、取材に応じた電子メールで、先行研究はガイア以前のものであるため、今回の研究ではより精度の高い出現率を導出できたと述べている。今回明らかになった「地球近傍」の出現率は、歴史上の大量絶滅事象の時間規模とより一貫性があると、キンタナは主張している。
論文によれば、地球近傍の重力崩壊型超新星の出現率を推算すると、10億年間で約2.5回との結果が得られた。地球近傍の超新星爆発が、化石記録に残る大量絶滅事象1回以上の原因となった可能性があるとする説を、今回の結果は裏づけているという。
苦難
英王立天文学会(RAS)の解説記事によると、オルドビス紀末の大量絶滅では、生物の大部分が海洋に留まっていた時代に、海洋無脊椎動物の60%が死滅した。デボン紀後期の大量絶滅はより深刻で、地球の生物種全体の約70%が絶滅したという。