お金のない多くの人は
やっぱり中国メーカー製品に手を出す
ベトナム人の知人数人にこのニュースについて話を聞くと、まず出てきたのは「あぁ中国製……」という反応だった。
「ニセVertuケータイを思い出すね」という反応もあった。キラキラなVertuのケータイのニセモノもベトナムで席巻しているらしい。
彼らは口を揃えて「メーカー製の携帯電話であれスマートフォンであれ、メーカー保証が頼りない。お金がない人は、無理せず中国製のノンブランドケータイを買うのをためらわない」「たとえ今回のニュースがあったところで、脱中国製品に人々が変わる転機にはならない」という。
筆者の経験を付け加えて補足すると、ベトナムに限った話ではないが、ASEAN諸国であれ南アジアであれ、どうもヒアリングしていると、「中国メーカー製」と「中国製」を同じ意味として考えている人が結構多いように思う。
つまり、深センでの有象無象のメーカーが作る製品も、Made in ChinaのAppleやソニー製の製品も一括りにしているのだ。
ベトナムメーカーのスマートフォンやフィーチャーフォンが出たところで、「でも中国だろ?」という考えは消費者の根底にある。そうした考え方が転じて「私の母国は、なんでも安価につくる中国には勝てない」とばかりに、中国にモノ作りで依存することをやむなしと考える人も多い。
ニセケータイ爆発のニュースを
他人事とは思えないベトナム人たち
このニセケータイ爆発のニュースについてネットの反応を見ると、「中国製品にノー!」「中華料理屋に行くな」というコメントが支持されたものの、それに次いで支持されたコメントが「あらゆるものが中国製」という意見だった。
「ノキアはニセモノを取締れ」という意見もあった。ベトナム人はこれと直面したときにニセモノと判断できないのだろうか。
これについても複数の知人に聞いてみると、「個人商店に怪しいケータイがあればなんとなくニセモノのような気がする。けれど有名店が扱ってたら信じるだろう」とのこと。実際、最近ハノイを訪問した筆者は、個人商店だけでなく家電量販店でも問題のNokia K60を見かけた。
ベトナムに10年以上滞在し、ベトナムビジネス一筋の日本人いわく「ベトナムのトレンドはなかなか変わらず、流行というのは日本や中国と比べ発生せず、昔から使っているものを使おうとする」ともいう。
ベトナムは中国やタイやマレーシアなどと比べ、昔から使っているからという理由で、フィーチャーフォンやノキア製品の利用率が高い。こうした国民性だから、スマートフォンの普及状況は、若い世代を中心にようやっと普及しはじめたところだ。
こうした背景から、今回の中国ケータイ爆発のニュースはベトナム人にとって他人事でないニュースだったようだ。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)。
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