Ericssonは今でこそ(基地局側の)通信機器を主事業とするが、138年(創業は1876年、西南戦争の前年!)のその沿革は通信の歴史そのものだ。10月末にスウェーデン・ストックホルム郊外にあるEricssonの本社を訪問し、当時の革新技術の数々を見せてもらった。
「Mobiltelefonisystem A」と呼ばれる1956年登場の最初の携帯電話、重量は40kg!
ベルによる電話の発明と同時期に創業
Ericssonの社名の元である創業者のLars Magnus Ericsson氏はテレグラフの修理で事業をスタート、その後みずから電話を作成するようになった。創業した1876年は米国でAlexander Graham Bell氏が電話を発明し、特許取得したのと同じ年だ。Bellはスウェーデンで特許申請していなかったため、事業が可能だったという。
世界的に大ヒットしたという1954年の”Cobra”こと「Ericofon」。ダイアルは受話器を持ち上げた下にある。通話機能だけでなく、インテリアとしての電話機が求められるようになったといえる。Ericssonの電話機は世界的に販売されていた
北欧諸国が中心にモバイル網を開発
GSMによって花が開く
“持ち運び可能”という点で最初の携帯電話と言える端末は、冒頭の写真で紹介したように1956年に登場した。だが、重さ40kgで、スーツケースほどのサイズがあった。固定電話の普及期でもあり、携帯電話は認知されていないため需要がないうえ、重さ、価格、機能などの制限もあり普及にはほど遠かった。携帯電話が小型化に向けて改良を重ねるようになるのは1980年代後半まで待たなければならなかった。
だが、研究開発自体は世界レベルで進んでおり、Ericssonは1970年代にスウェーデン、フィンランドなど北欧諸国が中心となって開発を進めていたモバイル網「Nordic Mobile Telephone」(NMT)向けのターミナルとしてHotLineを開発した。北米では1973年、Motorolaが世界初の携帯電話を発表している。
NMTはその後のGSMに大きな影響を与え、Ericsson、Nokiaら北欧ベンダーが仕様開発をリードするようになった。共通の仕様を持つことでどこでも使えるようにし、価格を下げることができる。1990年代、EricssonやNokiaはその仕様開発に早期から取り組むことで特許を得てネットワークと端末で国際展開を図り、急成長した。このビジネスモデルは、いまのEricssonの土台となっている。
NMT開発を共同で行っていたサウジアラビアで1981年に最初のモバイルネットワークが実装され、EricssonのHotLineが納入された。
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