強さの秘密は価格?
デザイン? 手に入りにくさ?
Xiaomiはなぜ強いのか? ブランド戦略、製品販売戦略とさまざまな要素から分析できるだろう。
まずは、これまでの中国ベンダーの端末にはない、高級感や洗練を感じることができ、それでいて低価格というのは大きな違いだろう。Xiaomiのスマートフォンはどこでも作れるような端末ではなく、(ときにたとえ大手ベンダーの模倣といわれようが)スタイリッシュだ。
中国における消費行動は変化しており、若者を中心に、価格だけで選ぶ時代ではなくなっている。Xiaomiはこのような消費トレンドをにらみ、中国ベンダーながら中国人が新しさを感じるブランド、という位置づけにみえる。
価格を見てみよう。Mi3は5型のフルHD IPS画面、チップはSnapdragon 800またはTegra 4を搭載し、カメラはメインが1300万画素、サブが200万画素、2GBのRAMを持つ。これでいて現在の価格はTS-SCDMA向けで270ドル程度(16GB)からとなっている。
中国のスマートフォンの平均販売価格は200ドルを切っているので必ずしも安くはない。だが、iPhone 5Sはその倍以上する事を考えると、”高スペックだが安い”と言える。
Xiaomiによると端末価格は製造原価ギリギリという。同社の製品戦略はユニークで、販売はほぼオンライン限定、フラッグシップを長期間販売するという手法だ(mi2Sからmi3の間は1年ある)。広告などのマーケティング予算は最小限に抑え、在庫を持たないように、一定数を生産しては予約順に販売するという方法をとる。タイムセール的に特定の時間に台数限定で特別価格で販売することがあり、何回も申し込んでいるのにゲットできないユーザーもいると聞く。
マーケティングはソーシャルネットワーク(=コストはないに等しい)を最大活用している。WeChatやWaiboといった地元のSNSはもちろん、(中国では本来使えないはずの)Facebook、Twitter、Google+なども利用している。
たとえばシンガポールでは同社の創業4周年イベントに合わせてバーチャルイベント「Mi Fan Festival」を開催、割引価格での端末やヘッドフォンの販売を行なったほか、クリアすることで割引クーポンがもらえるゲームも用意した。物理的なファンミーティングも定期的に開かれているようだ。これらはすべてSNSと連動している。
Xiaomiは2014年第1四半期、すでに1100万台を販売したという。同社の目標である4000万台をクリアできる可能性は濃厚といえる。ちなみに2013年の売上高は、前年比150%増の52億ドル。2013年8月時点での評価額は100億ドルだ。AlibabaのIPOが話題だが、今後中国企業の存在感や重要性が高まるだろう。Xiaomiはその1社となりそうだ。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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