今回のことば
「TRONとマイクロソフトは、喧嘩しているわけではない。喧嘩していないのだから和解もない」(YRPユビキタス・ネットワーキング研究所の坂村健所長)
ユビキタスIDとクラウドを連携、新サービスを
東京大学大学院情報学環の教授である坂村健氏が率いるYRPユビキタス・ネットワーキング研究所(YRP UNL)と、日本マイクロソフトが、オープンデータおよびビッグデータ、IoT分野において提携すると発表した。
YRP UNLでは、坂村氏が会長を務める公共交通オープンデータ研究会が取り組む公共交通機関に関するオープンデータや、総務省の情報流通連携基盤や経済産業省の共通語彙基盤などの業界標準技術を活用したオープンデータを活用。YRP UNLが提案する「uIDアーキテクチャー2.0」と、日本マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」により、新たなサービスを提供できる環境を構築する。
また、IOT分野での技術協力と共同事業では、「高度位置情報サービス事業」と、「IoT技術の標準化や普及に向けた活動」を行い、IoT技術の標準化や普及に向けた活動を通じて、組み込み機器とクラウドサービス、スマートフォンといった多様なデバイスとの連携や、T-Engineフォーラムと連携したIoT分野の新たな技術標準の普及活動を行う。
「YRP UNLは、オープンデータプラットフォームやユビキタス/IoTプラットフォームを提供。それに対して、日本マイクロソフトは、Microsoft Azureによるクラウドサービスソリューションや、アプリケーション開発環境を提供する。ひとことでいえば、Microsoft Azureのプラットフォーム層のなかにuID 2.0を組み込み、サービス層にココシル、ドコシルというサービスも組み込むことになる」と坂村所長は、今回の提携について説明する。
外国人観光客向けに店舗情報や口コミを翻訳し、スマホで閲覧
提携によって生み出される具体的な事例として、日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者の加治佐俊一氏が示したのが、飲食店情報や交通情報をリアルタイムに翻訳して、スマートフォンやタブレットなどのデバイスで閲覧できるサービスだ。
ユーザーの所在地の地図や、口コミ情報などを提供する「ココシル」と、路線バスや鉄道の時刻表、リアルタイムの運行情報を表示する「ドコシル」といったYRP UNLが実験を行っているサービスに、マイクロソフトの機械翻訳技術を組み合わせることで、外国人観光客がスマートフォンで飲食店を検索する場合にも、位置情報をもとに最寄りの飲食店情報を取り出し、これを43カ国語でリアルタイムに翻訳することで、「地域振興や観光、ショッピングの利用者増加などに貢献できるサービスになる」という。
「外国人向けの情報は、事前に翻訳して提供することも大切だが、運行情報や渋滞情報といった逐次変わる情報、事故、災害などの緊急事態を知らせる情報などは、リアルタイムで翻訳されることが重要になる。今回の提携を通じて、こうした環境が提供できるようになる」と続ける。
また、日本マイクロソフト パブリックセクター担当執行役常務の織田浩義氏は、「2020年の東京オリンピックの開催に向けて、外国人旅行者にも、わかりやすい交通情報サービスを提供することができるようになるだろう。外国人観光客向けに、究極のおもてなしアプリを提供できる」と自信をみせる。
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