米Silent CircleとスペインGeeksphoneは、MWC2014で“プライバシースマホ”こと「Blackphone」を正式に発表した。「プライバシーへの意識を高めていく必要がある」とBlackphoneのディレクターは述べ、必要性をアピールした。
Blackphoneチーム。中央はPGP(Pretty Good Privacy)の開発者でSilent Circle共同創業者のPhil Zimmermann氏。その右横はPGP Universalの開発者でSilent Circle共同創業者兼CTOのJon Callas氏、左横はGeeksphoneのCEO、Javier Aguera氏
モバイルの高機能化に合わせて
セキュリティーとプライバシーへの意識はさらに高まる
Blackphoneは、1月の発表時にもASCII.jpでお伝えしているが(関連記事)、Silent Circleの共同創業者でPGP(Pretty Good Privacy)の開発者として知られるPhil Zimmermann氏も参加していることが話題になった。
「PrivatOS」というAndroid 4.4(KitKat)のフォークを土台としている。そして、暗号化技術を持つSilent CircleとFirefox OS端末の「Neon」などを製造してきたGeeksphoneの2社が、スイスにBlackphoneというジョイントベンチャーを立ち上げて展開する。
今回正式に発表された端末は、2GHzのクアッドコアプロセッサ、4.7型のIPS液晶、2GBメモリー、16GBのストレージ、8メガピクセルなどのスペックを持ち、LTEに対応するハイエンド機種だ。
価格は629ドルで、Silent Circleの暗号化通信アプリ「Silent Phone」「Silent Text」「Silent Contact」の2年分のサブスクリプション、ストレージサービス「SpiderOrk」(5GB)、データ追跡を無効にする「Disconnect」もバンドルした。
Silent PhoneとSilent TextはiOSとAndroid向けの有料アプリ(月額9.95ドル)として、2年前からSilent Circleによって提供されている。Silent Phoneは通話、音声通話を暗号化するもので、TextはSMS版といえる。Silent ContactはSilent Phone/Textで利用できるアドレス帳を暗号化するもの。
Silent Phone/Textは相手もSilent Phoneに加入している必要があり、3人分のサブスクリプションもバンドルする。このほか、独自機能となるWi-Fi接続マネージャー「Smart WiFi Manager」、リモートワイプやデバイス復旧などのセキュリティ機能も備える。端末はSIMフリーで、同日事前予約を開始した。6月に出荷を予定しており、スペックは今後変更する可能性もあるという。
スノーデン氏のリーク以前から開発は進めていた
ターゲットはエンタープライズだが、将来的には個人も
Blackphoneチームは、オランダのオペレーターであるKPNとの提携も発表した。「プライバシーとセキュリティは基本的な権利。Blackphoneの販売台数はかなりのものになると予想している」とKPNのJaya Baloo氏は語った。端末はSIMフリーだがオペレーターが重要になるとしており、今後も提携先を広げていく意向のようだ。
Blackphoneのディレクターを務めるToby Weir-Jones氏は、「ユーザーがセキュリティやプライバシーについて個人の判断を重視する大きな変化につながるものになる」と期待を語る。
一方で、2013年6月に明らかになったNSA(米国家安全保障局)の監視プログラムが明らかになる前から(開発がはじまったのは1年半前)プロジェクトを進めていたとし、Edward Snowden氏のリークがきっかけではないことも明かした。「Snowdenのリークはたしかにプライバシーへの意識を高めたが」とも認める。すでに1月の発表以来、数多くの問い合わせをもらっているという。
Weir-Jones氏は同時に、「BlackphoneはNSA監視を免れるデバイスではない。プライバシーツールがまったくない電話を使っている状態とは大きく異なるものを提供する」とも強調する。「我々一社ではなく業界が全体となってセキュリティーやプライバシーのツールを使える状態でパッケージし、ユーザーにこれらのツールのメリットを啓蒙していくことが大切だ」と見解を語った。
プライバシーが必要なユーザーはすでにSilent Circleのアプリを利用できる。すでにアプリがあるのに、なぜBlackphoneが必要なのか……これについてSilent CircleのCOO、Vic Hyder氏は「セキュリティーには段階がある。城を作るときに城壁をつくり、その周りに水濠を設けて保護するのと同じ。Blackphoneでは必要なツールをすべてパッケージし、スマートかつプライベートに管理できるようにした」と説明する。
ターゲットは、企業や政府などのエンタープライズ市場だが、個人ユーザーも狙っていく。「スマートフォンは使っていくうちにどんどん重要な個人情報がたまっていくデバイス」「暗号化通信や複雑なセキュリティー技術について考えることなく、なにを守りたいのかで(プライバシーやセキュリティを)簡単に設定できる」とHyder氏は語る。
スマホが高機能化し、ショッピングの利用が増え、スマートキーなどのアプリケーションが出てくると、Blackphoneのような機能へのニーズが高まるだろうと続けた。技術に精通した人、プライバシーを気にする人のほかにも、一般ユーザーにも訴求するだろうと見る。親が子どもに買いたいというケースも出ているという。Blackphoneは今後、タブレットにも拡大する計画があるとのことだ。
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